共通ネオアンチゲンがん治療ワクチンの開発に着手
がん研究会は28日、NEC および大鵬薬品と全ゲノム情報の活用により新たながん治療ワクチンの創製を目指した三者共同研究契約を締結したと発表した。
がん研究会、NEC、大鵬薬品の三者は、複数のがん患者さんに共通するがん特異的抗原(ネオアンチゲン)を同定し標的とする共通ネオアンチゲンがん治療ワクチンの研究開発に取り組む。同ワクチンの開発は複数のがん患者に対する治療効果の発揮と、迅速な供給を目指す。
同共同研究には、三者が保有する独自の研究情報、AI創薬技術、実験材料を活用する。具体的には、がん研究会の高いアンメット・メディカル・ニーズのあるがん種における質の高い臨床情報と紐づいた全ゲノム情報等を用い、NEC独自の AI 技術を活用し共通ネオアンチゲンの予測とがん治療ワクチンを配列設計し、大鵬薬品独自の実験モデルでこれらの免疫学的評価を行い、実験データをもって確度の高いがん抗原を絞り込み治験可能な開発候補品を見い出す。
これにより、通常のネオアンチゲンに加えて、ダークゲノムに由来するがん特異的抗原(クリプティック抗原)を含む複数の患者に共通する新たながん特異的抗原を見出し、共通ネオアンチゲンがん治療ワクチンの創薬研究を推進する。
がん治療ワクチンは、従来の化学療法剤とは異なり免疫応答を誘導することにより、未だアンメット・メディカル・ニーズが残るがんに対する有望な治療薬となる可能性を秘めている。
特に、術後の再発予防や早期段階におけるがん治療ワクチンの使用に現在 期待が高まっており、同共同研究を通じてがんという大きな社会的・医療的課題の克服への貢献を目指す。
なお、同共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の「がん・難病全ゲノム解析等実行プログラム」における「がん全ゲノム解析等の臨床的有用性の検証、および、患者還元の体制構築に関する研究」の枠組みの中で実施される。
◆野田哲生がん研究会顧問、大津敦研究本部長のコメント
本共同研究では、従来型のネオアンチゲンに加え、AI技術と免疫学的検証により同定されるダークゲノム由来の多様ながん特異的抗原(クリプティック抗原)を活用した共通ネオアンチゲンワクチンの開発を進め、次世代のがん免疫療法の実現を目指していく。
◆西原基夫NEC執行役CorporateEVP兼CTOのコメント
今回の共同研究では、NECが有する独自AIを用いたゲノム解析技術と、ダークゲノムやネオアンチゲンなどの知見を組 み合わせることで、多様な HLA タイプへの対応や、高精度ながん抗原予測を実現し、がん治療の新たな可能性を切り拓くことに挑戦する。本共同研究を通じて、治療法の選択肢がなかった患者さんに、最適な医療を届ける未来の創造に貢献したい。
◆相良武大鵬薬品取締役開発・ MA部門管掌、研究部門担当のコメント
今後のがん領域の創薬は、患者さんのペイシェントジャーニーを見据え、進行がんのみならず術後の再発早期がんにも焦点を当てて研究開発を行うことが、長期生存、引いては最終的ながん克服につながると考える。大鵬薬品独自の特許取得済み評価モデルを用いて標的がん抗原の精査と治験候補品選定の一端を担い、難治性がんの克服を目指した挑戦を続けていく。


