武田薬品は22日、イノベント社と、後期開発段階にある2つのがん治療薬IBI363およびIBI343について、中国・香港・マカオ・台湾以外の全世界における開発、製造、商業化に関するライセンスおよび提携契約を締結したと発表した。
IBI363は、非小細胞肺がんおよび結腸・直腸がんで評価されており、他の種類の固形腫瘍にも有効性が期待されている。IBI343は、胃がんおよび膵臓がんで評価されている。また、初期開発段階の治療薬であるIBI3001の中国・香港・マカオ・台湾以外での全世界での独占的ライセンスオプションを取得する。
同ライセンスおよび提携契約に伴い、イノベント社は同取引の完了時に、武田薬品から1億ドルの株式投資を含め、契約一時金12億米ドルを受領する予定である。同契約一時金は、武田薬品の手元資金から充当される。
また、イノベント社は、マイルストンおよびロイヤルティを受領する可能性があるとともに、米国において武田薬品が商業化を主導し、イノベント社が共同商業化権を有するIBI363に関して、利益または損失を60%(武田薬品)/40%(イノベント社)の割合で分配を受ける可能性がある。武田薬品がIBI3001に対するオプションを行使した場合には、イノベント社はオプション行使料を受領し、さらに追加のマイルストンおよびロイヤルティを受領する可能性がある。将来的なオプション行使を含めた同取引の完了には、規制当局の承認など、一般的な取引完了条件を満たす必要がある。
IBI363は、ファースト・イン・クラスとなる可能性のあるPD-1/IL-2α-bias二重特異性抗体融合タンパク質だ。PD1/L1療法に抵抗性を含む1200人以上の患者がIBI363を投与された初期の研究では、扁平上皮非小細胞肺がん(sqNSCLC)、非扁平上皮非小細胞肺がん(non-sqNSCLC)、およびマイクロサテライト安定性の結腸・直腸がん(MSS CRC)を含むいくつかの固形腫瘍で有望な臨床活性が示された。
同剤は、米国FDAから、抗PD-(L)1療法およびプラチナベースの化学療法後に進行した切除不能な局所進行または転移性sqNSCLC患者さんの治療のためにファストトラック指定を受けている。
NSCLCおよびMSS CRCの複数の患者層、治療ラインにおいて、P1/2試験ならびに3つのP2試験が行われており、グローバルで研究開発中である。今後数カ月の間には、二次治療のsqNSCLCにおけるグローバルP3試験が開始される予定だ。さらに、追加の適応症に対する臨床開発も計画されている。
武田薬品とイノベント社は、IBI363をグローバルで共同開発し、開発費用は60%(武田薬品)/40%(イノベント社)の割合で分担する。
米国では共同で商業化し、利益または損失も60%(武田薬品)/40%(イノベント社)の割合で分配する。武田薬品は、米国での共同商業化を主導し、米国および中国・香港・マカオ・台湾以外でIBI363を独占的に商業化する権利を持つ。武田薬品は、IBI363の中国・香港・マカオ・台湾以外での製造権を保有し、米国での商業供給についてはイノベント社と共同独占権を有する。
開発中のIBI343は、胃がんおよび膵臓がん細胞に高頻度で発現するClaudin 18.2タンパクを標的とする次世代抗体薬物複合体(ADC)治療薬である。IBI343を投与された340人以上の患者を対象とした胃がんおよび進行膵臓がんの試験では、有望な臨床活性が示された。これらのがんは5年生存率が最も低いものの一つである。
同剤は、FDAより、1ライン前の治療後に再発または抵抗性となった進行切除不能または転移性膵管がん(PDAC)の治療においてファストトラック指定を受けている。
IBI343は、現在、治療歴を有する胃がん患者さんを対象に、日本および中国で進行中のP3試験で評価されており、治療歴を有する膵臓がん患者に対するグローバルP1/2試験は完了している。武田薬品は、IBI343開発の推進、また胃がんおよび膵臓がんの一次治療領域への展開を計画している。契約条件に基づき、武田薬品は、中国・香港・マカオ・台湾以外でIBI343を開発、製造、商業化する。
IBI3001は、EGFRおよびB7H3の両方を標的とするように設計されたファースト・イン・クラスとなる可能性のある二重特異性ADCである。米国、中国、およびオーストラリアで進行中のP1試験で、局所進行または転移性固形腫瘍患者を対象に評価されている。
今回の契約の一環として、イノベント社はライセンスオプションの行使前はIBI3001の臨床開発を単独で担当する。武田薬品がオプションを行使した場合、中国・香港・マカオ・台湾以外でIBI3001を開発、製造、商業化する。
◆テレサ・ビテッティ武田薬品グローバル オンコロジービジネスユニットプレジデントのコメント
開発段階にある次世代の治療薬2品目IBI363およびIBI343は、さまざまな固形腫瘍患者さんの深刻な治療ギャップに対応できる可能性がある。イノベント社がこれまでに達成してきた進展に大きな期待を寄せており、これらプログラムの可能性を引き出すために協力できることを楽しみにしている。
我々のグローバルな研究開発の専門性と商業化の能力により、これらの開発中治療薬の患者さんへのお届けを加速できるだろう。これら2つのプログラムには、武田薬品のオンコロジー領域のポートフォリオに変革をもたらし、2030年以降の当社の成長を大きく高める可能性がある。
◆アンドリュー・プランプ武田薬品リサーチ&デベロップメントプレジデントのコメント
これらのプログラムが加わることで、がん領域におけるリーダーシップとともに後期パイプラインが強化される。当社は、IBI363およびIBI343が活用するモダリティと、がん領域における豊富な経験を基に、これら開発中の治療薬の固形腫瘍における可能性を加速・拡大するためにイノベント社との連携において独自の強みを発揮することができる。
これら開発中の治療薬が示した臨床試験の結果に期待を寄せており、イノベント社と協力して、長年のアンメットニーズを持つ幅広いがん患者さんにベスト・イン・クラスとなる可能性のある治療薬をお届けできることを期待している。
◆Hui Zhouイノベント社Chief R&D Officer for Oncology Pipeline(Dr.)のコメント
革新的ながん免疫療法およびADC療法の開発は、世界のがん治療を再定義する鍵になると私たちは考えている。武田薬品と提携し、当社パイプラインの可能性を引き出し、さまざまながん患者さんのために最大限に活用できることを期待している。これら開発段階の治療法は、革新的な作用機序を特徴としており、現在、治療選択肢が限られている患者さんに希望をもたらす可能性がある。
今回の提携により、これらの治療法の開発および商業化の可能性を加速し、治療を必要とする患者さんへ新たな選択肢を提供できるようになる。