武田薬品は9日、経口オレキシン受容体作動薬TAK-861について、ナルコレプシータイプ1(NT1)を対象とした国際共同P3試験を2024年度上期に開始する予定にあると発表した。
国際共同P3試験の開始は、NT1の患者を対象として開発中のTAK-861の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、反復投与、P2b試験で良好なトップライン結果が得られたため。
ナルコレプシーは、中枢性過眠症の中でも、慢性的な希少疾患で、複数の承認医薬品があるものの、未だアンメットニーズが高い疾患である。現在、ナルコレプシーは2種類に分類されており、オレキシンニューロンの著しい減少によりオレキシンが欠乏するNT1と、オレキシン濃度が概ね正常なナルコレプシータイプ2(NT2)がある。
NT1の患者のOX2Rを刺激しオレキシンシグナル伝達を回復させることは、疾患の病態生理に即した治療となり得る。武田薬品は、ナルコレプシーにおけるP2試験として、NT1を対象とした試験(NCT05687903)とNT2を対象とした試験(NCT05687916)の2つの試験を実施した。
NT1を対象としたTAK-861-2001試験では、112名の患者を対象にTAK-861を評価したところ、第8週目においてプラセボとの比較で、覚醒に関する主観的評価項目と客観的評価項目に統計学的に有意かつ臨床的意義のある改善が示された。
これには、主要評価項目である覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test, MWT)での改善(p < 0.001)が含まれる。主な副次評価項目であるエプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale, ESS)スコアと1週間あたりの情動脱力発作(カタプレキシー)発現率(Weekly Cataplexy Rate, WCR)についても、主要評価項目の成績と一致する統計学的に有意で臨床的意義のある改善が認められた。
同験を完了した患者の大部分が、長期継続投与試験に参加した。同試験結果と世界各地の医薬品規制当局との協議に基づき、武田薬品はNT1を対象とするTAK-861の国際共同P3試験を2024年度上期に速やかに開始する予定である。
現時点では 、NT2を対象としたTAK-861の開発を進める予定はない。オレキシン濃度が正常な疾患群に対する次のステップを決定するため、データを解析している。武田薬品は、現在、NT2などオレキシン神経ペプチドの濃度が正常な疾患群や、オレキシンの生理作用が関与するその他の疾患を対象として、複数のオレキシン受容体作動薬の開発を進めている。
P2試験のいずれの試験においても、TAK-861の安全性および忍容性は概ね良好であった。治療に関連する重篤な有害事象の報告はなかった。また、これらのP2b試験および現在実施中のTAK-861長期継続投与試験のいずれにおいても、肝毒性や視覚障害は報告されていない。両試験の結果は今後、医学学会で発表する予定である。
なお、これらP2b試験の結果は、2024年3月期(2023年度)通期の連結業績予想に影響を及ぼすものではない。
◆Sarah Sheikh武田薬品ニューロサイエンス領域ユニットヘッド兼グローバルデベロップメントヘッド(M.Sc., B.M., B.Ch, MRCP)のコメント
今回、NT1におけるTAK-861の臨床試験において、明確かつ説得力のある結果を公表できたことをたいへん嬉しく思う。本試験結果により、当社は今年、本疾患の病態生理に焦点をあてた医薬品を患者さんにお届けするため、臨床第3相試験を速やかに開始することができる。
我々は、オレキシンの生物学的特性について深めてきた知見を活かして、このメカニズムで改善する可能性のある疾患をもつ患者さんに革新的な医薬品を開発し、お届けできるよう努めていく。