住友ファーマ8日、東京都内で社長会見・記者懇談会を開催し、木村徹代表取締役社長がパーキンソン病対象他家iPS細胞由来製品について、「京都大学での2年の観察期間が2023年末に終了し、医師主導治験(生細胞)のデータを基に、承認申請に向けてPMDAと事前の相談を開始するなど条件・期限付き申請の準備をしている」と報告。その上で、「2024年度中の承認取得・上市を目指す」計画を改めて示した。
また、中川勉スミトモファーマ・アメリカ社President and CEOは、2024年度1Qの北米での順調な滑り出しを踏まえての「新しいセールスストラテジーの手応え」を強調し、「計画通りの業績を上げていく」と力強く語った。
パーキンソン病対象他家iPS細胞由来製品は、米国においては医師主導治験と企業治験の2つの治験(P1/2)を実施する。治験用の細胞は、いずれもiPS細胞を使った細胞医薬品を作るための専用施設として2018年3月に同社が開設した再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」で製造し、米国へ輸送・提供する。
米国での医師主導治験は生細胞を、企業治験では凍結細胞を用いる。木村氏は、「生細胞と凍結細胞は全く同じ製造法方法で製作し、凍結細胞はその後に凍結する」と説明し、「凍結細胞は、使う前に解凍しなければならない。生細胞はそのまま使えるが数日間しか保管できず、流通を考えれば凍結細胞の方が長く保管できる」とそれぞれの特徴を指摘。その上で、「両細胞の有効性と安全性を比較した上で、治療により即した製品形態を選択する」考えを示した。
同製品は、世界初の他家iPS細胞由来製品として期待されており、2030年代にはグローバルで1000億円超の事業規模を目指す。
木村氏は、がん領域で開発中のヌビセルチブ(TP-3654、骨髄線維症、日米でP1/2試験実施中)、エンゾメニブ(DSP-5336、急性骨髄性白血病、日米でP1/2試験実施中)にも言及。
ヌビセルチブは、「2022年5月FDAからオーファンドラッグ指定を受けており、日本・米国で2027年度上市を予定している。骨髄線維症の市場規模は大きく、標準療法との併用による大型化が期待され、「ピーク時売上は、1000億円規模」を見込んでいる。
エンゾメニブは、「白血病細胞の増加抑制作用と高い安全性」を特徴としており、FDAから2022年6月にオーファンドラッグ指定、本年6月にファストトラック指定を受けている。ピーク時には「500億円規模の売上高」が期待される。
北米は新しいセールスストラテジーに手応え 計画通りの実績示す
一方、中川勉氏は、昨年2回のリストラを実行して従業員数を2200名から1200名に削減し、個々の負担がある中で2024年度1Qで順調なスタートを切った北米の今後の見込みについて説明した。
北米は、売上収益の柱となるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の基幹3製品の売上収益合計が、2024年度1Q計画に対し強含みに進捗した。
中川氏は、「米国では、昨年7月、旧7社を一つの会社に合併し、人員削減とともに異なるカルチャーを一つの組織にまとめた。その後、売上の様子を見ながら昨年12月から本年3月にかけて2回目の人員削減を実施した」と報告。
さらに、「これら7カ月から8カ月の期間にどのような人材がいるのかの理解が進み、しっかりと製品の特性を踏まえたセールスのストラテジーを立てるととともに適正な人員配置を行って4月から実行した」とこれまでの経過を説明した。
その上で、「新しい体制が始まったにも拘わらず第1Qは良い成績が出ている。我々の設計したストラテジーの手応えを感じており、人材の優秀さも確認できた。セールスは少数精鋭ではあるが、今後はさらに一体感を強めて計画通りの成果を出していく」と訴えかけた。