MSDは29日、開発中の成人向け21価肺炎球菌結合型ワクチンV116について、P3試験(STRIDE-10試験)で好結果を得たと発表した。
同試験は、肺炎球菌ワクチン未接種の50歳以上の成人に対するV116の免疫原性、忍容性、安全性をPPSV23(23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)と比較評価したもので主な結果は次のとおり。
◆V116は、PPSV23と共通する12種類の血清型において、PPSV23に対して免疫応答の非劣性を示した。免疫応答は、接種後30日目の血清型特異的オプソニン化貪食活性(OPA)の幾何平均抗体価(GMT)で評価された。
◆V116は、PPSV23に含まれないV116固有の9種類の血清型において、PPSV23に対して免疫応答の優越性を示した。免疫応答は接種後30日目のOPA GMT比で評価された。免疫応答が4倍以上上昇した被験者の割合では、V116は、V116固有の9種類の血清型のうち8種類において、PPSV23に対して優越性を示した。
◆V116の安全性プロファイルはPPSV23と同様であった。
これらの試験結果は、スペインのバルセロナで開催されている「第34回欧州臨床微生物学・感染症学会」で発表された。
今回の試験データは、今年の「国際肺炎・肺炎球菌性疾患学会(ISPPD)」および2023年の「World Vaccine Congress West Coast」で報告された複数のP3試験結果をふまえつつ、それらにさらに追加されるもの。
MSDは、V116の臨床データに加え、フランス、スウェーデン、スペイン、オランダの成人においてV116が侵襲性肺炎球菌感染症および菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎による健康・経済的負担を軽減できる可能性を示唆する結果も発表した。
V116は現在、米国FDAと欧州医薬品庁(EMA)による審査が行われている。V116はFDAの優先審査品目に指定され、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)の審査完了予定日は2024年6月17日に設定されている。V116は、成人における侵襲性肺炎球菌感染症を予防することに特化してデザインされており、米国疾病予防管理センター(CDC)の2018〜2021年のデータによれば、V116が対応する血清型は65歳以上の成人侵襲性肺炎球菌感染症の約83%の原因となっている。
◆ウォルター・オレンスタインEmory University医学部疫学・グローバルヘルス・小児科名誉教授(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの科学諮問委員会委員)のコメント
侵襲性肺炎球菌感染症や肺炎球菌性肺炎は特に高齢者やリスクの高い人にとって深刻な公衆衛生上の課題である。今回の良好な結果は、V116が成人の侵襲性肺炎球菌感染症の予防に貢献できる可能性を示している。
◆エリアブ・バールグローバル臨床開発責任者(MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、チーフメディカルオフィサー)のコメント
現在、成人に対して肺炎球菌結合型ワクチンが使用できますが、依然として、ワクチンが対応する血清型と、残存して侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす血清型に相違がある。
今回のデータではV116が成人の侵襲性肺炎球菌感染症の大半を引き起こす血清型に対する免疫応答を誘導することが示され、V116が成人のための新しい重要な予防手段となる可能性を支持するエビデンスがさらに強化された。