大阪府薬剤師会が主催し、大阪府薬剤師連盟が共催する「2022年度大阪府薬未来を担う薬剤師フォーラム」が22日、「未来をつくる薬剤師力~コロナ禍を経験して~」をテーマに3年ぶりにWeb開催され、今後、地域・職域薬剤師会で活躍が期待される88名の薬剤師が参加した。
同フォーラムは、地域・職域薬剤師会の次期指導者育成と、薬剤師職能確立において政治の重要性を訴求することを目的としたもの。
今年度は、尾島博司大阪府薬剤師連盟会長を座長に「輝ける未来の薬剤師のために」をテーマとしたパネルディスカッションが企画され、山本信夫日本薬剤師連盟会長、藤井基之参議院議員、本田あきこ参議院議員、渡嘉敷奈緒美前衆議院議員、今年7月の参議院選挙に出馬する神谷まさゆき日薬連盟組織内統一候補が基調講演。改正薬機法では薬剤師が薬のキーパーソンとなり医療従事者と連携する重要性が確認された。加えて、薬剤師職能の確立においては、薬剤師の自覚と努力、政治力が不可欠となることが改めて強調された。
また、大野真理子氏(ウォルグリーンズ社スペシャルティー薬局 薬局長)が「米国薬局薬剤師の役割と将来性」を演題に講演した。
はじめに乾英夫大阪府薬剤師会会長が、「本年5月13日に改正薬機法が成立し、新型コロナ治療薬なの緊急承認制度が施行され、電子処方箋の仕組みが来年1月からスタートする」と報告。
その上で、「薬機法改正においては、2025年の地域包括ケアシステムの中での薬局・薬剤師役割が期待されている。本日は、その期待に応えるための活発なご意見を頂けるようお願いしたい」とあいさつした。
パンネルディスカッションでは、山本日薬連会長が、「法規制の中での薬剤師業務は、自分達だけでは自由に立ち行かず、国全体を通した仕組み作りをする必要がある」と指摘。さらに、「こうした仕組みを作り、できた法律を直して改めて新しい仕組みを作るには、薬剤師の言葉で話せる国会議員が不可欠である。是非、藤井先生の勇退を受けて出馬する我々の代表の神谷まさゆき候補を国会へ送り出せるよう、ご支援をお願いしたい」と訴えかけた。
藤井参議院議員は、「医薬分業は、1974年の石油ショック時の公的保険報酬の改革が発端となり700万枚程度の院外処方箋が発行された。その後、院外処方箋発行枚数は平成30年間で大きく伸長し、今では8億枚に達している」と回顧。
その上で、「コロナ禍による受診抑制、電子処方箋の流れの中で、薬剤師の将来的業務がどうあれば患者のためになるかを議論してほしい」と主張した。
本田あきこ参議院議員は、「先輩薬剤師の皆さんが切り開いてきた医薬分業を継承し、さらに進展させるために、是非神谷候補のお話に耳を傾けて頂き、組織活動に力を貸してほしい」と呼びかけた。
渡嘉敷奈緒美前衆議院議員は、「日本の医療を充実させる上で、薬剤師が柔軟に医療の中で役割を果たすことが大きな力になる」と断言し、「国政で薬剤師の活動と提案をしっかりとアピールできるように私が失ってしまった国会議員の議席を是非神谷候補に与えてほしい」と訴求した。
「輝ける未来の薬剤師のために」をテーマに講演した神谷氏は、「リフィル処方箋が政府の‟骨太の方針”に入ったことは、極めて重要である。また、今回の薬機法改正では、薬剤師が薬に関するキーパーソンとして、医師、歯科医師と連携を取ることが求めれている」と指摘し、「我々薬剤師は、その役割に応えて行かねばならない」と強調。
さらに、「藤井先生の後をしっかりと継承し、地域の中で期待される薬局の重要な役割を本田先生との2人体制で国会で訴えていきたい。薬剤師の未来を輝かすために7月の参議院選挙では、よろしくご支援をお願いしたい」と力強く呼びかけた。
尾島大阪府薬連盟会長
比例代表選挙は3人の神谷姓が立候補予定のため、必ず「神谷まさゆき」のフルネーム投票を
尾島大阪府薬連盟会長は、「支援者用の名簿集め活動も今展開している。参議院選挙は、6月22日公示、7月10日投票が予想されるが、最後の最後まで神谷候補が当選するように後援会活動を展開していきたい」と抱負を述べた。
加えて、「比例代表選挙では、かみやまたは神谷姓が3名程度立候補する予定のため、投票では必ず‟神谷まさゆき”のフルネームで記名してほしい」と注意を促した。
大野氏は、「米国薬局薬剤師の役割と将来性」をテーマとしたの講演の中で、米国の保険調剤の特徴として「コスト効果を重視した薬物治療」、「医療保険に存在する免責」、「薬の自己負担額の相談に応じる薬剤師」を指摘。さらに、「薬剤師の職業」、「薬局テクニシャンの職業」、「調剤薬局の実際」にも言及した。大野氏の講演内容の概要は次の通り。
コスト効果を重視した薬物治療では、「フォーミュラリーに沿った薬物治療」、「患者によって異なる処方箋の自己負担額」が実施されている。各種保険では次に示す通りの適用範囲と自己負担額になっている。
【公的保険】
◆メディケイド(低所得者・障害者)の適用範囲は、処方せん薬、医療で、フォーミュラリー薬は無料、ティア制度はない。
◆メディケア・パートB(65歳以上・障害者)は、免疫抑制剤、経口抗がん剤、血糖測定器、予防接種などを適用範囲とし、無料(例外あり)。
◆メディケア・パートD の適用範囲は、処方せん薬、一部の予防接種で、メディケア・パートDの民間保険会社のフォーミュラリーに従う。費用は無料~$$$。
◆トライケア(軍の医療保険)適用範囲は、処方せん薬、医療。費用は、無料~$$$
【民間保険】
◆ コマーシャル保険では、各保険会社が独自のフォーミュラリーを設定。 費用は無料~$$$
フォーミュラリーでは、【Lower-cost】は、最も全体的な価値の高い薬で、ほとんどがジェネリック薬であるが、いくつかのブランド薬も含まれている。
“最も低価格な自己負担額のためにティア1に該当する薬を利用する。
【Mid-range cost】は、良い全体的な価値の薬で、主に推奨ブランド薬が含まれている。“自己負担額を抑えるために、ティア3よりもティア2に該当する薬を利用する。
【Highest-cost】は、全体的な価値の低い薬が含まれている。“ティア1かティア2の薬での治療のオプションについて処方者に尋ねる。
事前承認として、フォーミュラリー外の薬の保険請求に必要な手続きが求められる。処方箋の保険を有しているからといって発行された処方箋全てが保険適用になるわけではない。
PA許可フォームを提出処では、処方者が保険会社にPAのリクエストを提出してから審査に7−10日かかることもある。急を要する処方箋では処方医に代替薬の使用を疑義紹介するケースもある。
また、メールオーダー薬局は、オンライン薬局とは異なる。慢性疾患治療薬のリフィルでは”メールオーダー”を利用しなければ保険適用にならない場合もある。90日分調剤でき、郵送が遅れた場合には患者の最寄りの薬局で対応が可能だ。
米国の調剤薬局の種類(カッコ内は売上比率)には、リテール薬局として、チェーン薬局(40%)、メールオーダー(37%)、スーパーマーケット(9%)、マスリテイラー(7%)、個人薬局(6%)がある。
また、スペシャルティー薬(SP薬)の特徴としては、「ユニークな流通経路」、「厳しい取り扱い」、「投与経過観察の義務」、「患者の疾病管理」、「治療モニタリング」、「高額($500-$2000/month)」が挙げられる。SP薬に影響する組織には、製造業者、 FDA、 PBM(薬剤給付管理)がある。また、SP薬は、全体の処方箋の2%で、収益は42%と高い。
SP薬を取り扱うスペシャルティー薬局は、URAC(SP薬局のスタンダード)の規定に従った運営を行っており、「事前承認サポート」「厳密な管理」、「患者の自己負担を軽減するサポート」が求められる。その中で、「厳密な管理」では、ロット番号記録、REMS(安全性リスク評価とリスク低減戦略)確認を実施している。
2018年のベストセラーSP薬は、1位:ヒューミラ $18.4 billion(約2兆円)、関節リウマチ、乾癬、自己免疫疾患、2位:レブラミド $9.7 billion 多発性骨髄腫、3位:キイトルーダ $7.2 billion がん、4位:ハーセプチン $7 billion がん、5位:アバスチン $6.8 billion がん-の順となっている。
保険調剤の実際では、ティア3の処方箋を応需した場合は、「患者に自己負担額を伝える」、「患者が希望すれば処方者にティアの低い薬に変更可能か打診」、「変更に数日かかることもある」
事前承認が必要な処方箋を応需した場合は、「処方者と協力して承認許可を得るための文書作成(SP薬局)する」
推奨薬局でない場合は、「推奨薬局に処方箋を移行」するか「保険調剤をせず全額実費での調剤」を行う。
米国の薬剤師は、2+4年制で、Pharm.D.を取得する。薬剤師免許試験は、NAPLEX、MPJE(試験会場、日時を自由に選べる)である。合格者は、州の薬事会(Board of Pharmacy)に登録、RPh(Registered Pharmacist)となる
免許申請には、$332、更新には$329(テキサス州)を要する。免許更新には、生涯教育が義務付けられている。専門を高めるオプションには、レジデンシー、専門薬剤師がある。
また、米国では1980年から“薬剤師のサポートをするスタッフ”としての薬局テクニシャンが約20年近くかけて資格制度として確立された。薬局テクニシャンは、高卒以上、PTCB(Pharmacy Technician Certification Board)で取得できる。
米国の調剤薬局数は、日本とほぼ同じで、 日本の調剤薬局数は2021年に6万軒を突破した。米国ではその数を少し上回る6万6千軒の薬局が存在する。
米国は3億2820万人(328,200,000)/人口密度(人/km2)33、 日本は1億2581万人(125,810,000)/人口密度335となる。
米国の薬局では、薬剤師の人数による調剤数の制限はない。PBMの契約状況で推奨薬局が変わる(=かかりつけ薬局❌)。
米国の調剤薬局のワークフローについては、処方箋の応需は、ほぼ100%電子処方箋である。処方箋監査は、スペシャルティー薬局以外の調剤薬局では通常、チャートノートを要求して処方解析をすることはない。
薬歴は、文字通り薬の調剤履歴であって文書化(SOAP)にする必要はない。 服薬指導義務、患者の自己負担額の検証、PDMPチェック(規制物質の処方箋の履歴の検証)が求められている。
調剤は、セントラルフィル、調剤マシーン、調剤センターで実施され、郵送サービスを行っている。コロナ渦中では、カーブサイドピックアップを実施している。「リフィル処方箋の管理」、「処方箋の移行」、「各種予防接種サービス」も薬局の業務である。
リフィル処方箋の管理は、「医療費が高額」。「処方者との診察日の予約を取るのが大変」など米国特有の事情がある。こうした中、リフィル処方箋の実際は、「一般薬のリフィルは1年分可」、「薬剤師の判断でリフィルが無い場合にも72時間分の緊急調剤可」、「ジェネリック薬に切り替え可」となっている。
リフィルの長所には、「薬物治療継続に不可欠」、「30日分の調剤よりも90日分の調剤の方が高いアドヒアランス」、「薬局の将来的なキャッシュフローが見込める」、「リフィル履歴から必要な予防接種をオファー」などがある。
翻って、リフィルの短所では、「処方者が特定の薬の中断を患者に伝えていても薬局に連絡が伝わっていなければ患者は処方箋の調剤を受けることが可能」、「患者が定期的な診察を受けていない場合でも薬物治療が継続される」、「保険調剤のために遠隔のメールオーダー薬局を利用しなければならない場合がある(=かかりつけ薬局をつくれない)」などが挙げられる。
このように米国薬剤師は、フォーミュラリーに沿った保険調剤による薬物治療を円滑に進める上で重要な役割を果たしている。薬局テクニシャンは、新型コロナワクチンを提供するなどその役割が広がり、薬剤師がクリニカル業務に専念することに寄与している
薬剤師は今後、プロバイダーとしてのステータスを活用し、主治医不足が予想される医療現場で直接的な患者ケアを提供する立場に成長すると見込まれている。