大塚製薬は10月31日、4DMT社(本社:米国カリフォルニア州)と同社が新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬として開発中の「4D-150」について、ライセンス契約を締結したと発表した。
今回の契約に基づき、大塚製薬は4DMT社から、nAMDおよびDMEを含む網膜血管疾患に対する4D-150の独占的な開発・販売権を、日本を含むアジア・オセアニア(APAC)地域において取得。ライセンス対象地域におけるすべての承認申請および商業化活動を主導する。
一方、4DMT社は、APAC地域を含む全世界におけるすべてのP3試験を引き続き主導する。nAMDを対象としたグローバルP3試験(4FRONT-2)は、年内にAPACで、2026年1月には日本でも臨床試験施設の追加が行われる予定である。
大塚製薬は4DMT社に対して契約一時金8500万米ドルに加え、それぞれの開発目標達成および売上高の達成目標に応じたマイルストーンを支払うとともに、売上高に応じた段階的ロイヤルティを4DMT社に支払う。なお、今後の特定の研究開発費については大塚製薬が負担する。
加齢黄斑変性は、高齢者における視力障害の主要な原因の一つである。日本人では、50歳以上の人口の約1.3%が罹患しているとされ、そのうち大部分を占める新生血管型は約1.2%に達する。国内の推定患者数は約69万人。特に、新生血管型では、網膜の中心部である黄斑に脆弱な新生血管が形成され、そこから血液や血漿成分が漏出することで出血や浮腫を引き起こす。治療が遅れると、網膜に深刻な障害をもたらす可能性がある。
近年では、この新生血管の形成に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑制する抗VEGF薬を、患者の硝子体内に約4〜16週間ごとに投与する方法が、標準的な治療法として確立されている。
だが、この治療は長期間にわたり継続することが困難であり、その結果、病態の進行を十分に抑制できないという課題が指摘されている。そのため、より長期的に効果が持続する抗VEGF薬の開発が求められてきた。
4DMT社が創製した4D-150は、新規のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いることで網膜細胞に複数の治療用遺伝子を導入し、より広範に4種類のVEGFファミリーを抑制するとともに、一度の硝子体内投与により長期にわたってその効果を持続させることを目的とした遺伝子治療薬である。現在までの臨床試験では最長で130週間の効果の持続が確認されている。
◆井上眞大塚製薬 代表取締役社長のコメント
大塚製薬は、自社研究、外部研究を問わず、日本を含む世界の患者様のWell beingにつながる新たな価値創造を行ってきた。今回取り組むnAMDおよびDMEは、視野の欠損や視力の低下を来すことで、日常生活に深刻な影響を及ぼす疾患であり、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い領域である。
現在の標準療法は長期的な治療継続が難しく、今回4D-150を日本・アジア・オセアニア市場に導入することで、生涯に一度の投薬により視力低下を防ぐことを目指す。
◆David Kirn 4DMT社CEOのコメント
網膜血管疾患の治療を前進させるうえで、世界的なリーダーシップと専門知識を持つ大塚製薬と提携できることを大変嬉しく思う。この協業は、当社のグローバル戦略を強化するだけでなく、nAMDやDMEの有病率が非常に高いAPAC地域における大きな未充足ニーズにも対応するものである。
大塚製薬が有する地域に根ざした知見を活用することで、4D-150の開発とアクセスを加速させ、治療負担の軽減や視力の維持を目指す革新的で持続的な治療法を必要とする患者さんのもとへ、より広く届けていきたいと考えている。

