住友化学および住友ファーマは17日、再生・細胞医薬事業合弁会社「ラクセラ」設立に関する説明会を開催し、岩田 圭一住友化学代表取締役社長が「再生・細胞医薬事業の展望として2030年代後半には最大3500億円の大型事業とする」目標を明らかにした。
木村徹住友ファーマ代表取締役社長も「住友化学グループ全体の力を結集してラクセラの再生・細胞医薬事業の成功を目指したい」と抱負を述べた。
本年11月15日に設立され、来年2月1日事業開始を予定するラクセラは、再生・細胞医薬事業の研究・開発を中心に、細胞医薬関連製品の製造・販売、輸出入の役割を担う。同社は現在、住友ファーマ100%子会社であるが、来年2月1日以降は、 住友化学66.6%、住友ファーマ33.4%の合弁会社となる。
ラクセラの再生・細胞医薬事業運営では、住友ファーマの事業基盤をフル活用しながら、住友化学を含めた4社シナジーにより再生・細胞医薬事業の事業化を加速する。具体的には、住友化学の「工業化技術、分析技術、品質管理ノウハウ」、住友ファーマの「ファーマ事業基盤・知見・技術」、S-RACMOの「効率化した生産・製造技術」、住化分析センターの「細胞分化誘導における様々な細胞状態の確認及び製造設備維持管理技術」など住友化学グループ全体の力を結集し、ラクセラ事業の成功を目指す。
会見で岩田氏は、「住友化学グループの2023年度業績は非常に厳しいものとなったが、事業再構築などの短期集中業績改善策にグループ一丸となって取り組んだ結果、本年度のV字回復に目途が付いてきた」と同社の現況を説明。さらに、「農薬・半導体材料を中心とした住友化学の当面の成長ドラーバー」に言及した後、それに次ぐ新しい成長領域として「アドバンストメディカルソリューション(先端医療の普及)」を指摘し、「中長期の視点で腰を据えて育成していく」考えを強調した。
こうした中、住友化学の再⽣・細胞医薬事業への本格参入は、新成⻑領域の大きな中核となる。細胞治療の世界市場は約20億ドル(2022年時点)に上る。今後も年率10〜15%での伸びが見込まれている。
岩田氏は、「住友化学を含めた4社の強みを発揮してグループを挙げて再⽣・細胞医薬事業のグローバル展開を加速させ、世界中の対象患者に新しい治療選択肢を提供したい」と強調し、「2030年代後半に最⼤で約3500億円の事業規模を⽬指す」と訴えかけた。
一方、木村氏は、「再⽣・細胞医薬の‟フロントランナー”として、再⽣医療でしか実現できない新たな価値を提供したい」と明言。さらに、住友化学との合弁会社「ラクセラ」設立の住友ファーマのメリットとして、①株式保有率に応じた投資負担により、研究開発・設備投資の負担軽減、②ラクセラの事業収益に加え、譲渡対価収益、開発マイルストン(最⼤で約40億円)および販売マイルストン(最⼤で約1500億円)収⼊、③研究開発戦略(がん、精神神経)に柔軟性を持たせることが可能、④再⽣・細胞医薬事業をグループ内に留め、従業員も継続関与ーを挙げた。
その上で、「住友化学からの資本受け⼊れによって、住友ファーマ単独時より研究開発・設備投資資⾦を安定的に確保できる」と指摘し、「住友ファーマ、住友化学、ラクセラ、S-RACMOそれぞれの技術・ノウハウ・⼈的資本を最⼤限に活⽤できる最適な運営体制が構築できる」と訴求した。
住友ファーマの再⽣・細胞医薬事業については、現在、リサイミック(先天性無胸腺症)を米国で上市しており、住友ファーマアメリカが販売している。
開発品目には、◆ドパミン神経前駆細胞(他家iPS細胞由来、パーキンソン病、日米)CT1-DAP001/DSP-1083、◆網膜⾊素上⽪細胞(他家iPS細胞由来、網膜⾊素上⽪裂孔、日本)HLCR011、◆網膜シート(⽴体組織、他家iPS細胞由来、網膜⾊素変性、日米)DSP-3077◆神経前駆細胞(他家iPS細胞由来、脊髄損傷、日米)、◆ネフロン前駆細胞(⽴体臓器、⾃家/他家iPS細胞由来、腎不全)があり、これらを製品化してラクセラで販売する。
2030年代後半最⼤約3500億円の売上収益においてこれら開発品目の占める内訳は、ドパミン神経前駆細胞、網膜シート、網膜⾊素上⽪細胞の順に大きいと予測される。
再⽣・細胞医薬事業の展望では、2027年度には⽇本での製品上市の成功を通じた再⽣医療領域での国内リーディングポジションを確⽴し、売上収益最⼤100億円超を見込んでいる。
2030年代には、⾼度な⽣産技術と最先端サイエンスを追求して領域・地域を拡⼤し、グローバル全体でプレゼンスを発揮し、30年代半ばに最大1000億円超、30年代後半には最⼤で約3500億円を目指す。