健康的な日常生活習慣・行動が子どもの心身に及ぼす影響調査へ 立教大学スポーツウエルネス学部

 立教大学スポーツウエルネス学部の川端雅人教授(クウィーンズランド大学名誉准教授)は、2025年に東京都昭島市の公立小学校全校と連携して、健康的な日常生活習慣行動と子どもたちの心身の良い状態 (well-being) との関りについて、児童約5500名を対象とした大規模な調査を実施する。
 東京都昭島市の公立小学校では「グットモーニング60分」と題して、起床から登校まで 60 分の時間確保により、子どもたちの生活習慣を改善していく昭島市独自の取り組みを行ってきた。
 一方、川端教授は前任校であるシンガポールの南洋理工大学(The Times Higher Educationによる誕生50年未満の若い大学部門で世界ランキング第1位)在籍時に、スティーブ・バーンズ准教授とともに、朝食摂取と身体活動が、児童生徒の認知機能や学業成績や、登校時の気分とどのように関連しているのかを実験と調査を通じて明らかにする研究プロジェクトを実施した。実験による研究成果はNutrients(2021)に、調査による研究結果はNutrition and Health(2022)に掲載されている。

左から眞砂野氏、川端氏

 今回の共同研究では、川端教授がこれまでに行ってきた研究に基づいて、昭島市が独自に行ってきた健康的な日常生活習慣行動を促進するための素晴らしい取り組みが、子どもたちの心身の良い状態 (well-being)とどのように関連するのかを科学的に検証する。
 その際には、昭島市立光華小学校の校長である眞砂野裕氏(写真左)を始めとする昭島市立小学校校長の人々や各小学校の養護教諭や教諭ら、そしてシンガポールの南洋理工大学のスティーブ・バーンズ准教授と協力しながら、実践的な視点とともに、国際的視点を持って研究が行わる。
 日本はGroup 7 (先進7カ国)の枠組みに参加する世界の主要先進国の一つである。とはいえ、UNICEF(2020)が発表した「レポートカード16」によれば、日本は5-14歳児の生存率と過体重のデータに基づく「身体的健康」では先進国38ヶ国中第1位となった一方で、15歳児の人生満足度と15-19歳の青少年の自殺率のデータに基づく、「精神的に良い状態(Mental Well-Being)」では先進国38ヶ国中第37位という結果であった。
 WHOの健康の定義を踏まえると、子どもの健康を考える上で、身体的な状態と精神的な状態の間にこれほどの極端な差が生じている状況を改善することは、日本の急務である。
 そのためには、先ず適切な研究手法を用いて子どもたちの心身の良い状態 (well-being) に影響を与えうる要因を明らかにする必要があつ。その上で科学的データに基いて、子どもたちが心身の良い状態を認識し、その状態を得るための知識と技能を子どもたちが身に着けられるように支援する体制や対策を、子どもたちを取りまく環境(家庭、学校、社会)において整えていくことが強く望まれる。
 その意味でも、今回の昭島市の公立小学校との共同研究の結果が非常に待たれる。この重要な共同研究の進捗状況については、随時告知していく予定である。

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