上期半期は事業譲渡等売却益無しでコア営業損益ゼロまで到達
住友ファーマの木村徹社長は30日、2024年度中間決算説明会で会見し、「上半期は、米国でのオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)の売上拡大が貢献して前年同期比18.4%の増収となった」と報告。
増収に加えてコスト削減の取組によりコア営業損益も「前年同期658億円から事業譲渡等売却益無しでゼロ(△3800万円)まで大幅改善し、上半期は当初計画に比べて好調に推移した」と述べ、再建に向けての順調な滑り出しを強調した。
2024年度通期業績予想は、「売上収益は、オルゴビクス、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の基幹3製品を中⼼に伸長して2Q実績を上回る。販管費・研究開発費ともに概ね2Q実績並みを見込んでいる」と説明。
その一方で、「⽇本での早期退職実施による国内製品売上下振れリスクや、交渉中の事業譲渡等複数案件の成否・規模などの不確定要因もあり、通期業績予想は、現時点で据え置く」と明言し、「2024年度通期のコア営業利益は、事業等の売却を含めて10億円を見込んでいるが、3Qでしっかりと予想を出したい」と上方修正に含みを持たせた。
2024年度中間期の業績は、売上収益1807億円(対前年同期比18.4%増)、コア営業利益△0(同658億円改善)、営業利益△82億円(同783億円改善)、親会社の所有者に帰属する四半期(当期)利益△322億円(同355億円改善)と順調な回復基調にある。
コア営業損益は、事業譲渡等売却益無しで3800万円の赤字まで大幅改善した。販管費は、北⽶グループ会社の再編等により834億円(前年同期⽐29.8%減)、研究開発費はパイプラインの選択と集中により251億円(同44.6%減)となった。
借入金の状況は、ブリッジローン(1450億円)の返済期限が2024年12⽉末に延長済みだ。もともとの12月の返済金600億円と併せた2050億円について、「現在、必要なリファイナンスを金融機関および住友化学と協議している」
北米の主要製品売上収益は、オルゴビクス355億円(前年同期売上収益194億円)、マイフェンブリー60億円(同42億円)、ジェムテサ252億円(同158億円)、アプティオム199億円(同161億円、抗てんかん剤)。基幹3製品の上期計画達成率は113%、売上高は前年同期比157%に上る。
オルゴビクスは、メディケアパートDの薬剤給付制度変更が追い風となり、計画達成率126%と大幅伸長した。2025年1⽉に患者⾃⼰負担の上限⾦額のさらなる低下によって、今年度売上収益は当初計画を超過すると予測される。
マイフェンブリーは、GnRH阻害剤市場、⼦宮内膜症におけるシェアの拡⼤が計画を下回ったため計画達成率75%の未達となった。今後も数量は微増するも、経⼝GnRHの市場動向を踏まえ、今年度の売上収益の当初計画達成は困難な⾒込だ。
ジェムテサは、期⾸予想に⽐較し、返品およびCoverage Gapの負担が少ない等の複数の要因により計画を9%上回った。2024年4⽉にミラベグロン後発品が上市されたものの、ジェムテサの数量は引き続き堅調に伸⻑している。
国内は、本年9月17日~10月11 日までを募集期間とする早期退職者募集には604名が応募した。同早期退職者募集人員約700名は未達であった。だが、定年退職や自己都合退職などの自然減を含めるとほぼ700名の退職者が見込まれ、本年12月1日時点で当初想定の約2000名体制(事業構造改善費⽤ 42億円)となる。従って、「早期退職の再募集は行わない」(木村社長)。
2024年12⽉からの新体制では、R&D本部は、「効率的かつ継続的にR&D活動ができる体制」へと移行する。具体的には、リサーチディビジョン、開発本部および技術研究本部の3本部を統合。これまでの3本部17部⾨を1本部15部⾨とし、人員も約560名から440名に縮小する。
木村氏は、「リーンな組織によって一気通貫したR&D活動を展開して、上市が近いがん2品⽬、再⽣・細胞医薬の開発プログラムに注⼒し、2030年代を⽀えるがん、精神神経領域の低分⼦開発プログラムを推進する」考えを示した。
営業本部は、7支店(旧体制比5支店減)、約620⼈(同430名減)、うちMR約450⼈(同320名減)体制となり、「MRの配置は疾患領域制からエリア制を敷き、CNS領域と糖尿病領域をいずれも担当する」
中川勉住友ファーマアメリカ社President and CEOは、米国でのリストラ経験を踏まえて「残った人は、会社に対して一定のエンゲージメントを持っている。その人材を上手くモチベートして製品販売に尽力して貰うことに尽きる」と断言。さらに、「米国も人は減らしたが一定の売上を達成しているので、国内も十分達成できるものと信じている」と言い切った。
再⽣・細胞医薬事業の体制変更では、住友化学との⼀体運営のメリットとして木村氏は、「研究開発・⽣産設備への投資を継続、事業化の加速」、「再⽣・細胞医薬分野のフロントランナーである住友ファーマの技術・知⾒の最⼤限活⽤」、「住友ファーマにおけるファーマ機能のインフラ維持、医薬品事業を含めた事業体制の柔軟な検討・アレンジ」を挙げた。
パーキンソン病対象他家iPS細胞由来製品については、「京都大学での2年の観察期間が2023年末に終了した。医師主導治験データは7例ではあるが、期待通りの結果が出ている」と報告。
その上で、「2024年度内の条件・期限付き申請および承認取得を目指していたが、PMDAとの協議を踏まえて申請⽬標を再検討している。医師主導治験の結果は、京都⼤学より発表される予定である」と述べた。