アストラゼネカは9日、カミゼストラントの併用療法について、ESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性進行乳がんを対象としたP3相SERENA-6試験において、無増悪生存期間(PFS)において、病勢進行または死亡のリスクを56%低減したと発表した。
同併用療法は、カミゼストラントとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤(パルボシクリブ、ribociclib(本邦未承認)、またはアベマシクリブ)を投与したもの。
この試験では、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の進行乳がん患者のうち、腫瘍にESR1遺伝子変異が発現した患者の一次治療において、アロマターゼ阻害剤(AI)(アナストロゾールまたはレトロゾール)とCDK4/6阻害剤との併用療法を続ける標準治療に対して、カミゼストラントとの併用療法に切り替えた場合の評価を行った。
これらの結果は、イリノイ州シカゴで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表され、同時にThe New England Journal of Medicine誌に掲載された。
同試験結果では、カミゼストラント併用療法が、標準治療と比較して、治験担当医師の評価により病勢進行または死亡のリスクを56%低減したことが示された(ハザード比[HR]0.44;95%信頼区間[CI]0.31~0.60;p<0.00001)。
PFS中央値は、対照群では9.2カ月であったのに対し、カミゼストラント併用療法に切り替えた群では16.0カ月であった。
重要な点として、年齢、人種、地域、ESR1遺伝子変異検出時期、およびESR1変異の種類別の解析を含め、同試験のすべてのCDK4/6阻害剤および臨床的に関連するサブグループにおいて、一貫したPFSの延長が認められた。
また、カミゼストラント併用療法群は、探索的評価項目である生活の質(QOL)の悪化までの期間においても有意な延長を示しており、カミゼストラント併用療法群は、Global health statusおよびQOLの悪化リスクをAI併用療法群と比較して47%低減しした(HR 0.53;95% CI, 0.33~0.82;名目上のp値<0.001)。
Global health status悪化までの期間の中央値は、AI併用療法群での6.4カ月に対し、カミゼストラント併用療法群では23.0カ月でした(EORTC QLQ-C30)。また、カミゼストラント併用療法群では、AI併用療法群と比較して、疼痛悪化までの期間も延長した。
重要な副次評価項目である2回目の進行または死亡までの期間(PFS2)および全生存期間(OS)のデータは、中間解析時点でイベント数が不十分であった。だが、カミゼストラントによる併用療法では、PFS2において治療効果の延長傾向が観察された(HR 0.52;95% CI 0.33~0.81;p=0.0038[中間解析時有意水準p=0.0001])。同試験では、OS、PFS2、およびその他の重要な副次評価項目を継続して評価する予定である。
◆同試験の国際治験調整医師のNicholas Turner医学博士(ロンドン大学がん研究所およびロイヤル・マースデンNHS財団トラスト分子腫瘍学教授)のコメント
本発表は乳がん治療における極めて重要な節目であり、この種の乳がんにおける薬剤耐性に対する考え方を再定義するものである。革新的なSERENA-6試験の結果は、ESR1遺伝子変異の出現後における3種類のCDK4/6阻害剤のいずれかとの併用療法において、アロマターゼ阻害剤からカミゼストラントへの切り替えにより、病勢進行または死亡リスクが半分以下に低下し、生活の質の悪化までの期間を約18カ月延長することを示している。
この積極的なアプローチは、腫瘍学における新たな治療戦略を例示しており、病勢進行や生活の質の低下を引き起こす前に耐性の発現を治療することで、一次治療のベネフィットを延長し、患者さんの転帰を最適化することができる。
◆Susan Galbraithアストラゼネカオンコロジー・ヘマトロジー研究開発エグゼクティブ・バイスプレジデントのコメント
SERENA-6試験は、耐性の出現を検出し早期に治療を変更するために循環腫瘍DNAをモニタリングする臨床的意義を実証した初のピボタル試験であり、乳がんにおける臨床パラダイムを再定義するものである。カミゼストラントは、この適応症の一次治療として広く承認されているCDK4/6阻害剤との併用でベネフィットを示した、最初で唯一の次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬および完全エストロゲン受容体拮抗薬であり、これらの結果は、HR陽性乳がん治療における新しい標準的な内分泌療法の根幹となる可能性を示唆している。