アストラゼネカは23日、リムパーザとアビラテロンとの併用療法について、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として米国で優先審査指定を取得したと発表した。
リムパーザは、アストラゼネカとMSDが共同で開発および商業化を行っている。FDAによる優先審査は、安全性または有効性の改善、重篤な症状の予防、患者コンプライアンスの向上によって、現在使用が可能な治療選択肢よりも著しい進捗をもたらす医薬品に付与される。
処方箋医薬品ユーザーフィー法(PDUFA)に基づくFDAが目標とする審査の判断期日は、2022年第4四半期中である。
米国において、前立腺がんは男性では2番目に多いがんで、2022年には約3万5000人が死亡すると予測されてる。mCRPC患者の全生存期間は、臨床試験において約3年間であり、臨床現場ではさらに短いと予想される。
また、mCRPC患者の約半数は積極的治療を1次治療しか受けておらず、その後の治療効果が減少している。
今回の追加承認申請は、2022年米国臨床腫瘍学会泌尿生殖器がん(ASCO GU)シンポジウムで発表されたP3相PROpel試験に基づくもの。なお、同試験の結果はNEJM Evidence誌に掲載された。
P3相PROpel試験において、リムパーザとアビラテロンの併用療法は、アビラテロン単剤療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクを34%低下させた(ハザード比0.66;95%信頼区間0.54-0.81;p<0.0001)。
画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値は、アビラテロン単独群の16.6カ月に対し、リムパーザとアビラテロン併用群では24.8カ月であった。
リムパーザとアビラテロンの併用療法における安全性および忍容性は、過去の臨床試験で観察されたものおよび個々の薬剤の既知のプロファイルと一貫していた。
リムパーザは、エンザルタミドまたはアビラテロンによる治療後に病勢進行した、HRR関連遺伝子変異(BRCA遺伝子変異または他のHRR関連遺伝子変異)を有するmCRPC患者に対して米国で承認されており、EU、日本、および中国では、新規ホルモン製剤を含む治療後に病勢進行した、BRCA遺伝子変異を有するmCRPC患者に対し承認されている。これらの承認は、P3相PROfound試験の結果に基づいている。
◆Susan Galbraithアストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジーR&D責任者のコメント
mCRPCと診断された患者さんの予後は依然として不良で、深刻なアンメットニーズが残されており、治療選択肢も限られている。今回のニュースは、この適応において、非常に必要性の高い新しい治療選択肢を前進させるさらなる一歩である。承認されれば、リムパーザとアビラテロンの併用療法は、mCRPC患者さんに対するPARP阻害薬と新規ホルモン製剤による最初の併用療法となる。
◆Eliav Barr MSD研究開発本部のグローバルクリニカルディベロップメント責任者兼チーフメディカルオフィサーのコメント
MSDは、さらなる治療法が早急に必要な複雑な疾患であるmCRPCの患者さんのために、新たな治療選択肢の開発に取り組んでいる。HRR遺伝子変異の有無にかかわらず、mCRPC患者さんに新たな治療選択肢をもたらすという目標に向けて、FDAと協力していけることを期待している。