JCRファーマは23日、JCR 独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo(JBC)」を用いた AAV 遺伝子治療が中枢神経系疾患の治療に有効である可能性を前臨床研究で示したと発表した。
同遺伝子治療の前臨床研究データは、10 月 22 日~25 日までイタリア共和国ローマで開催されているEuropean Society of Gene and Cell Therapy (ESGCT) 31st Annual Congressにおいて、ポスター発表された。
JBC技術を適用した AAV による遺伝子治療は、血液脳関門を通過して中枢神経系症状に有効である可能性がある。前臨床研究では、JBC技術を適用したAAVベクターにより、マウスおよびサルにおいて、従来のAAV9ベクターと比較して中枢神経系へ高い効率で遺伝子導入できることが確認された。
同ベクターを用いた複数の中枢神経系疾患モデルマウスにおいて、有害基質の減少が確認され、脳組織病態、行動試験、及び生存期間において大幅な改善が示された。
また、さらに改良を加えたベクターによって、従来のAAVベクターで問題となる肝臓へのAAVベクターの感染が顕著に低減された。
これらの結果より、JBC 適用改変AAVベクターは中枢神経系疾患の遺伝子治療における有望なツールであることが示唆される。
ESGCT31st Annual Congressにおける発表では、JBC技術を適用したAAVベクターを用いることの潜在的な利点として、様々な改良が可能であり、製造工程が単純で生産性が安定していることについても言及された。
◆薗田啓之JCRファーマ取締役専務執行役員研究本部長のコメント
これらの結果は、血液脳関門を越えて遺伝子治療薬を届ける手段として JBC 技術を応用することで、中枢神経系の疾患を治療できる可能性を示している。
このアプローチは、これまで治療が困難であった疾患に対する新たな治療法の可能性を開くものである。今回の前臨床試験の結果により、当社の新技術は従来のAAV9と比較して効率良く中枢神経系へと薬剤を送達できることを示した。
また、肝臓への指向性を著しく減少させることで、ヒトでの使用における AAVの安全性向上が期待できる。
当社は、未だ満たされていない医療ニーズに対応する革新的なソリューションの開発に尽力しており、今回の研究はその重要な一歩となる。