カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法 米国で乳がん治療薬で承認取得 アストラゼネカ

 アストラゼネカは27日、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法について、米国でHR 陽性進行乳がんの治療薬として承認を取得したと発表した。
 適応は、1つ以上の遺伝子変異(PIK3CA、AKT1 またはPTEN)を有するホルモン受容体(HR)陽性、HER2 陰性の局所進行性または転移性乳がんの成人患者。
 なお、対象は、転移性乳がんに対する内分泌療法を1レジメン以上受けた後に増悪したか、または術後補助療法完了後12カ月以内に再発した乳がん患者である。
米国FDAによる今回の承認は、今年初めに The New England Journal of Medicine で発表されたP3相 CAPItello-291試験結果に基づくもの。
 同試験では、PI3K/AKT 経路の遺伝子変異を有する乳がん患者において、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法が、フェソロデックス単剤療法との比較で病勢進行または死亡のリスクを50%低下させたことが示された(ハザード比 0.50、95%信頼区間 0.38-0.65;p=<0.001;無増悪生存期間(PFS)中央値 7.3 カ月対 3.1 カ月)。
 乳がんは、世界中で最も多く診断されているがんで、がん関連死の主要な原因の1 つである。HR陽性乳がん(エストロゲンまたはプロゲステロン受容体、またはその両方を発現)は最も一般的な乳がんのサブタイプで、乳がんの65%以上はHR陽性かつHER2低発現または陰性と考えられている。
 また、PIK3CA、AKT1 および PTEN の遺伝子変異が高頻度で認められ、HR 陽性進行乳がん患者の最大50%がこれらの遺伝子変異を有する。HR陽性乳がんの治療には内分泌療法が広く用いられているが、進行乳がん患者の多くは一次治療のCDK4/6阻害薬と内分泌療法に対する耐性を獲得しているため、さらなる治療選択肢が必要である。
 CAPItello-291 試験において、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法の安全性プロファイルは、この併用療法を評価した過去の試験で確認されたものと類似していた。
 この承認と同時に、FDA は関連する遺伝子変異(PIK3CA、AKT1 および PTEN)を検出するためのコンパニオン診断検査も承認した。
 米国の承認申請に対しては、優先審査指定され、「Project Orbis」の下で審査が行われた。「Project Orbis」は、参加する国際パートナー国間で抗がん剤の承認申請を共同で審査する枠組みで、世界中の患者のために迅速な承認を促す取り組みである。
 「Project Orbis」の一環として、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法について、オーストラリア、ブラジル、カナダ、イスラエル、シンガポール、スイス、英国の規制当局でも審査中だ。
 現在、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法の承認申請については、中国、EU、日本およびその他いくつかの国で審査されている。
 なお、フェソロデックスのHR 陽性進行乳がんに対するカピバセルチブとの併用療法およびカピバセルチブは本邦未承認である。

◆米国Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)腫瘍内科医のKomal Jhaveri氏のコメント
 HR陽性進行乳がん患者さんの多くは、標準一次治療の内分泌療法に対して病勢進行または治療耐性を示すため、さらに有効な治療の開発が急務である。
 カピバセルチブとフルベストラントの併用療法は、この機序の併用療法としては初めて、特定のバイオマーカーを有する50%までのHR陽性進行乳がん患者さんに対し、必要性の高い新たな治療選択肢となり、病状をコントロールできる期間を延長できる可能性がある。

◆Dave Fredricksonアストラゼネカエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のコメント
 カピバセルチブの米国での迅速な承認は、HR陽性乳がんにおけるPI3K/AKT 経路の重要な役割と、診断時検査の必要性を裏付けている。最大で50%の患者さんがこれら特定の変異を有するためである。
 今回の承認は、ファーストインクラスの治療薬として、これら特定の変異をもつ疾患を有する米国の患者さんにとって重要な新しい選択肢を提供するものである。我々は、世界中の多くの乳がん患者さんにカピバセルチブをお届けできることを期待している。

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