
近年、医療現場にもDX化とAI技術が広く推進されるようになってきた。臨床検査においては、将来的には自動化・ロボティクス化によって無人に近い状況になると言われている。「臨床検査DXとAI技術」により、臨床検査技師はどう変化していくのか気になるところだ。
こうした中、1990年代半ばより医療現場のDX、AI導入を進めてきた神野正博全日本病院協会会長(けいじゅヘルスケアシステム理事長)と、横地常広日本臨床衛生検査技師会代表理事会長が、今後の臨床検査技師の在り方について対談した。日本臨床衛生検査技師会会員向け広報誌JAMTマガジン2026年1月号での特集で掲載された対談のサマリーを紹介したい。
【対談のポイント】
◆臨床検査DX、AIの導入で臨床検査技師の仕事と役割は大きく変容していく。幅広い基礎力と、高い専門性をもつことで臨床から求められる人材となりうる
◆臨床検査技師は技術革新により職域が失われるのではなく、新たな医療現場でのニーズに応え、多職種連携医療の一員として診療支援を担っていく存在へ
◆今後、地域と連携した医療・介護・生活を支える医療エコシステムが構築されていく。臨床検査技師は病院内外で価値を発揮し、医療エコシステムを支える人材であることが求められる
【臨床検査室の外へ広がる臨床検査技師の役割】
病院全般の効率化という面において、臨床検査DXやAIを導入することで、人員配置基準、あるいは専従要件の見直しができ、効率的でより良い医療を提供するためのチーム医療の質があがるきっかけになると考えられる。
また、検査業務ではオートメーション化が進み、臨床検査技師の役割は測定からデータの品質管理へと変化している。技術革新による効率化で生まれた時間を、説明業務やタスク・シフト/シェアなどで、診療支援へ活かすことが重要であり、特に、人対人のコミュニケーションの質が価値を左右すると思われる。
今後、臨床検査技師には単なるテクニシャンではなく、病棟やオペ室など臨床現場で活躍し、病院全体の業務再編の中で信頼され選ばれる存在となることが求められる。そのためにも基礎力と専門性を兼ね備えた人材育成が不可欠であると考えられる。
【ジェネラリストを基盤とした専門性の深化】
今の医療において目指すべき姿は、ルーチンワークをこなすだけではなく、ジェネラリストでありながら臨床から信頼される専門性を備えた臨床検査技師である。検査データだけでなく患者像を捉えるための幅広い知識と技術を磨き、臨床から相談される存在になることが重要だと考えられる。
基礎的な知識と技術を広く身に付けたうえで、軸となる専門性を持ち、さらに複数の専門性を重ねることで診療支援の幅は広がる。専門分野に特化して、研究室や企業、教育機関などで活躍する臨床検査技師も必要であるが、職能団体として臨床から信頼される人財の育成も必要だと考えられる。
日臨技では専門学会と連携し、研修会やVODを通じて、全国どこからでも学べる環境整備を進めており、会員の継続的な学びの場となることを期待している。
【変化する医療ニーズに対応する体制づくり】
臨床検査技師の業務は測定機器や試薬の技術革新により、実務的に任せられる業務は新技術に委ね、臨床検査室内にデータ品質を保証する管理部門を設けることが理想的だ。従来の分野別管理ではなく、患者単位で検査データや電子カルテ情報を統合し、アルゴリズムで正当性を確認する体制が今後実現していくだろう。
自動化によって生まれた時間を活用し、臨床検査技師が必要とされる新たな場でニーズを創出することができると考えられる。多職種連携医療の一員として診療支援を担い、患者の顔が見える現場で専門性を発揮することで、これまでとは異なるやりがいが生まれると想定される。
技術革新により職域が失われるのではなく、変化する医療ニーズに応じて、現状維持ではなく自信をもって新たな評価の場へ踏み出してもらいたいと考えている。例えば、超音波検査は複数職種が担い、担当は施設の実情に応じて決定されているが、近年は病棟常駐により、臨床検査技師が迅速に対応する事例も増えている。医療ニーズの変化に伴い、イノベーションは今後も進むだろう。
【病院を超えたエコシステムの構築】
神野氏が理事長を務める石川県七尾市の恵寿総合病院病院では、1993年にSPDシステムを導入し、現在はRPAやAIによる記録・レポート作成、モバイル端末での情報共有を実現している。その経験から、DXは段階的ではなく一気に進めることが重要であり、患者が自身の検査データを閲覧できる体制と、データの質への責任が求められると感じている。勤務時間内に業務を完結させる生産性向上は重要であり、余力が生まれれば職種横断的な業務や副業も柔軟に認められ得ると考えられる。
「けいじゅヘルスケアシステム」が目指しているのは、入院治療で完結せず、退院後の生活や健康維持まで関与する地域完結型の医療エコシステムだ。病院、施設、地域の事業者が連携し循環する仕組みを構築することで、急性期拠点病院は重症患者に特化し、「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担が明確になると考えられる。
さらに、通院困難な高齢者を支えるため、医療・介護・生活を一体で支えるエコシステムの構築が不可欠である。これからの臨床検査技師は、エコシステムを支える人材であることが求められると思われる。

