外国語受検者は低ストレスだが待遇面に課題 ドクタートラスト

約56万人のストレスチェックデータを受検言語別に分析

 ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者300万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。
 ドクタートラストのストレスチェックでは、WEB受検の場合、日本語に加えて英語での受検が可能である。また、紙受検では日本語・英語に加え、中国語(簡体字)・ベトナム語・インドネシア語・ポルトガル語・ミャンマー語での受検に対応している。近年、外国人労働者数は増加傾向にあり(厚生労働省調査はおよそ230万人)、多様な働き手の職場環境把握が重要になっている。
 そこで今回の調査では、2024年度にストレスチェックを受検した約56万人のうち、日本語以外の言語で受検した方を「外国語受検者」とし、「外国語受検者の傾向」を調査した。
 約56万人分のストレスチェック結果を分析した結果、日本語以外の言語で受検した「外国語受検者」は、日本語受検者とくらべて次のの傾向があった。
 ストレスチェック外国語受検者の特徴は、強みとして、「低ストレス者の割合が高い傾向、「家庭生活の満足度が高い傾向」がみられた。一方、課題では、「上司のサポート」「給与・待遇」など職場環境面での満足度が低い傾向にあった。
 ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調の予防を目的として、2015年以降従業員数50人以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。ドクタートラストでは制度開始から9年間にわたり、全国官公庁・事業団体など各組織に応じたストレスチェックを提供してきた。現在では通常の57項目版とあわせて、ワーク・エンゲイジメントなどの解析が可能である80項目版や独自の設問をご用意している。
 また、集団分析結果のフィードバックや受検後相談窓口等のアフターフォローも提供しており、国内トップクラスの受検者数を誇っている。
 今回の調査では、2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した方のうち、55万5956人の最新結果をもとに、受検言語別(日本語、外国語)のストレス傾向を紹介する。なお、日本語で受検した外国人労働者は“外国語受検者”には含まれていない。調査結果は、次の通り。

◆外国語受検者の内訳
 外国語受検者がもっとも多い業種は「サービス業」「製造業」「宿泊業・飲食サービス業」
 2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した55万5956人のうち、外国語で受検したのは3,769人(0.7%)であった。

図1は業種別に見た外国語受検者の人数内訳である。外国語受検者がもっとも多かった業種は「サービス業」、次いで「製造業」「宿泊業・飲食サービス業」であった。

◆外国語受検者のストレス状況
 外国語受検者は日本語受検者にくらべストレス度合が低い
 ドクタートラストのストレスチェックでは、個人のストレスレベルを5段階(A~E)で評価している。Aはストレスが最も低く、Eが最も高いとされる。

図2は受検言語別(日本語、外国語)のストレス状況の分布である。
 外国語受検者は低ストレス者(A判定)率が21.1%(日本語受検者とくらべて11.7ポイント高い)、高ストレス者(E判定)率は6.2%(日本語受検者とくらべて7.4ポイント低い)であった。

◆言語別・回答傾向の分析
1、外国語受検者は「家庭生活の満足度」が良好傾向

 図3は、日本語受検者、外国語受検者の良好な回答10問である。ともに良好回答1位は「職場で嫌がらせやハラスメントにあっていない」、2位「食欲に問題ない」であった。
 注目すべきは、外国語受検者の回答で「家庭生活に満足だ」がランクインしている点である。

2、外国語受検者は「職場環境や待遇面での満足度」が不良傾向

図4は、日本語受検者、外国語受検者の不良回答10問である。
 外国語受検者の傾向としては、6~10位のとおり「上司が悩みを聞いてくれない」「ふさわしい給料やボーナスをもらえていない」「意見が反映されていない」など、職場環境や待遇面での満足度が不良であることがわかった。
 また、日本語受検者、外国語受検者ともに「一生懸命働かなければならない」「かなり注意を集中する必要がある」など、仕事の量や質に関する項目が不良回答として挙がっていた。

◆まとめ
 今回の調査では「ストレスチェックの外国語受検者」に着目して分析した結果、次の3点が判明した。

<ストレスチェック外国語受検者の特徴>
・低ストレス者の割合が高い

・家庭生活の満足度が良好

・「上司のサポート」「給与・待遇」など職場環境面での満足度は低い傾向

1、外国語受検者の強み:家庭生活の満足度
 外国語受検者は、低ストレス者の割合が高く、高ストレス者の割合が低いことに加え、家庭生活への満足度も高い点が注目される。厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」の在留資格調査では、2024年に増加したのは「専門的・技術的分野」に次いで「技能実習」であった。これは、母国で役立つ技能を習得できることや、母国で育まれた家族への価値観や家庭生活の充実を重視する傾向が強いなどの理由が外国語受検者の「家庭生活の満足度の高さ」につながっているのではないかと考えられる。

2、外国語受検者の課題:職場環境と待遇
 また、今回の調査から職場環境や待遇への不満が明らかになった。出入国在留管理庁「在留外国人に対する基礎調査」では、生活環境に不満を持つ主な理由として「低賃金」「労働環境の悪さ」「言語対応の不十分さ」などが挙げられている。
 賃金だけでなく、「働きやすさ」や「適正な評価制度」の整備も、離職防止や満足度向上には欠かせない。今後、職場環境や待遇面での課題解決に向けた取り組みが期待される。
 なお、同調査は、必ずしも外国人労働者全体の結果を示すものではない点は留意を要する。

文責:押切愛里氏(ストレスチェック研究所アナリスト)

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