患者62名中8割以上が根治的化学放射線療法直後でも再発を不安
アストラゼネカは25日、の切除不能局所進行非小細胞肺がん患者の治療前後に抱く不安や心情調査結果を発表した。調査は、診断から5年未満かつ手術を受けていないステージIIIの肺がん患者のうち、初回治療で化学放射線療法を受けた、あるいは受けていないが検討したことがある62名を対象にインターネットで実施したもの。
同調査から、化学放射線療法を受けた後でも、再発に対する不安を感じる患者さんが8割を超え、このうち4人に 1 人の人は時間が経過しても再発に対する不安が残り続けることが示された。肺がんは、日本人の部位別のがん死亡数がもっとも多いがんで、ステージIII の5 年生存率は28.6%。ステージIIIの肺がんは根治を目指した治療となり、一部(ステージIIIA)は切除手術が行われるが、切除手術ができない場合は化学放射線療法が標準治療となる。調査の概要、調査のサマリー、詳細は次の通り。
【調査概要】
◆調査内容:初回治療として化学放射線療法を受けた、あるいは受けていないが検討したことがある肺がん患者の治療前後に抱く不安や心情を把握するためのインターネット調査
◆調査期間:2024 年 12 月 11 日(水)~2024 年 12 月 31 日(火)
◆調査対象:診断から5 年未満かつ手術を受けていないステージIIIの肺がん患者 62 名
初回治療で化学放射線療法を受けた人39 名
受けていないが検討したことがある肺がん患者23名
◆調査方法:インターネット調査(調査委託先:メディリード)
◆調査監修:加藤晃史氏(神奈川県立がんセンター 呼吸器内科)
原田英幸氏(静岡県立静岡がんセンター 放射線治療科部長)
長谷川一男氏(NPO 法人肺がん患者の会ワンステップ 理事長)
【調査結果のサマリー】
1、 化学放射線療法を受けるかどうかを決める際に参考とした情報源は「医師からの説明」が 96.8%と大半を占めた。
2、 化学放射線療法を受けると決めた理由は多岐にわたり、「医師の勧め」のほか、「治療効果への期待」「手術の難しさ」「選択肢の制約」などの理由が挙げられた。
3、 化学放射線療法を受けた患者の41%はつらい治療であると感じた一方で、治療選択したことを後悔していないと回答した患者は 94.8%に上った。
4、 根治目的の化学放射線療法後、再発に対して不安を感じている患者は 84.6%であり、治療直後に不安を感じていた患者の24.2%が、再発に対する不安を変わらずに持ち続けていた。
【調査結果の詳細】
① 化学放射線療法を受けるかどうかを決める際に参考とした情報源は「医師からの説明」が 96.8%と大半を占めた。
化学放射線療法を組み合わせた治療を受けるかどうかを決める際、参考とした情報源について聞いたところ、「医師からの説明」と回答した患者が 96.8%と大半を占め、次いで「自身の収集した情報(書籍、インターネットなど)」(11.3%)であった。
◆加藤氏のコメント
インターネットからの情報収集が一般化し、医療者の多職種連携や Shared Decision Makingが浸透しつつある現在においても、依然、医師からの情報提供が患者さんの治療方針決定に強く影響を与えている可能性が示唆された。

② 化学放射線療法を受けると決めた理由は多岐にわたり、「医師の勧め」のほか、「治療効果への期待」「手術の難しさ」「選択肢の制約」などの理由が挙げられた。
化学放射線療法を受けた患者に、化学放射線療法を組み合わせた治療を選択する際の決め手となった理由を聞いたところ、「担当医師の勧めで」や「根治できる」など治療効果への期待が挙げられた。

③ 化学放射線療法を受けた患者の41%はつらい治療であると感じた一方で、治療選択したことを後悔していないと回答した患者は94.8%に上った。
化学放射線療法を受けた感想では、つらく感じたと回答した患者が41%(「ややつらく感じた」25.6%/「つらく感じた」15.4%の合計)であった。 一方で、治療後の心境については「受けるべき治療だと思っており、治療を受けた後も後悔をすることはなかった」という回答が 89.7%に上った。
◆原田氏のコメント
患者さんが治療前に、副作用を含めた治療の内容や治療の必要性を理解することが、後悔のない治療の選択につながることが示唆された。
◆長谷川氏のコメント
患者さんが根治を目指して、継続的に積極的な治療を受ける、やれることは悔いなくやりたいと感じていることが示唆された。


④ 根治目的の化学放射線療法後、再発に対して不安を感じている患者は84.6%であり、治療直後に不安を感じていた患者の24.2%が、再発に対する不安を変わらずに持ち続けていた。
化学放射線療法による治療を受けた後の気持ちについて質問したところ、84.6%の患者が不安を感じていた(「治療直後は再発に対する不安を感じていたが、時間の経過とともに不安は和らいだ」64.1%/「治療直後から再発に対する不安を感じており、時間とともに和らぐことはなかった」20.5%の合計)。
また、治療直後に不安を感じていた患者の24.2%が「治療直後から再発に対する不安を感じており、時間とともに和らぐことはなかった」と回答。再発に対する不安を感じた患者の4 人に1人は、化学放射線療法での治療後も不安を変わらずに持ち続けていたことが分かった。
◆加藤氏のコメント
化学放射線療法は根治を目指す治療であるが、中には根治に至らない患者さんもいる。化学放射線療法による治療後も多くの患者さんが再発に対して不安を抱いており、中にはその不安が継続し続ける人もいることを医療者が理解し、患者さんに寄り添って治療方針を決めることが重要だと考える。


◆ 調査結果の詳細:https://www.astrazeneca.co.jp/content/dam/az-jp/press-releases/pdf/202503_nsclc.pdf
◆肺がんについて
毎年、世界中で肺がんと診断される患者は240万人と推定されている。肺がんは、男女ともにがんによる死因の第1位で、すべてのがんによる死亡の約5分の1を占めている。
肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に大きく分けられ、80~85%の患者は最も一般的な肺がんであるNSCLCと診断されている。また、すべての NSCLC 患者のうち大多数が進行がんと診断される。