快適な睡眠の肝は「副腎」
ユーグレナ社は、2023年7月に、日本全国の20~60代の男女1000名を対象に、「寝づらい夏の夜に工夫していること」を調査した。
その結果、圧倒的な1位が「エアコンをつけたまま寝る」(537人)、「扇風機を使用する」(406人)、「窓を開けたまま寝る」(232人)、「ふとんをかけずに寝る」(224人)、「涼感ふとんやマットを使用する」(168人)の順で、温度調整対策が上位にあがった。
それ以外にも、入浴や食事、アロマやBGMといった、身体機能を入眠にむけて調節するための積極的な対策を講じている人も少数ながらいた。
平年以上とも言われている今年の猛暑。寝苦しくて良質な睡眠がとれず、日中のパフォーマンスも落ちてしまうという人も多いと考えられる。身体を十分に休める良質な睡眠をとるための対策を、睡眠栄養指導士協会代表理事で睡眠栄養指導士の河野記代子氏に聞いた。
◆質のいい睡眠とは?
睡眠に関する悩みで圧倒的に多く聞かれるのが、「寝起きが悪い」という悩みである。目覚めが悪く、朝、疲れが取れていないのは、睡眠サイクルのリズムが理想的な状態ではないからだ。理想的な睡眠サイクルについて説明する。
理想的な睡眠サイクルのポイント
1、寝付くまでの時間は8~16分間
2、深い眠りと浅い眠りを繰り返している
3、深い眠りが徐々に浅くなっていく
4、 最初の深い睡眠(深睡眠)が一番深いのが理想
寝入りまでの時間がおよそ8分~16分であれば、呼吸、脈拍が整い、きれいな眠りにつけると言われている。
「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い眠りと「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りが、一晩の間に2回、ないしは3回繰り返されるのが理想的である。
浅い睡眠が訪れる間隔が、グラフのように106分→105分→100分→80分と短くなっていくこと、また、最初の深い睡眠が最も深く、それ以降、朝に向かって徐々にノンレム睡眠が浅くなっていくという波形がもっとも理想的だ。
正常な人は、自然に起きる3時間前から目覚めのホルモンが分泌されはじめ、その働きで徐々にノンレム睡眠が浅く、そして短くなる。そのおかげで、朝自然にスッキリと目覚めることができる。
「浅い眠りを90分ごとに繰り返すのがいい」という話を聞いたことがある人もいると思うが、これは深い眠りから浅い眠りへのサイクルの“平均”が約90分ということで、誤った情報なので注意したい。
深い睡眠には、脳を休ませ、記憶を定着させる働きがある。深い眠りの間は、実は体は休んでおらず、寝返りを打つのも深い眠りの時だ。
対して、浅い睡眠の時に脳は、記憶した内容の要・不要のふりわけ(重要なことのみ憶える、嫌なことを忘れる、といった判別)をしたり、バラバラに記憶したことを関連づけて整理する。
この時は、逆に体はしっかり休んでいる。なので、明け方に向かってある程度のレム睡眠(浅い睡眠)の時間が確保されることも、記憶を知識として定着させたり、嫌な気持ちを翌日に持ち越さないためには重要で、体力の回復にも不可欠となる。きちんと7時間程度の睡眠をとり、理想的なノンレム睡眠・レム睡眠サイクルを目指そう。
睡眠の質が落ちる原因の大きなひとつ、副腎疲労症候群
現代社会において睡眠の質を妨げる要因の一つとして、副腎疲労が挙げられる。副腎は、腎臓の上に位置する、親指の第1関節くらいの小さいながらも50種類程の重要なホルモンを分泌する臓器である。副腎は、ストレスのせいで、ストレスに対応するホルモン(コルチゾール)を過剰に分泌し続けてしまい、疲弊してしまう危険がある。
アメリカなどでは、ちょっとした体調不良や疾患も副腎疲労の症状として疑うほどに副腎疲労への理解が進んでいるが、日本ではまだまだ認識が広まっていない。現代のストレス過多な状況下では、ほとんどの人が副腎疲労を起こしているのではないか。猛暑による不快感など、日々僅かであってもストレス要因になっていると思われる。
副腎が分泌するホルモンの一つにコルチゾールという、抗ストレスホルモンでもありながら睡眠からすっきり目覚めさせてくれる覚醒物質がある。副腎疲労によってこのコルチゾールの分泌が乱れることも、睡眠障害につながる。
コルチゾールは、通常夜中には分泌されないようになっているが、現代の社会のストレスや不規則な生活による自律神経の乱れが原因で、寝入りや睡眠の真っただ中にもコルチゾールが分泌されてしまう場合もある。そのせいで、脳や体が十分に休まらない、質の悪い睡眠につながる。睡眠の質を向上させるためには、ストレスを管理し、副腎の負担を軽減することが大切だ。
副腎疲労がある人は腸内環境も悪いことが多い?
副腎疲労の傾向がある人の多くの腸内環境に、乳酸菌が少ない、免疫異常がある、炎症を起こしている、などの異常がみられている。副腎が疲れている人は腸も疲れており、それが睡眠の質に影響を及ぼしている可能性がある。
睡眠に欠かせないホルモンの代表格で“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンの前駆体のホルモン、セロトニンの8~9割は腸で作られていると言われるので、腸内環境のケアも睡眠の質向上のためには意識すべきポイントとなる。
セロトニンは、トリプトファンというアミノ酸を材料に作られるが、トリプトファンを豊富に摂取しつつ、腸内環境を整えることで、メラトニンを安定的に生成できるようになる。
お薦めはユーグレナ、ひまわりの種、アーモンドなど
睡眠ホルモンであるメラトニンを安定的に作るには、トリプトファンを含む食品を積極的に摂取することがお薦めだ。
・トリプトファンを豊富に含む食品の例
乳製品:牛乳、ヨーグルト、チーズなど/肉類:鶏肉、豚肉など/魚介類:サーモン、マグロ、えびなど
豆類:大豆、納豆、豆腐など/ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツなど/穀物:玄米、オートミール、大麦など
そのほか、睡眠の質を意識したうえで注目したい栄養素は、トリプトファンをセロトニンに変換するために必要なビタミンB6、同じくセロトニン生成に必要で体内の活性酸素を取り除いでくれることでストレスも軽減するといわれるビタミンC、セロトニンをメラトニンに変換されるのに役立つビタミンDや亜鉛、神経の興奮を抑えるマグネシウムなどが挙げられる。
そのほか、ホルモンも細胞なので、もちろん細胞自体を作ってくれるたんぱく質も重要で、腸内環境を整える食物繊維や乳酸菌も必須である。
ただ、特定の栄養素ばかりを摂るのではなく、各栄養素は相互補完しながら働くので、微量栄養素をまんべんなく摂取するという意識が必要だ。
微量栄養をバランスよく摂取するためには、マルチビタミンサプリメントやトリプトファンのほか、微量栄養素、オメガオイルに至るまで59種類の豊富な栄養素を含むユーグレナの飲料やパウダー、ないしはサプリメントの活用がお薦めだ。
特に、ユーグレナに含まれる「パラミロン」という食物繊維はストレス緩和や睡眠の質向上に直接有効で、乳酸菌入りのものを選ぶと、腸内環境づくりにもより役立つ。
豊富なビタミンB群、抗酸化作用のあるビタミンE、タンパク質、マグネシウムと睡眠対策になる栄養素を豊富に含むひまわりの種を食生活にプラスするのもお薦めだ。
トリプトファンは接種後14~16時間後にメラトニンに変わるので、夜就寝すると考えると主に朝食でたっぷり摂るのが好ましい。朝食に焼鮭に豆腐のお味噌汁といった和食でも良いし、ヨーグルトにユーグレナパウダーとかぼちゃの種をまぶしたものも理想的である。
トリプトファンは1日に500mg摂取することが推奨されているので、おやつなども活用して積極的に。トリプトファンが100gあたり、201mgも摂れるアーモンドにユーグレナをまぶしたものや、ヨーグルトに甘いユーグレナパウダーをかけるのも手軽である。
寝るときの環境づくり
電気代を節約するためにエアコンを消して寝るのは避けよう。電気代を節約しようとしてエアコンを消して寝てしまうと睡眠の質が落ち、日中のパフォーマンス下がる。暑さで目が醒めることを避けるために、エアコンはつけっぱなしがお薦めである。
具体的な理想の温度、というものがあるわけでなく、自分が快適だと思う温度に設定して頂きたい。ただ、寒すぎて目が醒めてしまうのはストレスにつながったり、部屋の温度が低すぎることで起床前に体温や血圧が上がらずに寝起きが怠いことに繋がる。あくまで快適な温度に。エアコンで冷やしすぎず、扇風機で送風することで涼しくするのも良い。
寝るときの服装も睡眠の質に影響を及ぼす。自分が心地いい感触であるということが重要だ。綿やシルクなど、汗を吸い取る素材のものを選ぶと良いだろう。涼感素材のパジャマやふとん、タオルケットなどは、触るとひんやりしても素材によっては汗を溜め込みやすく、睡眠の質を低下させる恐れがあるので注意して選ぼう。
筋肉がゆるみリラックスすることで良い睡眠に導いてくれる、血流をよくする素材のパジャマなどもお薦めだ。複数種の鉱石を特殊配合したミネラル混合体、有害物質を含まない天然鉱石を組み合わせたプラウシオンという素材を使用したパジャマなど、血行促進対策になる製品も発売されているので試してみても良い。
エアコンでお腹が冷えるのが心配という人、ふとんをはいでしまう子供などでは、通気性のよい腹巻きの活用はOKだ。靴下や手袋をつけて寝るという人もいそうだが、手のひら、足の裏は、体が放熱する部位で、そこをふさいだり、温めてしまうのはよくないので、夏は靴下、手袋はしないで寝よう。
脳温を下げることで入眠しやすくなる。涼感の枕などは使用OKだが、あまりに冷やしすぎてしまうのは不快感からストレスになったり、血流を悪化させるのでお薦めではない。
また、入眠の際BGMをかけるという人は、なるべく小さな音で、寝ている間はフェイドアウトさせることでα波が出て、脳が活発に動いでしまうのを抑えることができる。窓を開けて寝る人もいると思うが、窓からの雑音も睡眠の質を下げる要因になるのでできれば、エアコンをかけて窓を閉めて寝る方がお薦めである。
照明は、暗い方が良いが、足元をほんのり照らす程度の極弱い光なら、深い睡眠に入りやすいという研究データもある。明るすぎる環境で寝たり、テレビをつけっぱなしで寝ることを習慣にすると、自律神経が乱れて太りやすくなるという説もある。
まぶたのすぐ下が脳である。弱い光でも差し込むことでメラトニンが一気に減少し、眠りづらくなってしまう。月明りより明るいとNGとも言われる。真っ暗だと眠れないという人は、間接照明で微かな灯りにして頂きたい。
入浴は就寝前1時間半から2時間前に。マグネシウムの経皮吸収の時間に
入浴は、就寝の1時間半から2時間前に済ませると、入浴で上がった脳温や深部体温が就寝時頃に下がり、眠気を生じる。入浴剤は、マグネシウムを含むものの使用が望ましい。マグネシウムは、メラトニンの前駆体であるセロトニンの生成を促進し、また、血行促進により体温調節もスムーズになるので、筋肉が緩んでリラックスできる効果もある。
マグネシウムは、経口摂取をしすぎるとお腹が緩くなる場合もあるので、入浴剤などで経皮吸収させるのが望ましい。