MSDは22日、経口低酸素誘導因子2アルファ(HIF-2α)阻害剤「ベルズチファン」について、根治切除不能または転移性の腎細胞がん(RCC)の治療薬として日本国内で承認申請したと発表した。
ベルズチファンは、経口投与可能なファーストインクラスの低分子HIF-2α阻害剤で、がん細胞においてVHL蛋白質機能が喪失状態時にHIF-2αとHIF-1βのヘテロ二量体形成を選択的に阻害する。
その結果、血管新生、増殖および腫瘍代謝に関連する低酸素下で誘導される遺伝子の転写を阻害して抗腫瘍効果を示す。現在、フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病を対象とした臨床試験も進行している。
腎細胞がんは腎臓がんのうち最も多くみられる種類のがんで、腎臓がんの約9割を占めている。2019年には約2万1000人が新たに腎臓がん(腎盂がん除く)と診断され、男性は女性の約2倍の頻度で発症するとされている。
腎細胞がんは、初期では自覚症状がほとんどないため、小さいうちに発見できるのは健康診断や他の病気が疑われたために行う検査などで偶然発見されるものが殆どである。
がんが進行した場合、血尿や背中の痛み、腹部のしこりなどの症状が現れる。手術でがんを切除することが難しい場合は、薬物療法を行うこともあり、淡明細胞型の腎細胞がんでは主に免疫チェックポイント阻害剤(PD-1またはPD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤)や分子標的薬(VEGFR-TKI)を用いる。
だが、それらによる治療後に進行した患者に対しては、臨床試験で有効性・安全性が検証された治療方法が無かったため、新たな選択肢が求められていた。
今回の申請は、PD-1またはPD-L1阻害剤とVEGFR-TKIを逐次または同時に用いた治療後に進行した切除不能な局所進行または転移性の淡明細胞型RCC患者746名を対象とした無作為化非盲検実薬対照P3試験(LITESPARK-005試験)のデータに基づくもの。
同試験において、ベルズチファンは、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)について、対照薬であるエベロリムスに対して統計学的に有意かつ臨床的に意味のある延長を示した。なお、同試験におけるべルズチファンの安全性プロファイルは、前相の試験で報告されたものと一貫している。