田辺三菱製薬は10日、パーキンソン病治療薬候補ND0612について、P3相試験(BouNDless試験)において、事前に設定した重要な評価項目を達成するトップライン結果を取得したと発表した。主要評価項目の「日常生活に支障のあるジスキネジアを伴わないON時間(Good ON時間)」をND0612群が統計学的に有意に改善したもの。同社完全子会社のニューロダーム社(本社:イスラエル)が、1月9日に公表した。 ND0612は、今年米国での申請に続いて、欧州での申請を目指す。
BouNDless試験は、運動症状の日内変動を有するパーキンソン病患者さんを対象にグローバルで実施した多施設共同無作為化ダブルブラインドダブルダミー試験。
同試験では、レボドパ/カルビドパ配合製剤(LD/CD)を持続投与可能な皮下投与デバイスと組み合わせて24時間/日投与する治療薬候補品ND0612に必要量のLD/CD経口剤を加えて至適用量とした被験者(ND0612群)と、LD/CDの経口剤のみで至適用量とした被験者(経口剤群)にランダムに割り付け、12週間投与した。
その結果、ND0612群は経口剤群と比較して、主要評価項目である「日常生活に支障のあるジスキネジアを伴わないON時間(Good ON時間)」を統計学的に有意(p<0.0001)に改善した(1.72時間)。
また、重要な副次評価項目である「OFF時間」で統計学的に有意な結果が示された(p<0.0001)ほか、その他の副次評価項目「国際パーキンソン病・運動障害疾患学会-パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)パートII(日常生活動作)」、「全般的印象評価尺度-変化(PGIC)」、および「臨床全般改善度(CGI-I)」についても、経口剤群と比較して統計学的に有意な改善を示した(いずれも、p<0.0001)。
ND0612群の全身性の安全性プロファイルは既知のLD/CDの経口治療と同様であり、発現率が5%以上の有害事象のうち注入部位反応の発生頻度はND0612群の方が高かったものの、おおむね軽度から中等度で、「ON/OFF現象」および転倒は、経口剤群においてより高い頻度で発現した。
ND0612群の離脱率は6.3%で、そのうち副作用による離脱は5.5%だった一方、経口剤群ではそれぞれ6.1%と3.1%であった。なお、本試験の詳細な結果は、今後学会などで発表予定である。
パーキンソン病が進行すれば、運動症状の日内変動が出やすく、経口薬でのコントロールが難しくなり、患者さんへの侵襲性が高い外科的治療などが検討される。
同試験結果を受け、LD/CDを液剤化し、デバイスと組み合わせて持続的に皮下投与することで、運動症状の日内変動を確実かつ持続的に緩和するND0612の開発を通して、パーキンソン病が進行し、症状のコントロールが難しくなった患者の治療への貢献が期待される。
中枢神経領域を研究開発の重点領域に定める同社グループは、神経変性疾患に向きあうすべての人に、新しい治療の選択肢を届けるための取り組みを進めていく。