
特殊免疫研究所とケー・エー・シー(KAC)はこの程、滋賀県栗東市のKAC生物科学センターで両社の合弁会社「T&Kゲノブリード」の設立式典を開催した。
本年4月1日に設立された新社は、「遺伝子改変動物の開発・作製技術によるスペシャリティバイオリソースの提供と活用を通じてライフサイエンスの発展に貢献する」を理念に、高度な遺伝子改変動物の作製から系統維持・供給まで、一元的なサービス提供を業務とする。特に、特殊免疫研究所の技術と繁殖・系統維持のサービスを西日本地域の製薬企業に展開していく。
特殊免疫研究所は、関東を拠点に、原生生物の獲得免疫を利用したゲノム編集技術である「CRISPR-Cas9システム」を活用して、実験動物に正確かつ多量な遺伝子改変を行い、製薬企業に特徴のあるゲノム編集動物を提供している。
一方、KACは、実験動物の飼育管理、動物実験受託業務、研究用試薬提供、バイオ研究・技術者派遣などを提供するバイオサイエンスのトータルサポート企業である。同社の滋賀県拠点では、遺伝子改変動物の繁殖・系統維持、実験動物の飼育管理全般、受託試験実施を行うための卓越した施設が整備されている。
合弁会社は、これら両社の特徴を活かして、遺伝子改変動物の開発・作製技術によるスペシャリティバイオリソースを提供する。T&Kゲノブリードの概略及び事業内容は次の通り。

【新会社の概略】
①事業内容
・ 遺伝子組み換え動物の作製、繁殖及び供給
②会社概要
・ 本社:KAC技術研修所内(滋賀県栗東市)に設置
・資本金:6000万円(TKM:50%、KAC:50%出資)
- 事業年度:4月1日~翌年3月31日
- 代表取締役社長:伊藤行夫氏(特殊免疫研究所 代表取締役社長)
③コーポレートスローガン
・
遺伝子改変動物の開発・作製技術によるスペシャリティバイオリソースの提供と活用を通じてライフサイエンスの発展に貢献する
④動物施設
・KAC生物科学センター第2動物棟
・ 施設グレード:バリア施設(SPF)
・ 飼育室:7部屋(当初は、マウス5部屋、ラット2部屋で開始)
なお、動物施設の稼働は2025年夏頃を予定している。
【事業内容】
①遺伝子改変動物の作製
②病態モデル動物の供給
③遺伝子改変動物の繁殖・維持、供給
④ 凍結胚、凍結精子作製・保存、個体復元
⑤ 薬効薬理試験等の実施
①の遺伝子改変動物(マウス・ラット)作製については、特殊免疫研究所の技術を用いる。BACクローンとRed/ET技術を用いて作製する同社の組換えBACトランスジェニック(Tg)マウス・ラットは、200Kbにおよぶ巨大なゲノムDNA配列の組換え体を直接導入されたTg動物として注目されている。
③の遺伝子改変動物の繁殖・維持はKAC生物科学センターで実施する。
新会社はKACと特殊免疫研究所の技術・市場を補完し合って発展目指す

式典では、伊藤行夫社長が「T&Kゲノブリードの事業対象となるアカデミアでは研究予算が減少し、製薬企業はパイプラインが縮小している。こうした中、KACと特殊免疫研究所が有するそれぞれの特異な技術と機能を相互に補完し合って医薬品の研究開発に貢献したい」と強調。
さらに、「KACの拠点である関西、特殊免疫研究所の拠点である関東においてそれぞれが固有の市場を形成している」と指摘し、「マーケット上でもお互いに補完し合いながらアニマル・セルに関する技術機能を提供する総合商社的活動を展開し、新会社を発展させたい」と所信表明した。

一方、北村典KAC社長は、「遺伝子編集技術は日進月歩進歩している。特殊免疫研究所とKACが力を併せることで、高いレベルの技術を提供する体制が整った。しかりとT&Kゲノブリードの成長に尽力したい」と訴求した。