武田薬品は、抗CD38 モノクローナル抗体「メザギタマブ」(遺伝子組換え、TAK-079)について、原発性IgA腎症のP1b相、非盲検、臨床試験の追跡調査において、メザギタマブの投与を受けた参加者の腎機能(eGFR)が96 週(最終投与から18 カ月後)時点まで安定していることが示唆されたと発表した。
蛋白尿および血清Gd-IgA1 値が速やかに低下し96 週時点まで持続し、1− 96 週時点までに重篤な有害事象および日和見感染は認められなかった。同社は、原発性IgA 腎症および免疫性血小板減少症を対象にメザギタマブを評価するピボタルP3試験を開始し、参加者登録を実施している。
今回、原発性IgA腎症を対象とした疾患修飾作用が期待されるメザギタマブの皮下投与におけるP1b相、非盲検、プルーフ・オブ・コンセプト臨床試験の新たな中間データから、参加者の腎機能(eGFR)は、メザギタマブ最終投与後、最大18カ月間である96 週時点まで安定していることが示唆された。
同試験結果は、ヒューストンで開催された米国腎臓学会(ASN)「Kidney Week2025」で発表された。
IgA腎症は、10歳から30歳の若年層に多く診断される、生涯にわたって進行する自己免疫疾患であり、腎機能に不可逆的な障害を引き起こす。IgA腎症の病原性機序に作用する根本的な治療法はなく、既存の治療法では、約5人に1人のIgA腎症患者が診断から10年以内に腎不全を発症する。
メザギタマブは、病因に関与するガラクトース欠損型(Gd-)IgA1と呼ばれる異常タンパク質を産生する細胞を減少させることにより、IgA 腎症の病態進行の上流過程を標的とする。
同試験では、IgA 腎症の参加者17 例に安定した支持療法に対する上乗せでメザギタマブを追加投与しており、13例が長期追跡調査期間に移行した。96週(最終投与から18 カ月後)時点で腎機能は安定しており(eGFR のベースラインからの平均変化量:+2.5、95%CI:−1.8、+7.6、n=12)、参加者の尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)で測定した蛋白尿(尿中蛋白)の平均減少率は55.2%(95%CI:30.2、72.6、n=13)を維持していた。
96週時点でGd-IgA1 の50.1%の持続的な減少およびIgGのベースラインへの完全な回復が認められた。血尿は96 週時点までに患者の60%で回復した。 同試験において、メザギタマブの忍容性は概ね良好であり、新たな安全性上の懸念は確認されなかった。重篤な有害事象、ならびに重篤な過敏症または注射関連反応、有害事象による中止、日和見感染またはグレード3以上の感染症はいずれも報告されなかった。
現在メザギタマブは、原発性IgA 腎症(NCT06963827)および慢性一次性免疫性血小板減少症(NCT06722235)の治療薬としてP3試験を実施中であり、最初の患者が登録されている。メザギタマブは、本年10月、欧州医薬品庁から原発性IgA 腎症の治療薬としてオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得。本年8月には、米国FDAより、「既存治療で十分な効果が得られなかった慢性一次性免疫性血小板減少症の成人患者の治療薬」として、ブレークスルーセラピー指定を取得している。現在、メザギタマブのさらなる適応症についても評価を進めている。
◆P1b相臨床試験の治験責任医師のJonathan Barratt 氏のコメント
メザギタマブはIgA腎症の根底にある免疫メカニズムを標的としており、今回、メザギタマブ最終投与後も参加者の腎機能が安定していたことを示すデータが得られた。IgA 腎症は進行性であり、しかも多くの場合は自覚症状がないため、診断時にはすでに何らかの腎障害を有している患者さんが多いことから、今回得られた所見は非常に重要である。効果的な介入を行わなければ、腎不全に至り、透析または移植が必要となるリスクは依然として驚くほど高いままである。
◆Obi Umeh武田薬品Vice President 、Franchise Global Program Leader (M.D.、M.Sc.)のコメント
これらの有望なデータは、根本原因を標的とするメザギタマブがIgA腎症のような自己免疫疾患の治療法を再定義する可能性があるという私たちの信念を裏付けるものだ。現在、IgA 腎症および免疫性血小板減少症を対象にメザギタマブを評価するP3試験では、参加者の登録が進行中である。我々は、このような有望なプログラムを前進させることができることを大変嬉しく思う。依然として高いアンメット・ニーズを抱える患者さんに革新的な解決策をお届けすることに引き続き全力で取り組んでいく。

