アプリ開発でAfrican Mothersおよび原田英典京大准教授と連携契約締結
塩野義製薬は22日、アフリカの母子支援活動「Mother to Mother SHIONOGI Project」の第三期事業として、タンザニア連合共和国で下痢症予防の教育を目的とした衛生教育ソリューション（アプリ）を開発すると発表した。
同アプリの開発のため、African Mothersおよび原田英典京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授と連携事業契約を締結した。
同プロジェクトは、2015年よりアフリカの母子健康支援を継続して行ってきたもの。2023年6月より開始した第三期事業では、ケニアおよびガーナにおける医療アクセスの改善と‟子どもの下痢症低減”に注力した支援事業を推進していく。
下痢症は、世界の5歳未満の子どもの死因（年間510万人）の中で、早産、下気道感染症、出生時仮死/外傷、マラリアにつぐ第5位の死因で、タンザニアを含むアフリカでの子どもの健康に甚大な影響を与える疾患である。
また、子どもの下痢症は、母親の疾患や衛生等に対する知識や母乳育児の開始時期が異なることなど、様々な要因が関連している。
そこで、下痢症予防を目的としたアプリ開発事業をスマホ普及率が高まっているタンザニアで開始し、その効果を検証した上で、他のアフリカの国や地域での下痢症予防活動も検討していく。
今回の下痢症予防アプリ開発では、African Mothers社は、「教育コンテンツ制作」、「アプリ設計・実装・カスタマイズ」、「タンザニアにおける広告宣伝活動」、「利用結果の分析・報告」を行う。
原田准教授は、「教育コンテンツの監修」、「同アプリの機能等に関する助言」、「教育コンテンツへのアクセス記録等の助言・監修」を担う。
塩野義製薬は、「プロジェクトの全体管理」、「委託」、「成果物の確認」を実施する。
同日、Web開催された「Mother to Mother SHIONOGI Projectオンラインセミナー」では、谷由香利氏（塩野義製薬ヘルスケア戦略本部CSR推進部こどもの未来支援室）が、タンザニアにおける乳幼児の下痢予防の重要性について言及。
「子供が出生後腸が発達する中で、1000日間はかなり重要な時期になる。下痢症が重症化すればその後の身体、脳の発育が遅れる可能性がある」と指摘した。
その上で、「長い目で見れば、その国の労働力、経済発展にも影響を及ぼす背景から、感染症の中でも予防可能な下痢症を課題として取り上げた」と今回のプロジェクト趣旨を説明した。
乳幼児の下痢症予防アプリは、African Mothersが社外取締役に新福洋子広島大学大学院医系科学研究科教授を迎えて開発したタンザニアでのスマートフォンアプリ「Taarifa Za Mama（スワヒリ語で「ママの記録」）」の中に、原田准教授と塩野義製薬の三者協業で‟お母さんに分かり易い”下痢症予防のためのコンテンツを追加するもの。3年間で9万人の受益者数を目標にしている。
原田准教授は、アジア・アフリカ地域をフィールドとして、人間の生活に必須の水と衛生（WASH）のあり方について、環境衛生工学のバックグラウンドに基づき健康リスク、物質循環、および地域の水と衛生の持続性の観点から研究してきた。
オンラインセミナーで原田氏は、「下痢症による5歳未満児の死亡（8.7％）は、マラリア（8.8％）ほどシリアスに捉えられていないが、0.1％しか変わらない。そういったところを乳幼児の下痢症予防アプリで十分に伝える必要がある」と明言。
さらに、同アプリのキーポイントとして「キッチン、トイレを綺麗にすることで水や食べ物を守るといった行動変容の可視化」を挙げ、「子供が生活しているエリアの汚れによって、糞便の微生物がどのようなルートで口に入って下痢になるのかをアニメで分かり易く母親に伝えていく」重要性を強調した。
川端康夫African Mothers代表取締役は、「アプリにおけるコンテンツの見せ方の工夫を検討していくのが我々の役割で、強みでもある」と訴えかけた。また、乳幼児の下痢症予防アプリでも、「デジタルインセンティブ機能を導入し、ずっと継続的に使ってもらえるように工夫を凝らす」
谷氏は、「この事業の特徴は、リスクの可視化が行動変容の後押しの一つになっているところにある」と指摘し、「この事業で行動変容に繋がる部分が見えれば、その効果をしっかりとNGO、各国の保健省に伝えながら、出生後1000日までの下痢症予防の重要性をエビデンスとともに示していきたい」と抱負を述べた。
