ベーリンガーインゲルハイムは26日、開発中の経口の優先的ホスホジエステラーゼ 4B(PDE4B)阻害剤「ネランドミラスト」について、P3相FIBRONEER-IPF試験および FIBRONEER-ILD 試験において良好な結果を得たと発表した。
両試験は、既存の抗線維化治療の併用の有無を問わず、それぞれ特発性肺線維症(IPF)の患者と進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)の患者を対象としてネランドミラストを評価したもの。
ネランドミラストが2つのP3試験験の主要評価項目を達成し、プラセボに対して、52週時の努力肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量(mL)の低下を有意に抑制した。
ネランドミラストの安全性および忍容性プロファイルは、両試験ともに同程度であり、FIBRONEER-IPF試験において、有害事象によって治験薬の投与中止につながった割合は、プラセボ群10.7%に対し、ネランドミラスト 9mg群で11.7%、ネランドミラスト18mg群で14.0%、FIBRONEER-ILD試験においては、プラセボ群10.2%に対し、ネランドミラスト9mg群で8.1%、ネランドミラスト18mg群で10.0%であった。
両試験において、複合的な副次評価項目(特発性肺線維症(IPF)/間質性肺疾患(ILD)の初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、または死亡のいずれかが生じるまでの期間)は達成されなかった。ただし、FIBRONEER-ILD試験において、死亡した患者の割合はプラセボ群7.4%(n=29)に対して、ネランドミラスト9mg群で4.6%(n=18)、18mg群で2.0%(n=8)で低かった。
これらの結果は、New England Journal of Medicine 誌に掲載され 1,2、米国胸部学会(ATS)2025 でLate Breaking Abstract(LBA)として発表された。ネランドミラストは治験段階の薬剤であり、まだ製造販売承認を取得していない。同剤の有効性と安全性はまだ確立されていない。
両試験において、ネランドミラストはどちらの用量(9 mg と 18 mg)も、主要評価項目であるプラセボと比較した52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量(mL)の低下を抑制した。FVCは、呼吸機能を測定する基準である。 ネランドミラストの安全性および忍容性プロファイルはどちらの試験でも、ネランドミラスト群とプラセボ群の間で、特に注目すべき有害事象(血管炎、うつ病、自殺念慮、薬剤性肝障害など)の発現割合に新たな知見は報告されなかった。
◆Toby Maher南カリフォルニア大学ロサンゼルス校 ケック医学校 臨床医学教授( 博士 M.D.、 Ph.D.)のコメント
医学界は、さまざまな困難に直面しつつ新たな臨床データの創出に取り組んできたが、依然として、患者さんはIPFおよびPF-ILD/PPF のために深刻な影響を受けている。2件のP3試験が主要評価項目を達成したことは、医学界にとって画期的な出来事であり、ネランドミラストが単剤療法として、また既存治療との併用療法として研究され、患者さんのアンメットニーズに意味のある影響をもたらす可能性を示している。
◆シャシャンク・デシュパンデ ベーリンガーインゲルハイムの医療用医薬品事業担当取締役のコメント
特発性肺線維症(IPF)および進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)は過酷な疾患であり、IPF の診断から5年以内に2人に1人が亡くなっている。このように厳しい現実があるにも関わらず、新規の治療薬に対するニーズが残されているため、進行中の研究から患者さんに新たな望みがもたらされる可能性がある。ネランドミラストに関する最新の有効性、安全性、忍容性データは、この薬剤がIPF やPF-ILD/PPF 患者さんのニーズに対応できる可能性があることを示している。