Meiji SeikaファルマとFRONTEOは23日、AI技術を活用したドラッグリポジショニングに関するプロジェクトを開始したと発表した。
同プロジェクトは、FRONTEOの仮説生成に特化したAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」と、Meiji Seika ファルマがこれまでに蓄積してきた医薬品研究開発における優れた知見を掛け合わせ、既存薬における新たな価値の創出を加速するもの。
近年、疾患の複雑化・多様化に伴い、新たな創薬標的分子の探索は年々困難さを増し、標的分子の“枯渇”が深刻な社会課題となっている。新薬開発には10〜15年以上の期間と数百億〜数千億円単位の費用を要するが、その成功確率は1%未満とされており、製薬企業にとって大きな負担となっている。
こうした背景から、新薬をゼロから開発するのではなく、既存の創薬資源を新たな治療領域に活用するドラッグリポジショニングが注目されている。
既存薬はすでに基本的な安全性が確認されているため、非臨床試験を省略して臨床試験に進むことが可能であり、開発期間を3〜12年に短縮し、費用を50〜60%削減できる可能性があると報告されている。
既存薬の改良や適応症の拡大によって、製品価値を高め、特許権に基づく独占的販売期間を延長しつつ、必要とする人々に薬を届けることを可能にする「ライフサイクルマネジメント」の最適化は、製薬企業における重要な戦略の一つとして位置付けられている。
◆成瀬毅志Meiji Seika ファルマ常務執行役員/研究開発本部長のコメント
Meiji Seika ファルマが目指すのは、First in Classの新薬創出である。その実現には、研究開発力の継続的な強化が不可欠であり、その鍵となる最先端テクノロジーの導入を積極的に進めている。明治グループでは『meijiらしい健康価値の実現』を加速させるため、昨年グループDX戦略を発表した。その中核をなす基本戦略「業務変革・生産性向上と競争優位性の昇華」では、取り組みの一つとして、AI活用による研究開発の高度化・競争力の強化を図る。
FRONTEOのDrug Discovery AI Factoryは、膨大な自然言語データや科学情報を迅速かつ的確に解析し、未報告を含む疾患-分子関連性を予測することで、研究開発プロセスの革新と効率化に大きく貢献する可能性を秘めていると考える。
当社はその科学的根拠に基づく仮説生成能力に期待を寄せており、本プロジェクトを通じ、研究開発の質とスピードの両面での飛躍的な向上を目指す。
◆豊柴博義FRONTEO取締役Chief Science Officerのコメント
FRONTEOは、AI創薬事業において、自然言語処理に特化した自社開発の特化型AI『KIBIT(キビット)』と創薬研究者およびAIエンジニアの知見を融合し、疾患関連遺伝子ネットワークの解析や標的分子候補に関する仮説構築を通じて、創薬研究者の意思決定を強力に支援するAI創薬支援サービスDDAIFを展開している。
DDAIFは、AIがバイアスにとらわれず網羅的かつ圧倒的なスピードで膨大な情報を解析できる点に加え、既存の論文で報告されていない未知の標的分子と疾患の関連性を非連続的に発見できることを強みとしている。
新規創薬の難易度が年々高まる中、本技術は、Meiji Seika ファルマの医薬品の価値の最大化と事業成長、薬を必要とする患者さんのQOL向上に貢献する。加えて、標的分子の枯渇という世界的な創薬の課題や、日本の医薬品産業の発展に対してもブレイクスルーをもたらすものと考えている。
