アストラゼネカは19日、「イミフィンジ」について、非小細胞肺癌における術前・術後補助療法を効能・効果として厚労省より承認を取得したと発表した。
厚労省による同承認は、ピボタル試験のAEGEAN試験結果に基づくもの。日本では、毎年12万人以上が肺がんと診断されている。肺がんの約80~85%は非小細胞肺がん(NSCLC)で、そのうち約20%~25%は切除可能で、根治目的の手術が可能という報告もある。
この割合は喫煙年数が長く、喫煙する量も多い重喫煙者における肺がんスクリーニング検査の普及に伴って上昇することが予想される。だが、これら患者の多くは再発し、診断後5年生存率は、ステージIIで56%~65%、ステージIIIで24%~41%7ともいわれており、新たな治療選択肢が求められてきた。
同試験では、計画されていた無イベント生存期間(EFS)に関する中間解析において、イミフィンジベースの周術期レジメンで治療した患者では術前補助化学療法単独の場合と比較して、再発、進行または死亡イベントの発現リスクが32%低下したという統計学的に有意かつ臨床的に意義のある結果が認められた(イベント発現割合32%;EFSハザード比[HR]0.68;95%信頼区間[CI]0.53-0.88;p=0.003902)。
病理学的完全奏効(pCR)の最終解析において、イミフィンジと化学療法を併用した術前補助療法で治療した患者のpCR達成割合は、術前補助化学療法単独の場合の4.28%に対し、17.21%という結果であった(pCR達成割合の差12.96%;95%CI 8.67-17.57)。
さらに、2024年の世界肺がん学会で発表された全生存期間(OS)の中間結果では、イミフィンジベースの周術期レジメンで良好な傾向が示された(イベント発現割合35.3%;OS中央値:術前補助化学療法単独の場合の53.2カ月に対し、イミフィンジと化学療法を併用した術前補助療法及びイミフィンジによる術後補助療法では未到達[NR];HR=0.89;95% CI 0.70-1.14)。
この中間解析でOSデータは統計学的有意性の評価はされておらず、最終解析で主要な副次評価項目として引き続き評価される。
◆AEGEAN試験のSteering Committeeメンバーである光冨徹哉氏(和泉市立総合医療センター総長、近畿大学医学部教授)のコメント
ステージII~IIIの肺がんは切除可能なことが多いといえども、いまだにその治療成績は満足すべきものではない。今回、AEGEAN試験において、EFSの有意な延長が示され、デュルバルマブの適応拡大がされたことは極めて意義深く、これらの肺がん患者さんに対する新たな治療オプションとなることが期待される。
◆山本信之和歌山県立医科大学 内科学第三講座教授(日本肺癌学会理事長)のコメント
白金製剤を含む化学療法および手術を施行した後も依然として高い再発率に直面する切除可能な非小細胞肺がん患者さんに対し、デュルバルマブの化学療法併用による術前補助療法ならびに単剤による術後補助療法は、全生存期間における良好な傾向とともに再発抑制効果を示した。同結果により、これらの患者さんにおけるアンメットニーズを充足し得る、新たな治療選択肢となる可能性が示唆される。
◆大津智子アストラゼネカ取締役 研究開発本部長のコメント
本承認は、日本における切除可能な非小細胞肺がん患者さんの転帰改善に向けた重要な一歩であり、より多くの患者さんがこの重要な免疫療法に基づくレジメンを利用できるようになる。この新しい適応症は、治癒の可能性が最も高い、早期肺がんにおける治療を変革するという当社の取り組みを強調するものであり、今後もAEGEANレジメンのような新しいアプローチをもたらすことに注力していく。