ベーリンガーインゲルハイムは24日、ゾンゲルチニブについて、P1b相Beamion LUNG-1試験においてHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がんの未治療患者で77%の客観的奏効率を示したと発表した。
Beamion LUNG-1試験は、HER2チロシンキナーゼドメイン(TKD)遺伝子活性化変異陽性を有する進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の未治療患者(n=74)を対象としたもの。ゾンゲルチニブは効果と持続的な奏効を示し、確認された客観的奏効率(ORR)は77%であった。このデータは、2025年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。
奏効患者(77%)のうち、8%で完全奏効、69%で部分奏効がみられ、96%の患者が病勢コントロールを達成した。
データカットオフ時点で、奏効持続期間(DoR)と無増悪生存期間(PFS)の中央値は十分に揃っておらず、患者の47%は投与を継続中であり、6カ月時点のDoRは80%、PFSは79%と有望な状況にある。
ESMOで発表されたデータでは、ゾンゲルチニブが未治療患者において管理可能な安全性プロファイルが報告され、有害事象(AE)は過去に治療歴のある患者において確認され報告されたものと同様のパターンを示した。
有害事象によって投与量を減量した患者は11名(15%)で、投与中止した患者は7名(9%)であった。最も一般的に報告された有害事象は、グレード1の下痢と発疹であった。
ゾンゲルチニブは、米国FDAと中国医薬品評価センター(CDE)より、HER2チロシンキナーゼドメイン活性化変異陽性を有する切除不能または転移性NSCLCの成人患者のファーストライン治療薬として、ブレークスルーセラピーの指定を取得している。
HER2遺伝子変異陽性を有する切除不能、局所進行性、または転移性のNSCLCの患者を対象に、ゾンゲルチニブを標準治療と比較評価するP3相無作為化試験であるBeamion LUNG-2試験(NCT06151574)は、現在患者登録を行っている。
HER2遺伝子変異のNSCLCは、侵攻性と予後不良を特徴とする疾患だ。肺がんの約4%は、HER2遺伝子異常によって引き起こされる。HER2の変異は、過剰発現や過剰活性化を引き起こし、制御不能な細胞産生、細胞死の阻害、腫瘍の成長・進展につながる。
◆シャシャンク・デシュパンデ ベーリンガーインゲルハイム医療用医薬品事業ユニット担当取締役兼取締役会会長のコメント
HER2遺伝子活性化変異陽性を有する進行性NSCLC患者さんのファーストライン治療には、大きなアンメットニーズが残されており、標的療法は未だ承認されていない。
今回のデータは非常に有望であり、HER2遺伝子活性化変異陽性を有する進行性NSCLCの未治療患者さんに対する標準療法としてのゾンゲルチニブの可能性を期待させるものである。
当社は、オンコロジーに対して二重のアプローチをとっており、がん細胞および免疫細胞を標的とした治療法を進歩させ患者さんのためのブレークスルーを推進したい。
◆肺がん研究ユニットおよび肺がん研究プログラムの責任者であるSanjay Popat教授(ロイヤルマーズデン病院腫瘍内科学コンサルタント、MD, PhD)のコメント
HER2遺伝子活性化変異陽性NSCLCは、不均一性が大きく、進行性の高い疾患であり、これまでは有意な臨床ベネフィットをもたらす標的治療の確立が困難であった。
変異サブタイプにかかわらず77%という奏効率を示し、奏効までの期間の中央値が1.4カ月を達成したことは、HER2チロシンキナーゼドメイン変異を有するNSCLCの未治療の患者さんにおいて、ゾンゲルチニブが迅速な反応を引き起こし、この疾患領域に有望な将来の標的治療オプションをもたらすことを示している。


