厚生労働省は22日、塩野義製薬の経口新型コロナ治療薬「ゾコーバ」について、薬食審・薬事分科会及び医薬品第二部会の合同会議を開催し、「緊急承認妥当」の結論を出した。
ゾコーバは、「緊急承認制度」を使った軽症者にも投与できる初の国産新型コロナ経口治療薬となる。今後、加藤勝信厚労大臣からの通知書を塩野義製薬が受け取った時点で正式な緊急承認となる。
今回の再審議では、塩野義製薬から提出された「ゾコーバのP2/3相臨床試験Phase 3 partにおいて主要目的を達成した」などの結果を受けて「有効性が推定できる」と判断され、「緊急承認妥当」との結論が出された。
緊急承認の期限は1年間。今後は、P3試験の様々なフルデータにおいて必要な解析を行い、しっかりとした有効性が確認されれば正式承認となる。
ゾコーバは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、同剤は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、新型コロナ感染症ウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を抑制する。
既存の新型コロナ治療薬であるパキロビッド(ファイザー)やラゲブリオ(メルク)については、米国FDAによる緊急使用許可(EUA)が、重症化予防、入院・死亡の抑制を大きなテーマとしていることから、両剤の臨床試験では新型コロナワクチン未接種で重症化率の高い人の死亡抑制効果が検討された。従って、これらの薬剤の投与は、重症化因子のある患者に限定されている。
一方、ゾコーバは、2類枠の中で濃厚接触者が多くて保健所業務が逼迫し、80%以上が2回ワクチンを接種しているかなり一般的な診療状況に近い中で治験が行われ、P2/3相臨床試験Phase 3 partにおいてウイルス減少効果や症状改善が確認されている。
こうした臨床試験のプロトコールの違いから、ゾコーバは「重症化因子の無い感染者」、「基礎疾患の無い若い感染者」も投与対象となり得る。また、ウイルス減少効果では、新型コロナ感染症の家庭内感染防止への期待も大きい。
塩野義製薬では、ゾコーバについて既に100万人の生産を完了し、4月以降、自社で年間1000万人分以上の供給を目指して生産拡大している。グローバル供給体制構築に向けても準備を開始しており、米国、インドでの生産も検討している。