尿蛋白減少と末期腎不全リスク低下の関連性を証明 福井大学

CKD臨床試験のエンドポイント設計や、日常診療の予後評価の実装への寄与に期待

 福井大学 学術研究院医学系部門(医学領域)腎臓病態内科学分野の遠山直志教授らの研究グループは29日、尿蛋白減少と末期腎不全リスク低下の関連性を証明したと発表した。
 日本腎臓学会、協和キリンとの共同研究である日本CKDコホート研究(CKD-JAC)のデータを用いて尿蛋白クレアチニン比(UPCR)の2年間の30%減少が、尿アルブミンクレアチニン比(UACR)の30%減少と同等に、末期腎不全(透析や腎移植が必要な状態)への進行リスク低下と関連することを示したもの。
 尿アルブミンはCKD 進行評価の確立したバイオマーカーで、その普及・活用は引き続き重要な課題である。一方、日本では簡便かつ安価な尿蛋白測定が広く用いられている。同研究は、中等度から進行したCKD 患者を対象とし、このような段階において尿蛋白の変化が尿アルブミンの変化と同等に将来の腎不全リスクと関連することを、日本人大規模コホートで初めて体系的に示したもので、CKD の臨床試験のサロゲートエンドポイント設計や、日常診療での予後評価への応用が期待される。同研究成果は、29日に、国際学術誌「Nephrology DialysisTransplantation」に掲載された。
 慢性腎臓病(CKD)は、日本人成人の約5人に1人が罹患するとされる国民的疾患で、進行すると透析や腎移植が必要な末期腎不全に至る。末期腎不全に至るまでには長期間を要するため、CKDの臨床試験や観察研究では、末期腎不全の「代わり」となるサロゲートマーカーが重要視されている。
 これまでに、尿アルブミンクレアチニン比(UACR)の短期間の変化が、将来の末期腎不全の発生と強く関連することが示され、国際的な臨床試験でサロゲートマーカーとして採用されてきた。
 一方、日本をはじめアジア・欧州の一部の国では、日常診療においてアルブミン尿ではなく尿蛋白(UPCR)の測定が広く行われている。これは、尿蛋白測定の方が簡便かつ安価であることや、保険診療上の制約があるなどによる。だが、同一集団においてUPCR とUACR を直接比較し、短期間の変化が末期腎不全リスクと同等に関連するかを検討した研究は限られていた。
 同研究では、日本CKD コホート研究(CKD-JAC)の参加者のうち、ベースラインおよび2年後の尿アルブミン・尿蛋白のデータが揃っていた603名を解析対象とした。
 平均年齢は60歳、平均eGFRは29mL/min/1.73 m²、UPCR中央値は0.81 g/gCr、UACR中央値は601 mg/gCrであった。中央値4.9年の追跡期間中に、245 名(40.6%)が末期腎不全へ進行した。
 UPCRおよびUACRの2年間の30%減少と、その後の末期腎不全の発生リスクの関連をCox比例ハザードモデルで解析した結果、次の①~③の事項が明らかになった。

① 2 年間のUPCR の30%減少は、末期腎不全の発生リスクの有意な低下と関連した(ハザード比 0.52、95%信頼区間 0.38–0.71)。

② 2 年間のUACR の30%減少も、同等のリスク低下と関連しました(ハザード比 0.58、95%信頼区間 0.41–0.82)。

③ サブグループ解析では、eGFR<15 mL/min/1.73 m²の進行例において、UPCR の変化と末期腎不全リスクとの関連がUACR の変化に比べて弱まる傾向がみられた。
 さらに1 年間のUPCR の30%減少も、その後の末期腎不全の発生リスクの低下と有意に関連することが示され、より短い観察期間でも尿蛋白の変化がサロゲートマーカーとして活用できる可能性が示された。
 同研究は、日常診療で広く測定されている尿蛋白の変化が、尿アルブミンの変化と同等にCKD の将来リスクと関連することを、日本人コホートを用いて初めて体系的に示したものである。日本では保険診療上の制約から尿蛋白測定が広く用いられている現状があり、同研究はそのような状況下でも尿蛋白の変化が有用なマーカーとなり得ることを示したものだ。
 同研究成果は、今後のCKD臨床試験におけるエンドポイント設計や、日常診療における予後評価の実装への寄与が期待される
 一方で、同研究ではeGFR<15の進行例において、尿蛋白の変化と末期腎不全リスクとの関連が弱まる傾向が示された。この集団では尿アルブミンの変化を用いる、あるいは両者を補完的に用いることが望ましい可能性がある。今後、より多様な人種・病態を含む国際コホートでの検証を通じて、UPCR変化のサロゲートマーカーとしての位置づけをさらに明確化することが望まれる。
 

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