協和キリンは5日、希少疾患の治療薬の開発と商業化に成功した経験を持つ遺伝子治療のグローバルリーダーの英オーチャード社と買収契約を締結したと発表した。
今回の買収は、ポートフォリオを拡充、臨床応用実績のあるプラットフォーム技術の獲得により今後多くの有望な開発候補の創出、さらに MLD治療法であるLibmeldy上市のためのリソース確保を目的としたもの。買収価格は、1ADS当たり16.00 ドルと CVR 1.00 ドル、合計最大約 4億7760ドル（約707億円）。
協和キリンは、2030年に向けて、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらす Life-changing な価値をもつ医薬品を継続的に創出するというビジョンを作成している。
この戦略の中心にあるのが「Commitment to Life（コミットメント・トゥ・ライフ）」で、革新的なサイエンスを有効な治療法のない病気の治療につなげたいという思いが込められている オーチャード社が開発した遺伝子治療のアプローチは、患者さん自身の造血幹細胞の遺伝子を改変し投与することを特徴としており、一度の投与で遺伝性疾患の根本的な原因を治す可能性がある。
オーチャード社は、患者及びその家族、社会にとって負担が大きく、現在の治療法が限られている疾患に対する造血幹細胞遺伝子治療（HSC-GT）の製品、開発、および非臨床ポートフォリオを有しており、オーチャード社の買収が成功すれば、協和キリンは急成長する遺伝子治療分野における世界的なリーダーとしての地位を獲得することになるす。
オーチャード社のポートフォリオには早期発症の異染性白質ディストロフィー（MLD）治療法のLibmeldy（atidarsagene autotemcel）があり、米国では OTL-200 として知られている。
MLDは、生命を脅かす希少な遺伝性の代謝性疾患で、最も重篤な MLD のタイプでは、乳幼児期の後半になると急速に歩行能力や言語能力を失い、周囲との関係構築が困難になる。 Libmeldyは、乳児期遅発型または早期若年型のMLDにおいて、欧州委員会（EC）および英国医薬品医療製品規制庁（MHRA）の承認を取得している。
現在、米国FDAによる優先審査段階であり、処方薬ユーザーフィー法（PDUFA）の目標期限は 2024年3月18 日である。
この HSC-GT の技術プラットフォームを活用して、重症な小児の神経代謝性疾患を対象に2つの臨床段階のプログラムも進行中である。OTL-203は、ムコ多糖症I型であるハーラー症候群（MPS-IH）を対象に、OTL-201はムコ多糖症IIIA 型（MPS-IIIA、別名サンフィリッポ症候群）に対する治療法として開発中である。
今回の買収により、協和キリンは Libmeldyの価値を最大化し、オーチャード社が有する上記ムコ多糖症のプログラム、および重症な遺伝型のクローン病や前頭側頭型認知症（FTD）などの初期の研究プロジェクトを獲得、加速が可能となる。
さらに、オーチャード社の革新的なHSC-GT技術と、協和キリンのケイパビリティ、リソース、インフラを組み合わせることで、がんや自己免疫疾患など協和キリンが高い専門性を有する領域において、数多くの有望な治療法の継続的な創出が期待される。
◆山下武美協和キリンの取締役専務執行役員のコメント
今回の買収により、患者さんの生活を大きく改善することが期待できる新たなモダリティを活用できるようになる。オーチャード社は、HSC-GTの製品をすでに欧州で上市、また米国で申請を完了しており、本領域において着実に実績を積んでいる会社である。
互いに尊重しながら、両社の強みを掛け合わせることで、生命を脅かす希少な遺伝性疾患を有する患者さんのために Life-changingな価値の創造と提供を実現していく。
◆Bobby Gasparオーチャード社最高経営責任者のコメント
この買収は、重篤な遺伝性疾患に苦しむ方々の生活を改善し、病気と向き合う人々に Life Changing な価値を届けるという我々の共通のビジョンの実現を加速させるための重要な機会である。我々は、引き続き自分たちのミッションに忠実であり続け、協和キリンのグローバルネットワークに加わることで、OTL-200の米国での上市準備を進め、欧州においてLibmeldyの成長加速を目指した取り組みへの投資を継続し、グローバル展開の機会を十分に生かし、神経代謝性疾患であるムコ多糖症のプログラムおよび初期段階の研究プロジェクトを推進するための十分なリソースを確保できる。
患者さんと社会のために HSC-GTによる治癒の可能性を完全に解き放つことを目指し、協和キリンの新しい仲間と協働できることを楽しみにしている。
