アストラゼネカは17日、日本呼吸器学会、日本肺癌学会と共同で、レジストリー研究「TSUBAKI 試験」を開始すると発表した。同試験は、日本の実臨床に
限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)における根治的化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブの有効性および安全性を評価することを目的としたもの。
同研究は、両学会とアストラゼネカの三者による初の共同研究で、日本における実臨床のエビデンス創出に資する先駆的なレジストリーデータベースを構築・運用する取り組みである。
肺がんは男女ともにがん死亡の主な原因であり、がん死亡の約 5 分の1を占めている。肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に大別され、約15%が SCLC に分類される。
日本で 2020 年に肺がんと診断された患者は約12 万人である。SCLCは、肺がんのなかでも悪性度が高いタイプ2としてNSCLCと区別されている。
SCLC のうち片側の肺または胸部に病変がとどまっている LS-SCLCの割合は約30%とされることから、国内における LS-SCLCの罹患数は約5 000と推定される。
LS-SCLCは標準治療である CRT に対して最初は奏効するものの、ほとんどの患者で最終的に疾患進行が認められる。そのため、LS-SCLC の診断後の 5 年生存率は15~30%と予後不良である。こうした医療ニーズの高い領域において患者の治療成績を向上させていくためには、日本の実情に応じた課題を同定することが重要であり、日本の実臨床データを継続的かつ高品質に収集し、解析できるレジストリー基盤が不可欠である。
アストラゼネカのイミフィンジ点滴静注120mg およびイミフィンジ点滴静注 500 mg(一般名:デュルバルマブ、遺伝子組換え)は、P3相 ADRIATIC 試験の結果に基づき、「限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果として、2025年3月27日付で厚労省より承認を取得している。
同承認により、長年大きな進展のなかった LS-SCLC 治療に数十年ぶりに、根治を目指すレジメンとして新たな治療選択肢がもたらされた。
TSUBAKI 試験は、日本におけるLS-SCLC患者のデータベース構築と治療課題の特定を目指し、日本呼吸器学会、日本肺癌学会とアストラゼネカが実施する共同研究だ。主な組入対象は2025年3月27日以降にLS-SCLCと診断され、CRT(同時もしくは逐次)を開始された患者とし、登録数は225例、追跡期間2.5年を予定している。
また、約 40 施設の参加を予定しており、臨床データは、日本の医療機関で電子カルテ等から標準化された診療情報を相互利用するための標準化ストレージであるSS-MIX2(Standardized Structured Medical Information eXchange2)を活用して収集される予定である。
◆日本肺癌学会の理事長兼日本呼吸器学会データ
ベースワーキンググループ長の山本信之氏(和歌山県立医科大学内科学第三講座教授)のコメント
昨年 11 月に更新した「肺癌診療ガイドライン 2025 年版」では、LS-SCLC に対し、同時 CRT 後のデュルバルマブによる地固め療法の実施が強く推奨されした。
TSUBAKI 試験は、同領域における重要なエビデンスギャップを日本の実臨床データで補完し、治療最適化に資する知見の創出を目指している。それによって、LS-SCLC 治療に約 30 年ぶりにもたらされたこの新規治療が医療者・患者さんにとってより価値の高いものとなることが期待される。
◆髙橋和久日本呼吸器学会理事長(順天堂大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学 教授)のコメント
TSUBAKI試験では、ADRIATIC試験で示された新たな治療パラダイムを、日本の臨床現場で適切に実装するうえで不可欠となるレジストリーデータを解析する。日本呼吸器学会が導入を推進する SS-MIX2を活用し、患者数が少ない限局型小細胞肺がんのデータ収集もスムーズに進むと考えられる。
アカデミアと製薬企業が協働してデータベースを築くことで、LS-SCLCの治療選択と診療体制の進化に資する成果の創出が見込まれる。
◆北川洋アストラゼネカ メディカル本部 オンコロジー領域統括部 統括部長 のコメント
ADRIATIC試験では、デュルバルマブ群がプラセボ群に対して2つの主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、日本人サブ解析においても良好なベネフィット/リスクプロファイルを示した。
その結果、国内においても免疫療法がLS-SCLC患者さんのCRT後の地固め療法として新たな選択肢となった。この産学連携によるTSUBAKI試験から創出するエビデンスを通じて、日本の患者さんへ ADRIATIC試験で得られた治療の進歩を適切に届ける一助となることを目指したい。

