S1P5作動薬ONO-2808 多系統萎縮症対象P2試験中間解析で有効性シグナル確認 小野薬品

 小野薬品は9日、S1P5作動薬ONO-2808について、多系統萎縮症(MSA)を対象に、安全性および有効性をプラセボ群と比較評価したP2試験(ONO-2808-03試験)の中間解析において、ONO-2808の有効性シグナルを確認したと発表した。
 多系統萎縮症は予後不良の神経変性疾患で、未だ根本的治療法はなく、同剤はS1P5作動薬としてファーストインクラスの多系統萎縮症治療薬になることが期待される。
 同試験の中間解析では、臨床アウトカム評価項目である統一多系統萎縮症評価尺度(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale、UMSARS)に関して、ONO-2808群においてMSAの病態進行が遅くなる傾向が確認された。
 また、すべての用量で忍容性が認められ、管理可能な安全性プロファイルが示された。試験結果については、今後の学会にて公表する予定である。
 ONO-2808は、小野薬品が創製したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体の一つであるS1P5受容体に対する経口投与可能な選択的作動薬である。S1P5受容体は脳や脊髄等の中枢神経系に存在するグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイトの分化を促進することで、神経軸索を覆う髄鞘の安定化や再生といった神経の正常な機能維持に重要な役割を果たすことが示唆されている。
 ONO-2808は、再髄鞘化を促進し、またMSAの病因となる中枢神経系でのα-シヌクレインの蓄積を抑制することで、MSAの進行を緩和することが期待される。
 ONO-2808-03試験は、症状発現から5年以内の早期MSAを対象とした多施設共同無作為化P2試験で、日本および米国で実施している。同試験は2つのパートから構成されている。
 コアパートではONO-2808(3用量)あるいはプラセボを1日1回24週間経口投与した。コアパートの目的は、プラセボを対照にONO-2808の安全性、忍容性、薬物動態に加えて、有効性を探索的に評価するもの。コアパート完了後は、継続投与パートとしてONO-2808を最大80週間まで投与し、ONO-2808を長期投与したときの安全性、忍容性に加えて、有効性を探索的に評価する。
 MSAは進行性の神経変性疾患であり、α-シヌクレインというタンパク質が異常に蓄積することで、脳の神経細胞が徐々に失われていく。主な症状には、筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状、歩行困難などの小脳失調、立ちくらみ・尿失禁などの自律神経障害が含まれる。
 MSAは病態の進行が非常に速く、平均余命が9~10年とされる難治性の希少疾患である。発症から5年以内に約80%の患者さんで歩行に介助を必要とするようになり、12年以上生存する患者は20%にとどまると報告されている。
 日本では指定難病に認定されており、2019年度末時点での患者数は約1万人と推定されている。米国の患者数は1万5千人~5万人、あるいは約4万人と推定されている。
 現時点ではMSAに対する根治的な治療法は確立されておらず、患者の生活の質を維持するための対症療法やリハビリテーションが中心となっている。

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