塩野義製薬は12日、同社と島津製作所の合弁会社AdvanSentinel社がBBI社と協同し、インフルエンザウイルスを対象とする下水疫学調査サービスの提供を開始したと発表した。
下水疫学調査サービスは、感染症を引き起こすウイルスが糞便・唾液等から検出される特徴を活かし、感染症状を発症していない感染者や軽症者も含めた集団レベルでの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況を効率よく把握する手法として複数の自治体や各種施設でも活用されている。
だが、インフルエンザウイルスを対象とした調査は、これまで日本では普及していない。
インフルエンザは、公衆衛生上、その流行状況を早期に把握する必要のある疾患である。5類に分類される季節性インフルエンザは、特定の医療機関による定点観測データが週次で収集され、厚生労働省のインフルエンザ発生状況の報道資料やインフルエンザ流行レベルマップなどに活用されている。
同サービスの提供を通じて下水中のインフルエンザウイルス濃度を調べることで、その調査地域におけるインフルエンザウイルスの流行状況の把握を早期に、より客観的にとらえ、今まで以上にデータを介した一定の科学的根拠に基づく医療体制の構築や行政判断などへの貢献が期待される。
また、今冬においては、症状からでは区別がつきにくいインフルエンザとCOVID-19の同時流行が懸念される中、1回の調査で下水中のインフルエンザウイルス濃度と新型コロナウイルス濃度の測定が可能な同サービスにより、調査地域での両ウイルスの流行状況調査が可能になる。
同サービスで用いられる検出技術COPMAN法は、下水からのウイルス濃縮工程において凝集剤を使用することで迅速かつ安定的なウイルス回収を実現しており、インフルエンザウイルスに対しても有効な検出法である。
AdvanSentinel社とRBI社は、より正確な感染状況の把握に貢献する下水疫学調査の技術開発と分析実施体制の構築に取り組んでおり、COPMAN法におけるインフルエンザウイルスRNAの定量検出を、RBI社が所有する国産汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」を用いて自動化することで、安定的に大量の検体の分析が可能だ。
AdvanSentinel社とRBI社は協同し、次なるパンデミックや公衆衛生上のリスク把握などに向けたオールジャパン体制の構築を引き続き目指していく。