京都府薬剤師会は24日、同会館で2023年度第23回臨時総会を開催し、2024年度予算及び事業計画を承認した。
また、同会の最大課題となっている‟会館問題”について報告。「京都市からの借地に立地する現会館の維持」、「京都市から借地を購入」、「移転」など問題解消のための選択肢が示された。今後、将来の薬剤師に求められている役割を果たすために薬剤師会館にどのような機能が必要かその在り方を会員と十分に議論し、短いスパン内でより良い方向性を見出していくことが確認された。
始めのあいさつで河上英治会長は、「本年6月より新しい診療報酬がスタートする。今回の改定内容からは、全国6万軒の全ての保険薬局をかかりつけ薬局にする方向に向かって国がギアを上げてきたことを強く感じる」と強調。
その上で、「OTC48薬効分の在庫が診療報酬算定要件に加わった意義の大きさ」を指摘し、「薬剤師が生き残っていくための道標を国が示してくれた。今は、薬剤師が国民に評価される大きな節目の時期である。皆さんで、楽しく、明るく頑張っていきたい」と訴え掛けた。
続いて、橘昌利京都府健康福祉部薬務課長が、同課の新規予算事業として「薬剤師確保に向けた協議会開催」および「災害薬事コーディネーターの養成」について説明した。薬剤師確保に向けた協議会は、京都府内の薬剤師の地域偏在の緩和や、病院薬剤師の確保を中間アウトカムとしている。最終的には、全ての京都都府民が同等の薬物療法を受けることを目指しており、同協議会で実効性のある対策を検討していく。
災害薬事コーディネーター養成事業は、「災害発生時に薬剤師や医薬品などの医療資源について必要な調整を行うことができる人材育成」を目的としたもの。現在、2024年度後半を目途に、「認定のための研修会開催」に向けた準備を進めている。
京都府薬の2024年度予算は、収入合計2億0461万7000円、支出合計2億4461万7000円。収支差額の4000万円は、前期繰越収支差額で補填する。
事業計画は、2024年度の計画に設定された大・中・小項目のそれぞれの項目において、目標として「患者・府民本位のより良い医療の実現」を掲げ、それに向かって、薬局薬剤師部会、病院診療薬剤師部会、学校薬剤師部会に係る事業計画を大・中・小項目及び小項目についての具体的執行内容によって分類し、明示している。大項目における事業計画は次の通り。
◆連携強化=地域包括ケアシステムの構築、病院・診療所・薬局の情報共有および在宅医療の推進に向けた薬薬連携の推進、強化
◆薬局強化=患者のための薬局ビジョン実現に向けた掛かり付け薬局、健康サポート薬局、地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の推進・強化
◆病院強化=タスクシフティングの推進、入退院支援や周術期業務等の強化と薬剤師の確保・地域偏在への対応
◆職能の充実=公益性の高い事業への積極的関与を通じた職能充実の推進
◆組織強化=質の高い医療の実現を目指した組織強化や情報活動の展開
京都府薬剤師会では、2025年10月12・13日の両日、京都市で開催される日本薬剤師会学術大会に向けての準備を進めている。同大会は、「そうだ、薬剤師に聞いてみよう」~プロフェッショナリズムの涵養(かんよう)~」をメインテーマとしており、京都府薬ならではの「病院・薬局・行政による医療貢献に関わるエビデンスの集積」がアピールポイントの一つになっている。
一方、京都府薬の会館問題は、現会館が立地している京都府からの借地の賃借料が、昨今の地価上昇の影響を受け、2021年以降の上昇が著しく、今後も上昇が推察されることに起因するもの。
解決策として、「借地のまま現況を留める」、「京都市から借地権料(推定6億5000万円)を得て他の場所に移転する」、または「借地権料を得て貸しフロアーに移転する」などの選択肢が挙げられている。
借地料は2022年818万円、2023年859万円、2024年902万円と推移しており、「土地の固定資産税評価額が上昇した場合にはさらに賃借料が上昇する」という状況が生じてくる。
現状の財政状況からすると特定資産の取り崩しによる賃借料の負担増加分の補填はできるが、あくまでも一次的な延命措置に過ぎず、資金繰りの悪化により維持ができなくなる可能性があり、抜本的な解決にならない。
加えて、3~5年毎の会館補修(1回5000万円程度)や、30年後の会館取り壊し(2億円程度)や会館建て替え(8億円程度)を考慮する必要がある。
一方、移転の場合は、その規模によって試験センターをどうするのかの検討が大きな課題となる。また、選択肢の決定に3~5年のスパンを要すれば、先々の財政に困難を擁する。
こうした状況を踏まえて京都府薬では、将来の薬剤師に求められている役割を果たすために薬剤師会館にどのような機能が必要かその在り方を会員と十分に議論し、短いスパン内でより良い方向性を見出していく。