
10月13日の閉幕まで残り1カ月を切った大阪・関西万博。連日20万人以上の来場者で大賑わいしている。18日には、一般来場者数が2000万人を突破した。駆け込み需要増加により、来場日時予約枠は閉幕までびっしり埋まっている。
こうした中、「さぁ、森からはじまる未来へ」をコンセプトとする住友館は、開幕以来、自然再生のための英知や技術と夢あるエンターテイメントの融合により、一般来館者はもとより報道メディアからも高い体験価値評価を得ている。
住友グループが培ってきた英知と技術のリソースを使いつつ、パートナーの電通ライブのクリエイター能力が相まって、人気パビリオンとなっている。
住友館の佇まいは、住友発展の礎である四国‟別子の嶺”から着想を得た山々を連続させるシルエットを醸し出す。住友グループが愛媛県新居浜市に保有する‟住友の森”に植えた木を約1000本利用した安らぎある建物となっている。

住友館の入り口付近は、1970年の大阪万博の年に植えられた住友の森の杉を使用。木々を積み重ねて取り付けることで、樹木の年輪、大地の地層を表現している。屋根・外壁は、それ以前に住友の森で植えられたヒノキが使用されている。

住友館の「さぁ、森からはじまる未来へ」のコンセプトについて、寺島英之副館長は、「住友グループ400年の歴史の中で、別子銅山の銅採掘事業により枯れてしまった山の自然を再生させた実績がその背景にある」と説明する。
住友館のコンセプト決定時、住友グループ19社は「SDGs達成に向けたプラットフォームである大阪・関西万博の“いのち輝く未来社会の実現”のテーマに合致する。これで行こう」と即決したという。寺島氏は、「住友グループは、400年間、SDGsの精神を持ってそれぞれの事業を展開してきた」と胸を張る。
住友館の開設で使用された1000本の木も、万博期間中に用意した約1万本の苗木を来館者が植林体験した後、「住友の森」の伐採跡地に植えることで、数⼗年後、数百年後の未来へと継承していく。

住友館に足を踏み入れると、まず、冒険のパートナーとなるランタンが手渡される。まだ見ぬ森を巡るインタラクティブ体験「UNKNOWN FOREST 誰も知らない、いのちの物語」の始まりだ。ランタン片手に、森の中を自由にめぐり、様々な「いのちの物語」と出会う冒険が待っている。

森の中に潜む動物、生き物たちの痕跡との遭遇、土の中で木々が対話する姿や、数百年に及ぶ木の一生が目の前で繰り広げられる。
さらに、輝きだす菌類や、普段では聞こえない生き物たちの声が、来場者の行動やランタンに呼応して現れるインタラクティブ体験など、森の中の至る所に散りばめられた「いのちの物語」との出会いを楽しめる。
来場者の⾏動に呼応したインタラクティブ体験を⽀えるのが、⾵の⼒を宿す冒険のパートナー「ランタン」だ。時には来場者に語りかけ、時には森の様々ないのちと共鳴して光を変化させ、ランタンに誘われて隠れていた⽣き物たちが姿を現す。


森の様々な生き物たちの様子を1枚の葉っぱをナイフで切り抜くことで表現するリト氏の作品展示体験も見逃せない。森の様々な生き物たちの様子を1枚の葉っぱをナイフで切り抜いて表現するリト氏の作風は、「森や自然、いのち」をテーマとする住友館とぴったりマッチしている。

森を巡る冒険の終着点には、幅20m、高さ7.5mを誇る「パフォーミングシアター」が出現する。古より、UNKNOWN FORESTを支え、育んできたマザーツリー。同シアターでは、暗く温かな土の中で、小さな種が目覚め、やがて森を育む存在へと成長したマザーツリー誕生の軌跡や記憶の断片に触れ、その最期の瞬間を見届ける物語が展開される(1日32回公演)。

マザーツリーの“いのち輝く最期の姿”では、空間に⾵や霧が漂い、ダンサー・⾳・映像が融合する⼤迫⼒の演出が目の前に出現し、UNKNOWN FORESTのクライマックスを迎える。
こうした多様な生命が共生する森を舞台に展開される幻想的な冒険には、森からはじまる未来へのワクワク感を創出するに十分な趣向が凝らされており、冒険後には「人間も自然の一部である」と改めて実感させられる。


住友館では、未来の森づくりに参加できる「植林体験」を1日4回実施している。森林と人の関係や森林循環の重要性を学びながら、苗木や土に触れる催しだ。
植林体験コーナーでは、まず、“森の学校”で、ビデオやクイズなどを使って子ども達に「なぜ森を再生しなければならないか」を納得して貰ってから実際に植林体験するシステムを取っている。
住友館の開設で使用された1000本の木は、この植林体験で植林した約1万本の苗木を50cmまで育てた後に「住友の森」の伐採跡地に植えて再生する。なお、植林体験は、住友館の入館予約とは別の整理券を必要とする。


住友館出口には、「ミライのタネ」のフリースペースが設置されている。ミライの種は、世界中の人々と住友クループでいっしょに未来のアイデアを次々と生み出す大規模な参加型共創プロジェクトだ。住友グループの700件の技術を500箱に分けて展示している。
寺島氏は、「ミライのタネには、生成AIを使って人類が直面する共通課題の解決や豊かな未来社会づくりへの想いを込めてつくったアイデアが詰まっている。各箱にあるQRコードを読み込めば、自宅でも見れる」と話す。

また、館内にある住友館オフィシャルグッズショップでは、住友の森の木々を活用した商品や、「UNKNOWN FOREST」関連商品、住友大阪セメントによるCO2を閉じ込めた人工石灰石使ったメモパットなど住友グループの最先端技術を取り入れたオリジナル商品を、住友館限定アイテムとして多数販売している。
ちなみに、ミライの種とオフィシャルグッズショップには、予約なしで誰でも自由に入館できる。
寺島氏は、「住友館には、事務局を始め、電通ライブ、ダンサー、ボランティアなど総勢60人の人が働いている。万博終了まで1カ月を切ったが、日々ブラッシュアップを続けていきたい」と抱負を述べる。
