富士フイルム富山化学は24日、抗ウイルス薬「アビガン」について、同日、マダニ媒介感染症である「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染症」の適応追加承認を取得したと発表した。なお、同製品の販売は、薬価収載後となる。
SFTSウイルス感染症は、主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。国内での患者数は年間100例程度と少なく、致死率は約27%と報告されている。
現在、SFTSウイルス感染症に対する治療薬はなく、感染者の治療は対症療法が主体となっている。
今回の承認は、富士フイルム富山化学がSFTSウイルス感染症患者を対象に実施した国内P3試験の結果に基づくもの。同試験などのデータにおいて、SFTSウイルス感染症に対するアビガンの有効性及び安全性が確認されたため、2023年8月に厚生労働省へ承認事項一部変更承認申請を行い、承認に至った。
アビガンは、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有しており、2014年3月に「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症」を適応症として国内で製造販売承認を取得した抗ウイルス薬だ。
他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、同剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される医薬品である。
アビガンのメカニズムの特長から、インフルエンザウイルス以外のウイルス感染症分野でも応用の可能性が高いと考えられ、SFTSにおいては、2016年6月から愛媛大学、長崎大学、国立感染症研究所が中心となり同剤を用いたSFTSウイルス感染症患者を対象とした臨床研究が実施された。
有効な治療法の開発につながる知見が得られたため、富士フイルム富山化学がSFTSウイルス感染症患者を対象とした国内P3試験を2018年4月から実施した。なお、「アビガン」は、厚労省より2023年6月に、SFTSウイルス感染症を効能または効果とする希少疾病用医薬品に指定されている。