住友ファーマは31日、大塚製薬と開発中の統合失調治療薬ユーロタロント(開発コード:SEP-363856)について、2本のP3試験において、いずれの試験も主要評価項目を達成しなかったと発表した。
同剤は、セロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(微量アミン関連受容体アゴニスト。P3試験は、DIAMOND:Developing InnovativeApproaches for Mental Disorders 1試験および DIAMOND 2試験であり、急性期の統合失調症患者を対象に同剤1日1回投与による有効性、安全性および忍容性を評価することを目的としたもの。
DIAMOND 1試験は、急性期の統合失調症患者435 名を対象とした多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験で、同剤50mg/日、75mg/日を、6週間投与した際の同剤のプラセボ投与群に対する有効性、安全性および忍容性を評価したもの。
DIAMOND 1 試験の結果、主要評価項目である投与6 週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)合計スコアのベースラインからの変化量において、いずれの投与群においても PANSS合計スコアの減少が示され、プラセボ投与群-19.3に対し、同剤50mg/日投与群および75mg/日投与群はそれぞれ-16.9、-19.6 であった。
DIAMOND 2試験は、急性期の統合失調症患者 464 名を対象とした、多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験で、同剤75mg/日、100mg/日を6 週間投与した際の同剤のプラセボ投与群に対する有効性、安全性および忍容性を評価したもの。
DIAMOND 2 試験の結果、主要評価項目である投与 6 週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、プラセボ投与群-14.3に対し、同剤75mg/日投与群および同剤100mg/日投与群はそれぞれ-16.4、-18.1であり、数値的には減少を示した。
DIAMOND 1試験および DIAMOND 2試験のいずれにおいても、プラセボ投与群で大きな改善が観察され、同剤の有効性をマスクした可能性がある。
安全性に関しては、両試験において、総じて良好な安全性と忍容性が示された。
◆野村博住友ファーマ代表取締役社長のコメント
我々は、高いプラセボ効果が、画期的な本剤の治療効果をマスクしている可能性があると考えている。DIAMOND 1試験および DIAMOND 2試験で観察されたような高いプラセボ効果は、精神疾患の臨床試験では多く報告されているが、特に DIAMOND 1試験におけるプラセボ効果は極めて高いものであった。
両試験は、COVID-19 パンデミックの期間中に実施されたが、初期分析では、両試験で観察されたプラセボ効果に関しCOVID-19の影響が示唆されている。
本剤の共同開発を実施している大塚製薬とともに次のステップを決定するために更に詳細なデータ解析を続けており、これらの結果を踏まえて今後の進め方についてFDAと協議する予定である。
◆井上眞大塚製薬代表取締役社長のコメント
ユーロタロントは統合失調症の治療における新たな治療選択肢として、患者さんやご家族、医療関係者のアンメットニーズを解決する可能性を持っている。
今回の結果を踏まえて、引き続き住友ファーマと緊密に連携しながら本剤のあ
らゆる可能性を検討するとともに、精神神経領域における提携開発品目の開発を通じて世界中で精神疾患に苦しむ患者さんや医療者に貢献できるよう協力していく。