ステラケミファは、信州大学バイオメディカル研究所との共同研究により、細胞培養容器を開発し、サンプル提供を開始した。同容器の開発は、高純度薬品事業において培ってきた独自の表面処理技術を応用したもの。
培養細胞は生化学的現象の解明、ワクチンなどに代表される有用な物質の生産、再生医療、薬剤評価など様々な分野で利用されている。再生医療周辺産業は市場拡大が見込まれており、細胞培養はこれらの産業を支える中核技術の一つとして、その重要性は増々高まっている。
培養細胞は、主にポリスチレンなどの樹脂製培養容器の底面に細胞を接着させ、培養培地の存在下で細胞を生育させる。
接着性の培養細胞にとって、培養容器との接着性が細胞機能の発現に重要であるため、培養容器に対して親水化処理やコート処理等の表面処理を行い、細胞の接着性を向上させている。
初代培養細胞など接着性が弱い細胞に対しては、細胞との親和性が高い細胞外マトリックス等をコートする方法が施されている。だが、コート作業に手間がかかるうえ、コート表面が均一ではないなどの問題があった。
また、培養細胞を培養する際には、培地に「血清」を添加する。血清は細胞に対する栄養源や接着因子の供給源として極めて重要であるが、血清自体が高価で、ロットによる成分の変動が大きく、汚染リスクの問題などがあり、研究者にとって多くの不都合が生じている。こうしたり理由から、無血清や低血清条件下での培養が求められている。
そこで、ステラケミファでは、これまでに培ってきた表面処理技術を応用し、ユニークな表面処理技術を活用した細胞培養容器を開発した。
この細胞培養容器は、培養基材の表面分子構造を改質して化学的に均一な培養表面を形成することで安定的な細胞接着性を付与できることを信州大学との共同研究を通じて確認した。
また、表面処理条件を変えれば培養基材の表面構造を少しずつ変化できる。細胞種や培養目的に応じて処理条件をチューニングすることで、これまでに次の効果が確認されており、それぞれライフサイエンス研究分野の発展に貢献できるものと期待される。(1)特別なコート処理を施さなくても初代培養細胞(神経細胞)が良好に培養できる。(図1)
(2)市販品と比べ、低血清条件での培養に優れている。(図2)
(3)市販品と比べ、培養基材が長期安定性に優れている。(図3)
ステラケミファでは、今後、顧客ニーズに応じた数種類の細胞培養容器を製品ラインナップとして展開する。また、この表面処理技術は、ほぼすべての一般的な樹脂細胞培養基材に適用可能であり、汎用性の高い改質手法となる。
昨今、世界中で再生医療や遺伝子治療など、細胞を活用した産業が立ち上がりつつある。同社ではライフサイエンス産業での活用に向け、各種用途への適用性開拓や、更なる高機能培養基材の開発など、研究開発を推進していく。
なお、開発した細胞培養容器は11月30日から12月2日まで幕張メッセで開催される「第45回 日本分子生物学会 年会」の附設展示コーナーで展示する。