再会

 コロナワクチンの充填に薬剤師が関わっていますが、接種する人数が減少傾向で、ワクチン会場では事態が変わってきたのだとわかります。
 また、うちの薬局ではコロナ治療薬を在庫していますが、ラゲブリオが処方されることが減少していて、このことから考えても重症患者が減り、コロナが収束しつつあると思います。
 このように様子が変わってきて、海外に住む長女がコロナ以降久しぶりに日本に帰って来ました。こんなに長く帰ってこられないという事態が起こることなど、予想できませんでしたから、コロナによるこの2年ほどの世界の動きが非常事態であったのだと改めて思います。
 幸運にも私は、長女とお互い元気に再会することができましたが、元気に再会を果たすことができなかった方々もいらっしゃいます。コロナ禍に軽い脳梗塞を発症され入院されたKさんは、退院後に施設に入所されました。この施設でも面会は禁じられていましたが、何とかお元気に過ごしていらっしゃいました。
 面会がままならぬことをKさんのご家族は不満に思われていましたが、仕方のないことと我慢をされていました。ところが、先月末にKさんの容体が急変し、再び入院をされました。その病院からご家族に連絡があった時はすでに危篤状態で、ひとこともお話しできなかったということです。
 ご主人を失われた悲しみと、満足にお世話できなかった後悔と、この状況に対する腹立たしい思いで、Kさんの奥様は6kgも痩せてしまわれました。
 そして、Oさんの場合では、コロナ禍で外出が阻まれ、少し遠方に住む長女さんと逢う機会も減り、認知症の症状が進んでしまわれました。それまでOさんは独居でしたが、身の回りのこと、園芸、お料理など、小まめに楽しんでおられました。病院受診の日もきれいにオシャレをして、薬局でも楽しくおしゃべりをされていて、みんなの人気者でした。
 そのリズムが狂ってしまったことと症状の悪化は関係がないとは言い切れません。おうちにお伺いさせていただきましょうかと提案もさせていただきましたが、先日Oさんの長女さんからお電話があり、介護の生活を始めたので、もう薬局に伺うことができませんというご報告をいただきました。私たちは結局何もできなかったです。
 決してコロナだけが原因ではないことはわかっていますが、このような事態をそれも人生というには理不尽な思いがし、悪い状況を改善して解決する方法に自分ができることはないかと思い倦ねるしだいです。

                            薬剤師 宮奥善恵

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