イミフィンジ EUで筋層浸潤性膀胱がん周術期の免疫療法として承認取得 アストラゼネカ

 アストラゼネカは14日、イミフィンジ(デュルバルマブ)について、欧州連合(EU)において、成人の切除可能な筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する周術期の免疫療法として承認を取得したと発表した。
 対象は、MIBCに対する根治的膀胱全摘除術(膀胱を摘出する手術)前の、ゲムシタビンおよびシスプラチンとの併用による術前補助療法、およびイミフィンジ単独による術後補助療法。
 欧州委員会による同承認は、欧州医薬品評価委員会の肯定的な見解に続くもので、The New England Journal of Medicine誌に掲載されたP3相NIAGARA試験の結果に基づいている。
 計画された中間解析では、イミフィンジ周術期レジメンで治療された患者は、根治的膀胱全摘除術をともなう術前補助化学療法単独群に対して、病勢進行、再発、手術未施行、または死亡のリスクについて32%という統計学的に有意な低下を示した(無イベント生存期間[EFS]ハザード比[HR]0.68、95%信頼区間[CI]0.56-0.82、p<0.0001)。
 EFS中央値の推定値は、対照群の46.1カ月に対し、イミフィンジを含む実薬群では未到達であった。また、2年経過時点で対照群では59.8%が無イベントだったのに対し、イミフィンジ周術期レジメンで治療された患者さんでは67.8%であった。
 重要な副次評価項目である全生存期間(OS)から得られた結果は、イミフィンジ周術期レジメンが対照群と比較して死亡のリスクを25%低下させたことを示した(OS HR 0.75、95% CI 0.59-0.93、p=0.0106)。
 生存期間中央値については、両群とも未到達であった。2年経過時点で対照群では75.2%が生存していたのに対し、イミフィンジ周術期レジメンを受けた患者さんでは82.2%が生存していた。
 2024年には、欧州の主要な5カ国で3万5000人以上がMIBCの治療を受けた。根治目的の代表的な治療であるにもかかわらず、現在の標準治療の術前補助化学療法を受けた多くの患者は術後に病気の再発を経験している。
 イミフィンジの忍容性は全般的に良好であり、術前および術後補助療法において新たな安全性シグナルは観察されなかった。さらに、術前補助化学療法にイミフィンジを追加する治療法は、この併用療法の既知のプロファイルと一致し、術前補助化学療法単独と比較して患者の手術実施を妨げることはなかった。免疫介在性有害事象は、イミフィンジの既知のプロファイルと一致しており、管理可能でほとんどが低グレードであった。
 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)は、Magnitude of Clinical Benefit Scale (MCBS)に照らしたNIAGARA試験のレジメンの評価を発表し、根治的治療において最高グレードの「A」を授与した。ESMO-MCBSは、抗がん剤治療の有用性に関する意思決定の改善を促進するもので、臨床ガイドラインや医療技術の評価などいくつかの方法で活用され、採用国が増加している。
 イミフィンジの同治療法は、NIAGARA試験の結果に基づき米国で承認されており、その他の国々においても承認されている。日本、およびその他数カ国については、規制当局によりこの適応症について審査中である。
 イミフィンジは、非小細胞肺がん(NSCLC)を対象としたP3相PACIFIC試験およびAEGEAN試験、また、限局型小細胞肺がん(SCLC)を対象としたP3相ADRIATIC試験に基づき、他の根治目的の治療においても承認されている。

◆NIAGARA試験の治験責任医師のMichiel Simon Van Der Heijden氏(Netherlands Cancer Institute腫瘍内科医、博士)のコメント
 デュルバルマブをベースとした周術期レジメンは、欧州の筋層浸潤性膀胱がんの患者さんにとって重要な新しい治療選択肢である。現在、患者さんの半数近くは術前補助化学療法と膀胱全摘除術による治療にもかかわらず、再発を経験している。
 NIAGARA試験結果は、このレジメンが再発のリスクを3分の1近く減少させ、生存期間の有意な延長を示し、根治目的での臨床診療を変革する可能性を秘めていることを強く示唆している。

◆Dave Fredricksonアストラゼネカエグゼクティブ・バイスプレジデント兼オンコロジー・ヘマトロジービジネスユニット責任者のコメント
 イミフィンジは、筋層浸潤性膀胱がん患者さんに対する最初で唯一の周術期免疫療法として、欧州における標準治療を変革する準備が整っている。P3相NIAGARA試験では、80%以上の患者さんがイミフィンジを含むレジメンによる治療後2年経過時点で生存しており、この数十年間ほとんど治療の進歩が見られなかったこの疾患において、新たな生存期間の指標を定めた。

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