製造DXの最新技術導入で医薬品の安定供給・品質保証実現
武田薬品は6日、光工場(山口県光市)に、約70億円を投資し、エンティビオ(日本製品名:エンタイビオ)の新製造ラインを増設し、商用稼働を開始したと発表した。エンティビオは、炎症性腸疾患(IBD)の治療に用いられる薬剤で、これまで全世界で、約10年、130万人以上の患者の治療に貢献している。
新ラインの充填工程には、さらなる無菌性保証のために、従来の無菌製剤製造工程に比べて汚染のリスクを大幅に減少できるアイソレータ(無菌状態の密閉環境)の技術を取り入れている。さらに、「滅菌済シングルユースシステム」を使用することで、製品の汚染防止を図り、品質保証を向上させている。
今回の新ライン稼働で、光工場はエンティビオの製造能力をこれまでの3倍以上に増強することが見込まれており、これまで医薬品製造受託機関(CMO)に委託していたエンティビオのバイアル製剤の製造の大部分の内製化が可能となり、品質保証のさらなる向上が期待できる。
光工場は、日本を含むエンティビオの全世界向けのバイアル製品製造の最重要拠点として、患者への貢献と事業成長を牽引する重要な役割を担う。
全長約80mの新製造ラインは、製造DX(デジタルトランスフォーメーション)の最新技術を集約している。製造状況のリアルタイムモニタリングと集約したビックデータの分析、さらには製造工程へのフィードバック、検査や生産ロスを減らす最新設備やMES(製造実行システム)の導入などで、製造能力の増強とペーパーレスなオペレーション、さらなる品質保証を可能にした。
新ラインのオペレーターにとって新しい技術であったシングルユースシステムを用いた作業トレーニングにAR技術を活用することで、短期間で質の高い育成を可能にし、商用稼働前の初回製造(プロセスパフォーマンス適格性確認)を逸脱ゼロで成功させ、さらにはVR技術を使った無菌環境でのトレーニングにより、どのオペレーターも等しくエンタイビオの製造が可能になった。
現在、日本におけるIBDの患者数は約29万人と推定されている。無菌性保証を向上し、製造能力を増強した新ラインの稼働により、光工場は、世界中のIBD患者へ高品質な医薬品を提供する重要な役割を担っていく。
◆グレッグ・ティモンズ武田薬品グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン ヘッドのコメント
新ラインの商用稼働により、世界中のIBD患者さんにこれまで以上に貢献できることを嬉しく思う。今後は、IoT技術を用いた製造設備の状態監視・予知保全や、ウェアラブル生体認証デバイスを使用したシステムログインとアクセスの制御など、最新のDXを新ラインで本格稼働させ、安定供給と品質保証をさらに確実にしていきたい