小野薬品は16日、同社完全子会社のデサイフェラが開発中の「ビムセルチニブ」について、米国FDAが腱滑膜巨細胞腫(TGCT)患者を対象とした新薬承認申請を優先審査の対象として受理したと発表した。
FDAは、処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく、審査終了の目標期日を2025年2月17日に設定した。また、7月中旬に欧州医薬品庁(EMA)は、ビムセルチニブの販売承認申請(MAA)を受理し、EMAの中央審査プロセスを開始している。
今回の申請は、抗CSF1/CSF1R療法による治療歴がなく(イマチニブまたはニロチニブによる治療は許容)、手術不適応のTGCT患者を対象にvimseltinibの有効性および安全性をプラセボと比較評価するピボタルなP3試験(MOTION試験)の結果に基づくもの。
同試験において、ビムセルチニブは、プラセボと比較して、主要評価項目であるintent-to-treat(ITT)集団における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)を用いた盲検独立放射線評価委員会(BIRR)の評価による25週時の奏効率(ORR)で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(vimseltinib群40% vs プラセボ群0%、p<0.0001)。
また、ビムセルチニブは、プラセボと比較して、すべての重要な副次評価項目においても、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。
同試験におけるビムセルチニブの安全性プロファイルは、管理可能であり、P1/2試験でこれまでに報告されたものと一貫していた。MOTION試験の結果は、2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表され、同時に Lancet 誌に掲載された。
TGCTは、コロニー刺激因子1(CSF1)遺伝子の転座によって、CSF1の過剰発現とCSF1受容体陽性炎症細胞の病変への集積により引き起こされる希な疾患で、関節の内側または近位に発生する希な非悪性腫瘍である。
CSF1遺伝子の調節異常によって引き起こされ、CSF1の過剰産生につながる。TGCTは、従来、腱鞘巨細胞腫(GCT-TS)または色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)として知られていたびまん型のTGCTです。これらの腫瘍は良性であるが、増殖して周囲の組織や構造に損傷を与え、関節の痛み、腫れ、身体機能の低下、可動域の制限などを引き起こす場合がある。
手術が主な治療選択肢であるが、特にびまん型のTGCTではこれらの腫瘍が再発する傾向がある。治療を行わなかった場合、または腫瘍が継続的に再発すると、影響を受けた関節および周囲の組織に損傷と変性が生じ、重大な障害を引き起こすケースがある。手術不適応の患者に対して全身治療の選択肢は限られており、TGCTに対する新たな治療選択肢が必要とされている。
◆Steve Hoerterデサイフェラ社長兼CEOのコメント
ピボタルなP3試験であるMOTION試験の肯定的な結果を踏まえ、EMAがビムセルチニブの販売承認申請の審査を開始したことの直近の発表に続き、米国での審査プロセスが開始されることを嬉しく思う。TGCT患者さんに新たな治療選択肢をお届けできるようFDAと協働していく。