
ヴィーブヘルスケアは20日、社長会見を開き、村木基代表取締役社長が「ヴィーブヘルスケアの現況と今後の事業展望」をテーマに講演した。村木氏は、過去40年に渡って同社が提供してきた抗HIV薬の歴史を振り返り、「現在は、薬を毎日飲まないことが患者ニーズとなっている。年6回投与のボカブリア注射剤や、2カ月間隔投与のリカムビス注射剤がトレンド傾向にある」と報告した。
講演で村木氏は日本におけるHIV感染症の疫学について言及し、「2024年の国内HIV感染者は約3万5000人で、そのうち約90%がHIV治療を受けており、80%以上が男性である。また、2024年の新規感染報告数は996人で2年連続増加している。HIV感染者の30%はエイズとして報告されている」と紹介した。
ヴィーブヘルスケアは、1987年に最初の抗エイズ薬を発売した。その後40年経過したが、治療薬は様々な進化を遂げてきた。同社は、2020年にドルテグラビルとラミブジンの2剤配合錠の「ドウベイト」を上市し、2022年には持効性の「ボカブリア注射剤」(一般名:カボテグラビル)を発売している。
村木氏は、「HIV陽性者は様々な生活変化に基づいてニーズが変わるが、それに応じた治療薬のオプションが必要になる」と力説した。
HIV感染者は、「毎日HIV治療薬の服用を覚えておくことへの不安」、「HIV治療薬の服用により、他の人に自分がHIVと知れる」、「HIV治療薬の服用が日常生活を制限する」、「毎日HIV治療薬を服用することで自分がHIVに罹患していることを改めて実感する」などのネガティブな経験やセルフスティグマを訴求する。
村木氏は、「HIV感染者は、毎日薬を飲むので、様々な精神的苦痛を抱えており、薬を毎日飲まないことが患者ニーズになっている」と強調し、「従って年6回投与のボカブリア注射剤や、2カ月間隔投与のリカムビス注射剤に対するトレンド傾向が高い」と報告した。

また、「HIV流行終結に向けた取り組みと新たな治療オプションへの展開」をテーマに講演した王棟メディカルアフェアーズ部門長は、HIV感染症とエイズ発症の違い、治療法などについて解説した。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症は、免疫を司るリンパ球(特にCD4陽性リンパ球)に特異的に感染して破棄する。HIV感染症は、ウイルスそのものの名称であり、感染しただけではエイズにならない。
エイズ(後天性免疫不全症候群)は、HIVに感染した状態で、ニューモシスチス肺炎などの日和見感染や悪性リンパ腫など国が指定する23疾患を発症した時点で「エイズ発症」と診断される。
治療法は、作用機序の異なる抗HIV薬2~4種類の薬剤を組み合わせて投与する。初回治療の方法としては服薬、切り替えの場合は服薬の他、注射剤も選択される。現時点では、ウイルスを体内から除去するのは難しいため、治療は一生続けなければならない。
HIV感染症の治療は、HIV感染を防ぐために非常に重要で、体内のウイルスを一定の量以下に抑え込む必要がある。王氏は、「最初のHIV治療は、患者さんの寿命を伸ばすことにあった」と話す。
さらに、「その後の様々な治療薬の進歩により、現在は副作用の少ない、利便性の高い、持効性の高い薬剤による治療が求められるようになった」と紹介し、「患者さんの寿命を伸ばしていく中で、現在はQOLの重要性も治療の中に加えられている」と訴求する。
王氏は、HIV陽性者の生の声を聞いた調査結果にも言及し、「HIV患者と医療従事者の不十分なコミュニケーションが両者の関わり合いの障壁になっているケースが多かった」と報告。その上で、「HIV陽性者に積極的に治療に関与してもらい、医療従事者とより良いコミュニケーションを保つことが、QOL改善に役立つ可能性がある」と考察した。
