未治療HIV陽性者 89%がウイルス抑制達成後、毎日服薬治療から持効性注射治療に切り替え選択 ヴィーブヘルスケア

 GSK、ファイザー、塩野義製薬が資本参加するグローバル HIV 領域スペシャリスト・カンパニーのヴィーブヘルスケアは16日、未治療のHIV陽性者の89%が迅速なウイルス抑制達成後、毎日の服薬治療から持効性注射治療レジメンの「カボテグラビル+リルピビリン」に切り替え選択していることがP3b試験結果により判明したと発表した。
 未治療の適格なHIV陽性者の89%(n=129/145)が、毎日服薬のドルテグラビル/ラミブジン(DTG/3TC、ドウベイト配合錠)による迅速なウイルス抑制達成後、持効性注射レジメンであるカボテグラビル+リルピビリン(CAB+RPV LA、ボカブリア水懸筋注+リカムビス水懸筋注)への切り替えを選択したことを示すP3b試験(VOLITION試験)のデータを公表したもの。
 加えて、他のリアルワールドデータからも、CAB+RPV LAの有効性が幅広い集団において裏付けられた。これらのデータは7月14日から17日までルワンダ・キガリで開催中の第13回HIV科学会議(IAS 2025)で報告された。

◆Jean van Wykヴィーブヘルスケア最高医療責任者(MBChB、MFPM)のコメント
 VOLITION試験のデータは、HIVケアの選択肢の提供によって進化する日常のニーズを満たす医薬品を選択する力を患者さん個人に与えることを裏付けるものである。ヴィーブはHIV領域における持効性注射剤のパイオニアであり、当社のポートフォリオが幅広い環境や集団に与えている影響を示す3年以上にわたる確固たるリアルワールドエビデンスを提供している。
 持効性注射レジメンは、高い有効性と忍容性、さらに毎日の経口剤治療と比べ、アドヒアランスの向上および希望に沿った投与スケジュールといった選択肢を提供する。
 我々は、持効性注射剤がHIV感染症の治療および予防の重要な役割を果たすと信じており、HIV/エイズの終息という私たちの目標を達成において、極めて重要な存在になると考えている。

 IAS 2025 で発表されたヴィーブヘルスケアとパートナーの研究による他のリアルワールドデータの概要は次の通り。

【未治療のHIV陽性者の89%が、迅速なウイルス抑制達成後に、CAB+RPV LAを選択】
 P3b相VOLITION試験におけるこれらの新しいデータは、DTG/3TCによる毎日の服薬治療を開始し、ウイルス抑制達成後にCAB+RPV LAに切り替える選択肢を提供された、未治療のHIV陽性者における経験を評価したもの。
 研究結果では、参加者はDTG/3TCで迅速なウイルス抑制を達成し(抑制までの期間の中央値: 4.14週間)、その後、切り替えを提案さした。ウイルス抑制後の次の来院時(治療選択日)では、参加者の 89% (n=129/145) が CAB+RPV LA への切り替えを選択し、11% (n=16) が DTG/3TC の継続を選択した。
 CAB+RPV LAを選択した最も一般的な理由は、「毎日の服薬を忘れる心配がない」(80%)、「薬を持ち歩く必要がない」(68%)であった。これらの知見は、迅速なウイルス抑制を可能にする選択肢としてDTG/3TCの有効性と忍容性を裏付けるものであり、個々のニーズや希望に応じた代替治療としてCAB+RPV LAを提供する価値を示している。

【CAB+RPV LAはリアルワールド環境において持続的な有効性と患者体験の向上を実現】
 米国で実施された2年間のBEYOND試験、ドイツのCARLOS試験、欧州7ヵ国にまたがるCOMBINE-2コホート、さらにOPERA試験を含む複数のリアルワールド観察研究のデータにより、CAB+RPV LAの高い有効性、良好な治療成績、患者満足度の高さが一貫して裏付けられている。
 BEYONDは、CAB+RPV LAへの切り替えを決定したHIV陽性者を対象に、米国の27施設で実施された2年間の前向き観察研究である。308名の参加者のうち、97%が24ヶ月目でウイルス学的抑制を維持しており(直近のウイルス量が50コピー/ ml未満)、注射部位反応や疼痛による中止は少なく、6ヶ月目以降に新たに確認されたウイルス学的失敗は観察されなかった。 参加者からは、スティグマの軽減や治療満足度の向上が報告された。
 同様に、ドイツで実施された351名のHIV陽性者を対象としたリアルワールドのCARLOS試験では、24ヶ月時点で77.5%のウイルス学的抑制を維持しており、注射治療のアドヒアランスは94.2%(予定期間内の施注)であり、治療満足度においても臨床的に意義のある改善が見られた。
 また、24ヶ月時点または治療中止時点での最新のウイルス量において、97.7%の参加者がウイルス抑制を維持していた。
 欧州7ヵ国にまたがる956名のウイルス抑制中のHIV陽性者を対象にCAB+RPV LAのリアルワールドでの治療成績を評価したCOMBINE-2研究は、中央値10.2ヶ月の追跡期間で、99%が最新のウイルス量においてウイルス抑制を維持しており、ウイルス学的失敗の割合は0.5%で、治療継続率は92%と高い水準を示した 。

【ウイルス血症患者における適応外でのCAB+RPV LAの有効性に焦点を当てたリアルワールドエビデンス】
 大規模なOPERA研究では、ウイルス量が検出可能な状態で治療を開始した既治療のHIV陽性者におけるCAB+RPV LAの有効性がさらに検証された。3304名の参加者のうち11%(368人)がベースライン時にウイルス量が50コピー/mL以上であり、そのうち88%(n=277/313、追跡期間中に1回以上ウイルス量の測定があり、いずれかの時点で50コピー/mL未満を達成)がウイルス抑制を達成した。
 また、別の解析では、ウイルス量が検出可能な状態でCAB+RPV LAによる治療を開始した105人の多様な女性グループにおいて、92人が追跡期間中に1回以上ウイルス量を測定し、そのうち92%がいずれかの時点で50コピー/mL未満を達成しており、ウイルス学的失敗の確認はほとんどなかった。
 これらの知見を通じて、CAB+RPV LAは、毎日の経口服薬に関連する課題に対応し、治療満足度の向上、高い有効性、および長期的なウイルス学的抑制をサポートする、患者に好まれる治療選択肢であることが示された。
 なお、同治療レジメンの適応症はウイルス学的失敗の経験がなく、切り替え前の6ヶ月間以上においてウイルス学的抑制が得られており、カボテグラビル及びリルピビリンに対する耐性関連変異を持たず、同剤への切り替えが適切であると判断される既治療のHIV-1感染患者である。

【主要な予防対象集団にとってCAB LA for PrEPが高く支持され、導入も容易であることを示す実装研究】
 PILLARおよびEBONI研究は、HIV曝露前予防投与を目的としたカボテグラビル持効性注射剤(CAB LAfor PrEP)が、男性と性交渉を持つ男性(MSM)、トランスジェンダー男性(TGM)、黒人女性を含む幅広い集団において、HIV感染予防の手段として高い受容性と実現可能性を有していることを示している。 PILLAR試験は、米国の17ヵ所のクリニックにおいて、MSMおよびTGM (n = 201)を対象にCAB LA for PrEPの導入を評価するP4相実装試験である。 CAB LA for PrEPは、12ヶ月時点で高い受容性(平均 4.6/5)と実現可能性(平均4.4/5)があると評価された。経口PrEPから切り替えた参加者の95%(n=131)がその選択に満足し98%(n=140)がCAB LA for PrEPを他者に勧めたいと回答した。柔軟なスケジューリング、リマインダー、教育ツールがアドヒアランスの維持をサポートし、経口PrEP使用者と比較してスティグマに関する懸念も大幅に低下した。
 同様に、EBONI試験は、米国の女性ヘルスクリニックにおけるシスジェンダー及びトランスジェンダーの黒人女性を対象にCAB LA for PrEPの導入を評価した実装研究であり、15ヵ所のプライマリ・ケアおよび感染症クリニックに勤務する72人の医療従事者からの回答をもとに実施された。
 この研究では、CAB LA forPrEPが黒人女性にとってとても適切(平均4.5/5)かつ実現可能(平均4.4/5)であると評価された。さらに、CAB LA for PrEP を提供できる診療体制は、スタッフ数や時間的負担を増やすことなく1年以内に3倍に拡大した。2ヶ月ごとの通院により、性感染症や併存疾患のスクリーニング、その他の健康・心理的ケアの機会も増加した。
 これらの知見は、Apretudeが多様な臨床現場において、より広範なPrEP導入を支援し、最も恩恵を受ける可能性のある、支援が行き届きにくい集団のアウトカム改善に貢献する可能性を示している。
 なお、本邦におけるカボテグラビルおよびリルピビリンの持効性注射レジメンはボカブリア水懸筋注とリカムビス水懸筋注として発売されている。

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