イブグリース 中等~重症アトピー性皮膚炎の半数が3年間皮膚病変消失を維持 リリー

 リリーは12日、IL-13阻害薬「イブグリース(一般名:レブリキズマブ)」について、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした同剤のADjoin長期継続試験において、最長で3年間の改善効果を維持することが示されたと発表した。
 同試験結果は、3月7~11日にオーランドで開催されるAmerican Academy of Dermatology (AAD) Annual Meeting(2025年米国皮膚科学会年次大会)で発表された。
 イブグリースはIL-13(インターロイキン13)阻害薬で、高い結合親和性をもってIL-13のシグナル伝達を選択的に阻害する。IL-13 はアトピー性皮膚炎に大きく関与するサイトカインの一つで、皮膚の2型炎症反応を促進し、皮膚バリア障害、痒み、皮膚の肥厚化や感染を引き起こす。
 AAD2025で発表がされた3年間の改善効果に関するデータは、イブグリースの単剤投与を検討したADvocate1試験とADvocate2試験において、16週時点で効果が確認された患者を対象としたADjoin継続投与試験から得られた。
 被験者は、イブグリース1回250 mgの隔週投与または毎月(4 週毎)の継続投与を受け、IGA 0、EASI 90およびEASI 100の指標による改善効果の達成状況が評価され。4ヵ月間の初期用量による隔週投与後(もしくは十分な臨床効果が表れた後)、イブグリースの承認された維持用量は250 mgの月1回投与である。
 16週時点で効果が確認され月1回の維持投与を受けた患者の50%が、3年時点で皮膚病変の完全消失(EASI 100またはIGA 0)を達成した。
 また、患者の87%は、3年時点において皮膚病変が「ほぼ消失」(EASI 90)に到達し。16週時点でイブグリースの効果が確認された患者のうち、83%以上がADjoin試験の期間中、外用コルチコステロイドやカルシニューリン阻害外用薬などの併用を必要としなかった。
 AAD 2025では、白人以外の患者を対象とした臨床試験(ADmirable)や、デピュピルマブで治療歴のある患者を対象とした臨床試験(ADapt)の結果も発表された。
 痒み、皮膚の疼痛(不快感とヒリヒリする痛み)や、痒みによる睡眠障害の改善では、検証済みの患者報告アウトカムを用いて臨床的意義のある変化の有無を評価した。
 ADmirable試験は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の有色人種を対象にイブグリースを評価する類のない試験である16週時点までに痒みの有意な改善(そう痒NRSでベースラインから4ポイント以上改善)と皮膚の痛みに対する有意な改善(ベースラインから 4ポイント以上改善)がみられた患者の割合は約 6割であった(それぞれ 58%および59%)。
 16週時点に痒みによる睡眠障害が改善(睡眠障害スケールのスコアがベースラインから2ポイント以上改善)した患者の割合は、30%以上であった。 デュピルマブで治療歴のある患者を対象にイブグリースを投与したADapt試験では、24週時点において、皮膚の疼痛の有意な改善(ベースラインから4ポイント以上改善)がみられた患者の割合は 75%、痒みの有意な改善(そう痒NRS がベースラインから4ポイント以上改善)がみられた患者の割合は 62%であった。
 また、24週時点に痒みによる睡眠障害の改善(睡眠障害スケールのスコアが2ポイント以上改善)がみられた患者の割合は、42%であった。これら全試験において、エンドポイントの達成率はas-observed解析(実測値に基づく解析)で算出した。
 これら試験の安全性プロファイルは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を対象としてこれまでに行われたイブグリースのP2試験と一貫しており、投与頻度による差はなく、新たな安全性シグナルは認められなかった。
 有害事象の大部分は軽度か中等度で、投与中止に至った有害事象は認められなかった。イブグリースの副作用として、結膜炎と注射部位反応が認められた。
 リリーは、米国に加え、欧州を除く全世界でイブグリースの開発と販売に関する独占権を有している。リリーのパートナー企業であるAlmirall社は、欧州においてアトピー性皮膚炎を含む皮膚科領域の治療薬としてイブグリースの開発・販売に関する権利を所有している。

◆Raj Chovatiyaロザリンドフランクリン医科学大学シカゴ医科大学臨床准教授、医療皮膚科・免疫学研究センターの創設者兼所長(M.D., Ph.D., MSCI)のコメント
 医療従事者は、アトピー性皮膚炎の症状・徴候に対して長期間持続する治療法を常に模索している。今回の3年間にわたるデータは、アトピー性皮膚炎の治療目標を長期的な皮膚病変の完全消失と高く設定した場合でも、少なくともイブグリースの投与16週時に奏効した患者さんの半数で目標を達成できることを示した。
 この結果は、既存の外用療法ではコントロールが不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対するファーストラインの生物学的製剤として、イブグリースの有効性をさらに裏づける結果である。

◆Mark Genoveseリリー自己免疫疾患開発部門シニアバイスプレジデント(M.D.)のコメント
 我々は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんから、予測できない増悪が繰り返し現れる状態が負担であり、長期間にわたる症状コントロールが可能な治療を探し求めているという声を聞いている。
 イブグリースは、既存の外用療法ではコントロールが不十分なアトピー性皮膚炎に対するファーストラインの生物学的製剤であり、月1回の維持投与によって3年時点で皮膚病変の完全消失を報告した唯一の薬剤であるAAD 2025で発表された追加評価の結果では、幅広い患者さんにおいて痒みなどの生活に大きな影響をもたらす症状の有意な改善を示している。

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