三菱ケミカルグループヘルスケアセグメント医薬品事業(田辺三菱製薬)の2022年度上期業績は、売上収益2301億円(対前年同期比6.4%増)、売上総利益977億円(3.8%増)、コア営業利益420億円(60.2%増)、営業利益29億円(178.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益8億円(-)となった。
ヘルスケアセグメント コア営業利益は、国内医療用医薬品の薬価改定や円安による海外の研究開発費が増加したものの、北米でのラジカヴァ経口剤の計画以上に強い立ち上がりや、国内重点品ステラーラ、ジスパルの順調な伸長により20億円の増益となった。
2022年度上期ヘルスケア研究開発費は469億円(473億円)、従業員7106人。
2022年度上期の国内医療用医薬品(重点品・新製品、ワクチン)、海外医療用医薬品の売上収益は次の通り。(カッコ内は対前年同期比)
◆国内医療用医薬品=1553億円(2.5%増)
【重点品・新製品】
ステラーラ310億円(34.2%増)、シンポニー224億円(3.2%増)、テネリア82億円(4.5%増)、カナグル59 億円(3.9%増)、カナリア40 億円(17.7%減)、バフセオ 9億円(178.8%増)、レクサプロ77億円(0.9%増)、ユプリズナ11億円(244.3%増)
【ワクチン】
インフルエンザ64億円(16.3%増)、テトラビック45億円(9.1%減)、ジェービックV24億円(244.7%増)、ミールビック28億円(10.9%減)
【長期収載品等】
レミケード180億円(11.8%減)
◆海外医療用医薬品=368億円(31.5%増)
ラジカヴァ197億円(57.5%増)
ロイヤリティ収入等68億円(10.3%減)
インヴォカナ ロイヤリティ32億円(5.6%減)
ジレニア ロイヤリティ 15億円(29.8%減)
2022年度通期業績予想は、売上収益4100億円(対前年同期比6.2%増)、売上総利益1990億円(4.1%増)、コア営業利益100億円(44.4%減)、営業利益85億円(-)、親会社の所有者に帰属する四半期利益20億円(-)。
2023年度主な開発パイプラインの上市計画では、MT-1186(ALS・経口懸濁剤、米国)、MT-5199(遅発性ジスキネジア、日本)、MT-2766(新型コロナVLPワクチン、カナダ)、TA-7284(2型糖尿病を合併する慢性腎臓病、日本)、MP-513(2型糖尿病、中国)を予定している。
ジョンマーク・ギルソン社長「全体業績は予想レベル達成」
ジョンマーク・ギルソン代表執行役社長CEOは8日、2022年度中間期決算説明会で会見し、三菱ケミカルグループ全体の上期業績について、「予想と同レベルになった。迅速な価格転嫁がその大きな要因となったが、予想をを達成するのは大変であった」と報告。年間見通しも「コスト、経費を抑制して下期を務めていく。市況が回復すれば、これからも成長し続けると自信を持っている」と言い切った。
メディカゴ社の新型コロナワクチン 商業生産問題でカナダ政府と協議
ヘルスケアセグメント医薬品事業については、中平優子最高財務責任者CFOが、「ジレニアの係争が続いており、ロイヤリティ収入は売上集積に加算していない」と説明した。
さらに、メディカゴ社(カナダ)の新型コロナVLPワクチンにも言及し、「安定的にVLPワクチンを生産する技術的な体制が整っておらず、収益に貢献していない」と報告。
その上で、「コロナを取り巻く環境が変化しておりので、メディカゴ社策定の新事業計画を受けて今後の方向性を意思決定したい」考えを示した。
新型コロナVLPワクチンは、カナダで承認されたものの商業生産がうまく行かずにカナダ政府に供給できていないのが現状だ。小林義広ファーマビジネスグループ戦略本部長も「コロナワクチンは現時点では政府買い上げビジネスのため、現況をカナダ政府とも連絡を密に取りながらどういうやり方が良いのか相談している」と明かした。
加えて、「ワクチンの量産体制の問題は、まだ有効な解決策は見いだせていない」とした上で、「コロナ株は大きく変化しており、他社品の需用供給やVLPコロナワクチンが供給できるタイミングなどを総合的に踏まえて今後の方針を決断したい」と強調した。本年9月に予定していた日本での承認申請も「カナダで供給できていない状況とコロナ株の推移も踏まえて当局とも相談しながら判断する」(小林氏)
また、中平氏は、ヘルスケアセグメントにおいて、5月13日に発表した通期予想のコア営業利益を140億円から70億円に下方修正した要因として、「新型コロナVLPワクチンの計上」を挙げ、「当初、見込んでいた計上額は70億円以上で、医薬重点品や北米のラジカヴァがこれをカバーして70億円の減益に収まった」と説明した。