
小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは8日、2025年3月期算説明会で会見し、「2024年度はコアベースで売上収益、営業利益ともに昨年10月31日に公表した通期業績予想を上回る着地ができた」と強調した。
また、今後10年の成長イメージとして、「キンロック(消化管間質腫瘍)、ロンビムザ(腱滑膜巨細胞種[TGCT])、ベレキシブル(中枢神経系原発リンパ腫)、サパブルセン(真性多血症、P2)」のグローバル製品の売上拡大などを指摘。その上で、「こららの製品等で2025年~26年の糖尿病関連製品(フォシーガ、グラクティブ)やオプジーボの特許満了(2028年米国、2030年欧州、2031年日本)をカバーし、次の成長を皆さんにしっかりと実感して頂けるよう尽力したい」と訴えかけた。
小野薬品の2025年3月期決算は、売上収益4868億7100万円(対前年比3.1%減)、コア営業利益1126億6700円(同37.7%減)、コア当期利益903億6100万円となった。
売上収益は、オプジーボの薬価引き下げの影響やメルク社などからのロイヤリティ収入のロイヤリティ料率低下による減少、前期計上したアストラゼネカとの特許関連訴訟の和解に伴う一時金170億円の反動減をフォシーガ錠(2024年度実績896億円)や買収したデサイフェラのキンロック(同255億円)などの売上増でカバー。昨年10月31日に公表した通期業績予想4850億円を上回る着地となった。
コア営業利益は、費用項目がデサイフェラの研究開発費、販売費及び一般管理費が加わることで前期比で増加したことなどから減益となったものの昨年10月31日に公表した通期業績予想1100億円を上回った。研究開発費は対前年比32.1%増の1433億円。
2026年3月期の業績予想は、売上収益4900億円(対前年比0.6%増)、コア営業利益1140億円(1.2%増)、コア当期利益910億円(0.7%増)。
製品別売上高予測では、キンロック340億円(24年度255億円)、ロンビムザ50億円を見込んでいる。
研究開発費は、前年比67億円増の1500億円。増加は、Ionis社から導入したサパブルセンの開発費用やデサイフェラに関わる費用が24年度9カ月分から12カ月分に増加することなどによるもの。
同社が描く今後10年の成長イメージでは、キンロック、ロンビムザ、ベレキシブル、サパブルセンのグローバル製品の売り上げを拡大。さらに、オプジーボ静注製剤の特許満了後も、今年1月に米国で発売されたオプジーボ皮下注製剤は、発売後10年間ロイヤリティが得られる。同剤は、欧州でも販売している。加えて、セノバメート(てんかん)、Gel-One(変形性関節)の国内上市や、自社創製品の上市、さらなるライセンス製品の獲得などがプラス要因として業績を押し上げる。
自社創製品の上市において滝野氏は、「ONO2020(アルツハイマー)、ONO110(帯状疱疹後神経痛)、ONO4578(結腸・直腸がん1次治療、オプジーボ併用)」などに期待を寄せた。
キンロックについては、「最終的には現在のGISTの4次治療の適応症で400億円、GISTの2次治療の適応追加で200億円の売上高が見込まれる」と予測。ロンビムザも「腱滑膜巨細胞種(TGCT)で400~600億円、慢性移植片対宿主病(GVHD)の適応追加でさらなる拡大が期待される」と述べた。
これらのプラス要因が2025年~26年の糖尿病関連製品(フォシーガ、グラクティブ)やオプジーボの特許満了(2028年米国、2030年欧州、2031年日本)をカバーし、「従来のオプジーボによる成長から次の新たなる成長を実現する」。また、2035年には、グローバルの売上高が全売上高の半分以上を占める構成を描いている。
会見では、発売後10年経過したものの、未だ応追加を行って成長を促しているオプジーボの売上動向(国内)についても報告された。
2024年度のオプジーボは、数量ベースでは前年度を維持したが、薬価改定(▲15%)の影響に加えて、成長を目指した尿路上皮がん、食道がん領域の伸びが停滞。加えて、JCOG試験中止後に新規処方シェアが従来の約半分の16%まで落ち込んでいる非小細胞がん(一次治療)領域も、回復目標に届かず、売上高は対前年比252億円減の1203億円となった。
その一方で、胃がんでは本年1月、CheckMate-649試験の5年後フォローアップデータでオプジーボのみが有する生存延長率データが示された。食道がんでは、CheckMate-648試験、非小細胞肺がんではCheckMate-227試験、9LA試験の5年追跡調査で生存延長率データが報告されている。
同社では、これらのデータ活用した営業活動を展開し、新規処方シェアを食道がんで60%(現在48%)、非小細胞がんで30%(同17%)を目指すことで、2025年度の売上高は1250億円(対前年比47億円増)を見込んでいる。