子どもたちの将来に影響する科学的な事実の数々を解説
くもん出版は6日、一般書『子どもたちに大切なことを脳科学が明かしました』(川島隆太氏・松﨑泰氏編著)を同日刊行したと発表した。
東北大学加齢医学研究所認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門では、15年にわたる活動で、子どもの脳や心の発達と日々の生活活動との関係を明らかにしてきた。
同書では、「生活習慣」「読み聞かせや読書習慣」「メディアやインターネット習慣」「学習」「親子関係」などが子どもの発達にどんな影響を与えるか、科学的な事実に基づいてわかりやすく解説されている。
保護者や先生など、子どもたちのまわりにいるすべての大人たちに知ってほしい情報が詰まった一冊となっている。
子どもたちの脳にとって“よい”こと、“よくない”ことが、脳科学の実証で明らかになった。この本では、次のようなエビデンスを紹介している。
【子どもたちにとって“よい”こと】
◆読み聞かせは、子どもの感情や記憶にかかわる脳の部分を刺激する
◆読み聞かせのような言葉に関する親子コミュニケーションが、子どもの言語発達におおいに関係する
◆読書習慣は、発語と言語理解にかかわる場所をつなぐ配線の情報伝達をよくする
◆小学生では、読書時間の長さと成績は比例関係にある
◆家庭で勉強する習慣は、子どもの脳の発達にとってよいことである
◆科目によって、学力の影響を受ける脳の部位が異なるから、いろいろな科目に取り組むことが脳によい影響を与える
◆親と過ごす時間が長い子どもたちほど、言語能力が高い
【子どもたちにとって“よくない” こと】
◆睡眠が不足すると、記憶にかかわる海馬が小さくなる
◆成績下位の子どもたちでは、朝食を食べないことがある割合が4割近い
◆子どものテレビ視聴時間の長さと言語能力の低さに関連がある
◆子どもがゲームで長時間遊ぶ傾向と言語能力の低さに関連がある
◆インターネットの頻繁な利用は、子どもたちの言語能力の発達に悪影響がある
【15年にわたる研究活動】
すべての子どもたちがまっすぐに自分の未来を見つめ、背筋をぴんと伸ばし、自信に満ちあふれて生きていける。そのような社会をつくるために大人が何をしたらよいのか、子どもたちにどのような環境を準備してあげればよいのか。
それを科学的に明らかにする目的で、2008年から東北大学加齢医学研究所が中心となり、研究が始まった。子どもたちの成長を長年にわたって追いながら、研究が続けられた。
子どもたちの日々の生活との気になる関係
食事や睡眠などの正しい生活習慣、本を使った読み聞かせや読書、親子のふれあいなどのコミュニケーションが子どもたちの成長にとても大切、ということは本当か?
子どもたちを夢中にさせてしまうテレビやゲーム、インターネットなどは、子どもたちの成長にとってあまりよくないのではないか?
子どもたちの将来を考え、どのようにして学習に向かわせたらよいのだろう?
同書では、そのような疑問に答える一冊になっている。
読書習慣によって、脳の構造に変化を及ぼすことがわかっている。読書習慣があった子どもでは、図1で赤く示した、言葉との関係が深い部分が情報を効率よく伝えられる構造になっていた。
脳科学者でさえ驚く結果
脳科学に基づく科学のデータには、「やはりそうなんだ」という結果だけでなく、「えっ、そうなの!」という事実もある。たくさんの脳画像やグラフを載せて、さまざまなエビデンスを紹介している。
どれも、子どもたちのまわりにいる大人に知ってほしいことばかりである。大人と子どもにとって、日頃の生活と脳の健康について考えるきっかけになるだろう。
【編集者】
川島隆太(かわしま・りゅうた)氏
東北大学加齢医学研究所教授。1959年千葉県千葉市生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学系研究科修了。博士(医学)。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学助手、講師を経て、現在同大学教授。元文化審議会国語分科会委員。脳のどの部分にどのような機能があるのかを調べる「ブレインイメージング研究」の、日本における第一人者。
松﨑 泰(まつざき・ゆたか)氏
東北大学加齢医学研究所助教。東北大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。小児の脳形態、脳機能データと認知発達データから、子どもの認知機能の発達を明らかにする研究をおこなっている。
【著者】
瀧 靖之(たき・やすゆき)東北大学加齢医学研究所教授
榊 浩平(さかき・こうへい)東北大学加齢医学研究所助教
橋本照男(はしもと・てるお)東北大学加齢医学研究所助教
竹内 光(たけうち・ひかる)東北大学加齢医学研究所准教授
横田晋務(よこた・すすむ)九州大学基幹教育院准教授