ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者200万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。
今回は2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、高ストレス者(E判定)となった1万8389人のデータをもとに、女性の年齢別に高ストレス者率分布を分析した。
その結果、高ストレス者率は32歳と37歳をピークとなり、28歳から40歳にかけて高水準を維持することなどが判明した。今回の調査対象、調査結果のポイント、詳細は次の通り。
【調査対象】
◆調査期間:2022年4月1日~2023年3月31日
◆調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス2022年度契約企業・団体の一部
◆有効受検者数:13万1912人
【調査結果のポイント】
・ 高ストレス者率は32歳と37歳をピークに28歳から40歳にかけて高水準を維持
・ 58歳を過ぎると高ストレス者率は著しく減少する傾向
ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促し、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレス状態であると判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。
<高ストレス者とは>
・ストレスの自覚症状が高い人
・ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人
ドクタートラストのストレスチェックは、個人のストレスレベルを5段階(A~E)で評価している。Aはストレスが最も低く、Eが最も高いとされる。
図1は、女性受検者全体(18歳から65歳)のストレス度合の分布である。高ストレス者(E判定)率は、13.94%であった。
上記のうち高ストレス者と判定された合計1万8389人のデータをもとに、年齢別の高ストレス者率分布を分析した結果は次の通り。
1、 女性の高ストレス者率は30代後半が最も高く、60~65歳が最も低い
図2は、女性の過去4年分における年代別の高ストレス者率分布である。
高ストレス者率が最も高かったのは、2019・20年度が「30代前半」、2021・22年度が「30代後半」であった。高ストレス者率は30代を中心に高くなる傾向があり、2023年度も同様の傾向がみられるかもしれない。
一方で、過去4年継続して同比率が最も低かったのは、「60~65歳」であった。2023年度でも60歳を過ぎると高ストレス者は著しく下がる傾向がみられるかもしれない。
2、 女性の高ストレス者率は37歳が最も高く、58歳以降は毎年低くなっていく
図3は、女性の年齢別高ストレス者率である。
女性で高ストレス者率が最も高いのは37歳(16.92%)で、32歳(16.91%)、38歳(16.75%)、30歳(16.55%)、31歳(16.41%)と続く。
一方で、同比率が最も低いのは65歳(5.55%)で、64歳(7.71%)、63歳(8.74%)、62歳(8.77%)、61歳(9.86%)の順となる。58歳以降では、年齢を重ねるごとに高ストレス者率が低下していった。
さらに、28歳から40歳までは高ストレス者率が15%を継続して超えていることがうかがえた。
【総括】
女性の年齢と高ストレス者率の関係性を調査した結果、高ストレス者率は28歳から40歳にかけて高水準が続き、32歳と37歳でそれぞれピークを迎えている。過去の4年分を見ても、30代で高ストレス者率が高くなる傾向がみられる。
「令和4年(2022)人口動態統計」(厚生労働省)では、女性の平均初婚年齢は29.7歳となっている。また、出産時の母の平均年齢は、第1子が30.9歳、第2子が32.8歳であった。晩婚化・晩産化が進んでいる現状において、30~32歳にかけて高ストレス者率が高い背景には、婚期の不安や出産時期などが影響しているかもしれない。
また、37歳前後は第1子が就学する時期もあり、ワークライフバランスが崩れやすいことが考えられる。加えて「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると、女性の管理職は年々増加傾向にあり、企業としても女性の管理職登用に向けて教育に力をいれている昨今では、37歳前後が特にストレスを感じ易い可能性がある。
一方で、40歳を過ぎると高ストレス者率は比較的減少する傾向がみられる。女性の30代はストレスが溜まりやすいことを知り、上手にストレスと付き合う方法を備えると良いかもしれない。