JCRファーマは2日、JR-141(一般名:パビナフスプ アルファ)について、グローバルP3試験における目標症例数の組入れを達成したと発表した。
JR-141 は、J-Brain Cargoを適用したムコ多糖症II 型(ハンター症候群)治療酵素製剤で、血液脳関門を通過して作用を発揮する世界初の点滴静注剤である。
日本においては2021年5月より「イズカーゴ点滴静注用10mg」として販売しており、海外では米国、中南米、欧州でグローバルP3試験(JR-141-GS31)を実施している。
JR-141は、マンノース-6-リン酸受容体を介した全身作用に加え、当社独自の血液脳関門通過技術 JBrain Cargoによりトランスフェリン受容体を介して血液脳関門(BBB)を通過させることによる中枢神経系症状に対する作用が期待できる。
分子設計の段階から非臨床、臨床に至るまで必要なエビデンスを構築しながら開発が進められてきた。非臨床試験では、トランスフェリン受容体への親和性だけでなく、JR-141がBBBを通過し神経細胞へ到達することを確認。また、脳の各組織中への酵素取り込み、蓄積基質の減少が確認されている。
これらの結果に基づき実施した臨床試験においては、脳脊髄液中のヘパラン硫酸濃度において、非臨床試験にて得られた結果と矛盾しない結果を得ている。また、中枢神経系症状への作用と考えられる結果も得られている。なお、現在JR-141の長期投与を検討するために複数の試験を進行中である。
ムコ多糖症II型(ハンター症候群)は、ライソゾーム病の一種である。遺伝子異常により全身の細胞においてライソゾーム内の特定の加水分解酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)が欠損または働きが低下することでムコ多糖(グリコサミノグリカン)が過剰蓄積する X染色体連鎖潜性遺伝性疾患だ。
発症頻度は男児約5万人に1人とされており、世界における患者数は2000~3000人と推測されている(同社調べ)。関節拘縮や骨変形、肝臓・脾臓の肥大、呼吸障害、弁膜疾患等、幅広い症状が挙げられるが、特に中枢神経系症状の進行抑制が課題となっている。
◆芦田 信JCRファーマ代表取締役会長兼社長のコメント
今回の成果は、JR-141の臨床開発プログラムにおける大きな節目である。ハンター症候群は生命を脅かす重篤な疾患であり、既存の治療選択肢は十分ではないため、患者さんやそのご家族は中枢神経系症状に有効な治療法を必要としている。グローバルP3試験は順調に進展しており、今後臨床試験データが得られることを楽しみにしている。